ACROS Ⅱをミクロファインで現像してみた
アクロスというのは、フジが出している最後のモノクロフィルムだ。ただ、このフィルムが登場した頃、僕はフィルムからデジタルへ移行し始めていて、結局このフィルムを使う事が無いまま、製造中止となった。しかしその後海外生産となりアクロス2として復活。再びフィルムで写真を撮り始めた時初めて使ってみたが、温度計が狂っていて現像に失敗。しかし、失敗したフィルムでも、粒状性の良さや、階調の豊かさが感じられたので、このフィルムを適正に現像すれば相当いい画像が出るだろうと思えた。また、これはこのフィルムに限らずモノクロネガ全般に言えることだが、オーバー気味に撮影して現像を抑える(いわゆる減感)方が粒子が良くなる。昼間に人を撮る予定があったので、試しにアクロスをEI50で撮影してみた。
アクロスをミクロファインで現像するというのはメーカー推奨の組み合わせであり、現像時間も明示されている。最近使っているケントメアやデルタに比べれば楽勝のはずである。だが、前回失敗しているという不安が頭を離れない。しかも前回は温度計が壊れていたので、実際に何℃で現像したのかはっきりしないのである。それでもメーカーの指示に従えばそれなりの結果は出せるはずだ。
現像はいつでも初舞台
それでは実際に現像してみよう。9月下旬なら常温で現像できそうなものだが、最近の9月は普通に夏であり、夜には多少涼しくなっているものの、液温は25℃もある。とりあえず水道水で冷やそうとしたが、こちらも測ってみたら25℃だ。富山の水道水は品質は割といいものの、水源が遠いので温度が高い。仕方なく真夏同様氷を使って22℃まで下げる。メーカーの指示によると、22℃での現像時間は8分30秒である。この現像液は既に2本分使っているので、1分程度伸ばして9分30秒。減感現像という事は現像時間を減らす必要があるので、これは特に根拠は無いが9分としておこう。ここで、前回の現像不足ネガが頭をよぎり、薄くなるよりは濃くなる方がいいだろうと、現像時間は10分に決定。
さて、方針を決めてフィルムをタンクに入れてしまえば、あとは粛々と作業を進めるだけだ。現像工程の時だけは時々温度計をタンクに差して液温をチェック。昔現像していた時は、液温18~26℃くらいの範囲であれば細かい事は気にせず現像をしていて、それでいてそんなに大きな失敗も無かったものだが、前回の失敗の記憶もあり、フィルムも高級品になったので、柄にもなく慎重派だ。
フィルム派だけが味わえる至福の時間
やがて作業は停止から定着へと移る。ここでビールの栓を空けるのがルーティーンである。ようやくビールがおいしい季節になってきた。まぁいつもおいしいのだけど、真夏は汗が止まらなくなりちょっと困るのだ。もうタンクの中では結果は出ていて、どうあがいてもどうする事も出来ない。しかしまだフタを開けてはいけないこの10分間が好きだ。こういう時間がデジタルには無いんだよな。うちのパソコンは非力だからRAW現像もそこそこ時間が掛かるのだが、そこにそういう風情は無い。
いよいよ写真に会える
クイックウォッシュに漬けて、水洗に入る。ここでフィルムの端がちゃんと透き通っているか確認をする。ここまで来ればもう結果を見てもいいのだが、なんとなく10分の水洗が終わるまでオアズケとする事にしている。
さて現像の結果は・・・やっぱりちょっと薄いな。またも現像不足である。カメラ側の問題という事も考えられるが、コマ数の印字なども薄いので、やはり現像不足であろう。いやまてよ、減感しているという事はコマ数は薄くてもいいのか。でももう少し全体が濃い方がいい気がする。ネットを探してみてもアクロスで現像不足になったという話はあまり見つからないし、どうも自分だけのようだ。結局次回はもう少し押してみるしかない。しかも、乾燥中に結構風が強かったせいか、所々に白い点(ネガで言うと黒い点)が見られる。風に当てた方がよく乾燥しそうだが、生乾きで風に当てるのは良くないかもしれない。
まとめ
結局今回も若干現像不足ながら、パソコンに取り込み砂をスポッティングしてやると、画質的には今まで使ってきたフィルムの中でも間違いなくトップクラスである。どんなジャンルでも使いやすいと思うが、特にポートレートでは最強であろう。きめ細かな粒子と余裕のある階調で、まるでフィルムシミュレーションのアクロスのようだ(なら、初めからデジカメを使えと・・)。
お祭りのステージで、出番の前の中学生を撮らせていただいた。この肌は反則でしょう。アクロスで良かったと思える一枚。
使用カメラ:OLYMPUS OM-4Ti
フィルム:フジACROSⅡ
現像液:フジ ミクロファイン(2本現像済み)
停止液:クエン酸(100均)
定着液:フジ スーパーフジフィックス
水洗促進剤:フジQW
水滴防止剤:ドライウェル
現像タンク:キング片溝式
温度計:料理用
感度設定:EI50
現像液の温度:22℃
現像浴:10分(最初の1分は連続撹拌、以降1分毎に10秒撹拌)
停止浴:1分(連続撹拌)
定着浴:10分(最初の1分は連続撹拌、以降1分毎に10秒撹拌)
予備水洗:1分(流水)
QW浴:1分(連続撹拌)
水洗:10分(弱めの流水)