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【エレキギター回想録・その6】

今度はレスポールです。
Greco EG800 1978年ですな。
これは、SAMさんの形見なので、ウチでは「SAMさん」と呼んでます。😊

【Greco EG800】

グレコと言えばレスポールモデルと言うくらい、70年代の国産コピーエレキでは一斉を風靡したヤツです。
今考えると、贋作ですよ。
幾ら法的に解決してるとは言え、贋作であることには違いないわけです。
そう言うものが、大手を振って流通してたってのは、やはり当時の日本は、メンタル面やモラルの面では、まだまだ国際社会には追いついてなかったんだなぁ〜と思いますね。

【出会い】

2015年。
セットアップミーティングのイベント企画を通して知り合ったSAMさん。
シリーズを通じて交流が深まり、SAMさんのお店(自転車屋さんだった)に遊びに行くようになり、お店に飾られてたこのギターを発見するわけです。

オレは元々レスポールは使わない人なのですが、ゴールドトップにP90と言う、50年代スタイルのレスポールは美しいと思ってるので、買うならゴールドトップのP90か、68年スタイルの黒いカスタムかどっちかだなと思ってたんです。
しかし、レスポールを使う機会が無いので、無理に購入はしてなかったんですよ。
そこにこのグレコを見てしまって、「今度貸して下さい!」と言うとSAMさんは「いいよぉ〜いつでも取りに来て〜」と言ってくれたんですが、そのまま受け取っても弾ける状態ではなく、各種メンテナンスが必要な状態だったので、暇な時に借りてメンテしようと思ってたんで、そのまま月日が流れたわけです。

【SAMさんとの絆】

そしてこのセットアップミーティングが頓挫するような事件が起きたのです。
イベントの売りでもあり、主演格だった「元Gibsonのテック」だったと言う男が、ただのイカサマ野郎だった事が発覚するわけです。
オレはかなり落ち込みつつ、みんなを巻き添えにして、有る意味実害まで出させてしまったことに大きな責任を感じ、もう潰れかかってた時に、SAMさんから連絡があり、何でも相談に乗るから、暇なら顔出せと…。

時は2016年の正月でした。
正月休みの店を開けてオレを呼び出して、今後の対応について相談に乗ってくれたんです。
その時、「ヤバい事は全部オレがやる。オレはもう老い先短いし、思い残す事は無いけど、キヤヘンはこの先まだやらなければならない事が沢山有るんだから、命掛かるようなヤバい事はオレが代わりに全部やってやる。だから負けないで元気出せ!」と言ってくれました。

別に不法な事をしようとは思ってませんでしたが、SAMさんのこの言葉がどれほどオレに勇気を与えてくれたか計り知れません。
本当に、この時の事は心から感謝してます。

【突然の別れ】

この詐欺事件を切っ掛けに、SAMさんとの絆が出来、オレはまた元の生活に戻る訳ですが、そんなある日、耳を疑う話が舞い込んだ。

SAMさん亡くなった!?

悪い冗談だと思ったが、連絡をくれた人は、そんな冗談を言うような人物じゃない。
兎にも角にも、其の足でSAMさんの家に飛んでいった。
そこには静かに横たわり、呼んでも答えないSAMさんが居た。

何が起きてるか、完全に気が動転しており、溢れる涙を抑えきれず、自分で何を言ったか覚えてない。
でも、SAMさんの奥さんが「驚かせてごめんねぇ〜」と気丈にもオレを気遣ってくれているのだけは覚えています。

【そして1年が過ぎる…】

SAMさんの一周忌が執り行われるとの事で、当然オレも参加したのですが、一周忌が終わり、お店で雑談してたんです。
まぁ、故人の話を思い出してみんなでしてたんですね。
其の時に、お店の片隅に半ば放置されてたこのレスポールを発見したんです。
で、話の流れで、「このレスポール、貸してくれるって言ってたけど、そのまま逝っちゃいましたね〜SAMさん…」みたいな話になったんですよ。
すると、奥さんが「じゃ、これキヤさん持って帰って下さい。お店に放置して朽ちるよりも、使ってくれる人のところで鳴ってた方がSAMさんも、このギターも喜ぶと思うし…」と言ってくれて、このギターは永久に借りることに成りました。
持ち主が居ないので、返却するところがないわけです。
なので、永久借りパク状態になったわけです。

