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北陸で地味な工場夜景を

 スナップ以外によく撮影している分野に工場夜景がある。住んでいる北陸には、太平洋側のような大規模な工業地帯が無いし街の規模も小さいので、迫力という点ではちょっと弱いのであるが、その代わり雪を絡めたりして、ちょっと違った感じの工場夜景が撮れる。それと、工場夜景というのは、実は意外と撮れる場所が限定されてしまう場合が多く、誰かと似たような写真になりがちなので、人と違う写真が撮れる可能性はあると思う。

カメラは正直何でもいいと思う

 最近フィルムをよく使っている僕の場合も、さすがにこの分野に関してはデジタルを使う。夜の工場というのは明暗差が激しく、特に暗い部分はノイズが出やすい。だからダイナミックレンジの広い最近のフルサイズデジカメの方が有利ではあろうと思う。でもデジタルの場合HDRという技を使う事によってかなりダイナミックレンジを広げることができる。だから僕の使っている古いマイクロフォーサーズでも、それほど不便を感じていない。三脚とマニュアル露出が使えるカメラなら何でもいけると思うので、興味のある方はぜひ挑戦してみて欲しいと思う。

OLYMPUS E-P3 LUMIX G20mmF1.7

高感度画質が弱い事で評判のカメラであるが、なぁに、たっぷり露出を与えてやればいいさ。

悩ましいレンズ選び

 レンズに関しては、シャープで解像感のあるレンズがいいと思うので、これまた新しい設計のレンズが有利に思える。ただ実は最新のレンズにも問題があるのだ。

 工場夜景には照明などの強い点光源がたくさん写る。そしてその周りには光条という光の筋が出る。その本数はレンズの絞り枚数分である。実は高級なレンズほど絞り枚数が多い傾向がある。絞りの形というのは背景ボケの形と関係しているので、枚数が多くて円に近いほどボケがきれいになるからである。だから、高級レンズで工場夜景を撮るとウニのような光条が出てしまう。しかも絞り枚数が奇数の場合は、光条が倍の数出てしまう。現代のレンズはほとんど奇数枚絞りを採用しているのだ。

 と、買えない言い訳をしておいて、僕の場合はアダプターでオールドレンズを使うことが多い。一番気に入っているのは、ズイコーの55mmで、8本のきれいな光条が出る。6本で行きたい時は、ヤシコンプラナーの50mm。ヤシカMLの35mmと24mmも通常の撮影では画質が良くいいレンズなのだが、点光源の対角線上にゴーストが出やすく、夜景には使いにくいレンズだ。ズイコーの24mmはこれも6枚でなかなかいい仕事をする。

 もっとも工場夜景はアングルが制限される場合も多く、ズームレンズが欲しいことも多い。僕の普段使っているパナソニックの標準ズームは、パンケーキの便利なレンズだが、非球面レンズの影響か光条がとても汚い。そこで思いついたのは、昔のレンズメーカーなどの安ズームである。ネット上でも情報はあまり多くないが、総じて画質の評判は良くない。でもどうせ絞るし、絞り羽はたいてい6枚だ。という訳で試しに手に入れたのは、ズイコーの35-105mm。一見純正レンズのようだが、トキナーのOEMである事が知られている。見事な光条が6本現れたが、やはり対角線上のゴーストは出やすく、画質もちょっと落ちる感じだ。

OLYMPUS E-P5 ZUIKO35-105F3.5-4.5

神岡鉱山の夜景。工場が地味な割に派手なゴースト。おおらかな気持ちでレンズの個性として捉えたいな。

工場夜景撮影に必要なもの

 何はともあれ三脚である。頑丈なものに越したことはないが、重いのでほどほどでいいと思う。荷物が制限されるときは昔懐かしいアンテナのように伸びるふざけた三脚で撮る事もあるが、ミラーレスならショックが少ないので結構いけてしまう。ただ、撮影場所が制限される場合があるので、目の高さ位は出せる方が有利だと思う。
 ケーブルレリーズもあった方がいいが、無ければスマホアプリのリモコンやセルフタイマーで代用できる。

工場夜景を撮る際のカメラの設定

 工場夜景を撮る設定は、昼間の撮影とはかなり違うので注意が必要だ。普通の撮影ではいじらないところを使うので、多分買った時しか開いていない取説を開こう。まず、「長秒時ノイズ除去」の設定。メーカーによって用語が違うかもしれないが、シャッターを何秒も開けると、黒い部分に小さな点が現れるので、これを除去する設定だ。
 ISO感度は手動で最低感度に合わせよう。普通はオートになっていて、自動でISO3200とかになってしまったりする。最近のデジカメは高感度でもノイズは少ないが、せっかく三脚を使うならなるべく高画質に撮りたい。また誤作動を防ぐ意味でできれば手振れ補正もオフにしておこう。フォーカスはオートでも合うかもしれないが、マニュアルの方が安心できる。
 画面表示は水準器とヒストグラムが出せるといいと思う。暗いところでの液晶画面というのは、見た目の明るさがあてにならないので、ヒストグラムか、カメラの測光性能を信じたほうが良い。

 そして落とし穴は、次の日の撮影に待っている。ピントは合わないし、手振れはするし、セルフになるし・・・。そう、設定を元に戻していないのである。

HDRを使う

 夜の工場では夜間照明と工場自体の明暗差がとても大きい。普通に撮影すると照明が真っ白で、工場が真っ暗に写ってしまう。そこで、暗い写真と明るい写真を撮って、照明の部分は暗い写真を、工場は明るい写真を使って合成するのがHDRである。最近のカメラはこの機能が付いているが、付いてなくてもできる。まず適正の明るさで撮影し、露出補正で-2にした写真と、+2にした写真を撮影する。これをパソコンで合成するのだ。僕のオリンパスE-P5の場合は、この3枚を自動で撮影してくれる機能が付いているので、とても便利だ。

 工場の撮影で絶対狙いたいのは、トワイライトタイムである。夕刻から夜への美しいグラデーション。しかし、天気の悪い北陸でこれを期待してはいけない。満天の星空なんかもってのほかである。万が一見られたら儲けもんくらいのスタンスでいれば幸せになれるだろう。それと雪景色。これも最近は暖冬続きで、かと言って一旦降ると交通がマヒしたりして、意外と撮れないものだ。ただ煙突の煙が目立つので冬の方がいいことは確かだろう。

LYMPUS E-P5 ZUIKO55mmF1.2 KENKO TELEPLUS MC7

日産化学の夜景。光条が欲しかったので無理やりこの組み合わせ。スキー場の明かりが消えるとこの街にも春がやってくる。

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