【メンテしなきゃ使えない】

で、奥さんの許可を頂いて、早速ウチへ持ち帰りましたが、元々SAMさんはベーシストででしたので、ギターはコレクションで、正直生前からあまりメンテナンスされてる状態じゃなかったのですが、お亡くなりに成ってからはお店の片隅に1年余り放置状態だったので、ギターは傷み放題でした。

ざっと見て、オレが使うには、ハードウェアは全部交換だなと…。
早速パーツ集めとカスタマイズになるわけです。

【現在の仕様】

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ピックアップを早速遠藤さんに注文。
P90タイプを巻いてもらいます。
このPUは繊細さに重点が置かれたPUで、余りパワフルではないですが、かなりきれいな音がします。
シングルコイルらしい繊細さと、P90らしいパワフルさを兼ね備えた極上のPUです。
ブリッジはゴトーのT.O.Mタイプ。
ヴィンテージスタイルなら、駒落ち防止のワイヤーが付いてるタイプを選ぶべきなのでしょうが、オレは実用を考えて、ワイヤーレスのタイプをチョイスしています。
テールピースは、90年代のGibson純正に交換しました。
なので、テールピースだけニッケルメッキなんですよ。

配線類は、いつものクロスワイヤーとALPHAのAWG24でウチとしては標準的な構成。
コンデンサーは、ブラックビューティーの0.033μFをチョイスしてあります。
このコンデンサーとのマッチングがまた絶妙でいい感じだと思いますよ。

そして、ゴールドトップ。
本家とは塗料が違うので、本家のような深みはありませんが、やや色白のゴールドも味わい深いものがありますよ。

【ヘッドストック】

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ヘッドは、80年代Grecoが、50年代レスポールを模倣してるのに対して、この78年モデルは、70年代初期のProDeluxeを模倣しているようで、ラージヘッドなんですよね。
コレがオレには堪らないんですよ。😊
そして、限りなくGibsonロゴを意識した、ヘッドロゴ。🤣
当時の国産エレキは、概ね、GibsonかFenderのロゴを彷彿とさせるような半ばパチモノみたいなロゴが多かったですね。

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シリアルナンバーから、1978年10月生産ということが分かります。
品番ステッカーも健在で、EG800となってます。
当時8万円もしたんですね。

ペグは元のヤツが駄目だったので、ゴトーに交換しました。
1:18とか言う、滑らかなヤツです。

【ネック&ボディー】

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ネックの握りはかなり薄手で、平たい印象すら受けます。
ポジションインレイは、乳白色のプラスチック製で、まだパーロイドが採用に成ってません。
当時の本家はパールインレイでしたね。
で、ちゃんとオーバーバインディングフレットになってまして、高級感あります。
フレット自体は、今で言うミディアムフレット位の感じで、太くもなく細くもなく、当時の国産では標準的なものです。

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ボディーは、パンケーキスタイルなんですが、本家パンケーキは、マホガニー2枚の間に、1mm程度の薄いメープルが挟んであるんですが、これはダイレクトにマホガニーを張り合わせてあります。
つまり、本家を踏襲したと言うよりも、コストダウンの結果という事だと思います。

【ハードケース】

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SAMさんの奥さんから預かった段階でケースがなかったので、手持ちのロケットケースにしまうことにしました。
ヘッドの角度が14度の70年代レスポールを入れるためのケースで、コレには最近のヒスコレなどの18度ネックは入りません。
このグレコは、70年代コピーなので、ヘッドは14度で、このケースにぴったりなのです。
このケース自体も今となっては貴重品らしく、殆ど見かけませんね…。

【まとめ】

このレスポールは恐らく1971〜74年頃のPro Deluxeを見本にして作られてると思われます。
オレは更にカスタムして、時々使ってます。
このレスポールは、オレを励ましてくれたSAMさんと同様に、オレを励ましてくれるギターになりました。😊
ありがとうSAMさん。

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