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ケントメア100をミクロファインで現像してみた

定番フィルムを探す旅

 フィルムをお使いの方は、ここぞという場面で登板させる鉄板のフィルムがある事だろう。僕の場合は、コニカパン100だった。それほど高画質な訳ではないが、柔らかい調子のネガを3号か4号の紙で焼くといいグラデーションが出しやすかった。しかししばらくフィルムから離れて帰ってきてみると、そんなフィルムはとっくの昔に無くなっていた。そこで試してみたのはフジのアクロス2。慣れ親しんだミクロファインで現像ができるし、評判もよさそうだ。使ってみると評判通りのきれいな粒子で、階調も豊かだった。新しい定番フィルムは決定と思われた。ところが、1,200円だったアクロス2はすぐに倍になった。値段分の性能はあると思うが、普段使いにこの価格はつらい。そこで次の候補として挙がったのが1,000円ほどで買えるケントメア100である。

 イルフォードのフィルムなので現像液はID-11あたりを用意すべきのだが、常用にできるかわからないので、勝手知ったるミクロファインで現像することにした。ただネットを探してもミクロファインで現像した有意なデータが見つからない。そこでアクロスをD-76で現像した場合の時間とケントメアの時間を比較して、20℃で12分位だろうと推測する。ただ、最近アクロスを現像した感じでは、自分のやり方で標準時間だとどうも現像不足になってしまう。そこで温度を22℃で同じ時間やってみることにする。また、ミクロファインの特性上、多少現像過多でも濃くなり過ぎないので、不足するよりかはと更に1分足してみた。

押し入れから叫び声が・・・

 さて、押し入れに入りフィルムを現像タンクに巻いていると、戸の隙間から斜めに光が差し込んできた。家人が隣の部屋の明かりを点けたらしい。「電気消して!!」と叫びながら服の下にリールを抱え込む。想定外の事態にかなり焦ったが、向こうもいきなり押し入れから叫び声が聞こえてきたら相当にコワいだろうな。皆さんはくれぐれも根回しは周到に。

冬の現像は臨機応変に

 現像を行う洗面所の気温は6℃。液温を24℃に上げてタンクに投入すると、料理用温度計は21.4℃を指した。予想よりちょっと低めだ。という訳で時間を1分足すことにする。我ながらテキトーだが、現像の結果は狙い通りのちょい濃い目ネガとなった。この様に時によっては柔軟な対応を求められるところもデジタルには無い楽しさでもあり、人によっては受け入れ難いものかもしれない。

最後にも落とし穴が

 水洗を済ませ、いつものように浴室の換気扇フードに吊るして乾燥させようとした時だった。フードの中に溜まっていた液体が流れ落ちて、まともにフィルムにかかってしまった。この液体にはカビの胞子が高濃度に含まれていることは想像に難くない。慌ててフィルムをリールに巻き戻し、水道で洗い流す。この時の対処が適切だったかどうかは、数十年後に分かるだろう。

 数百本の現像をこなしてきたベテランとは思えない失態を晒しつつも、なんとかネガが仕上がり、パソコンに取り込んでみた印象は、「いける」というものだった。トラディショナルタイプのフィルムという事でアクロスに比べれば粒状感があるものの、割と均質なので画像処理でコントロールしやすい。階調もネガフィルムらしい懐の深さを感じさせるもので、デジタルでも扱いやすいデータができる。ネオパンSSが無くなり、路頭に迷っていた方にもお勧めしたい。トライXで万全!と思っていた方の場合は、現像液を変えた方がいいかもしれない。

OLYMPUS XA ZUIKO35mmF2.8


OLYMPUS XA ZUIKO35mmF2.8


OLYMPUS XA ZUIKO35mmF2.8


まとめ

 誰に役立つのかわからないが、ケントメアを使っているという情報がとても少ないので、ささやかな資料の一つとなればと思い、今回の現像の詳細をまとめてみる。ニューシーガルもこれのOEMという噂なので、参考になるのではないかと思う。

使用カメラ:OLYMPUS XA
フィルム:KentmerePAN 100
現像液:フジ ミクロファイン
停止液:クエン酸(100均)
定着液:フジ スーパーフジフィックス
水洗促進剤:フジQW
水滴防止剤:ドライウェル
現像タンク:キング片溝式
温度計:料理用

 それにしても、庶民的なラインナップだな。地方在住なので、基本的には入手しやすい事とリーズナブルな事。それでいてクオリティをなるべく下げない事を考えて選んでいる。現像液は好みなので、フィルムっぽさや高感度が欲しい人は別のものをお勧めする。定着液は最近では非硬膜タイプが主流のようだが、雑な扱いでも30年前のネガに全く劣化を感じないので硬膜タイプの方が安心かな(もちろん非硬膜が30年で劣化することは無いと思うが)。

現像液の温度:21.4℃
現像浴:14分(最初の1分は連続撹拌、以降1分毎に10秒撹拌)
停止浴:1分(連続撹拌)
定着浴:10分(最初の1分は連続撹拌、以降1分毎に10秒撹拌)
予備水洗:1分(流水)
QW浴:1分(連続撹拌)
水洗:10分(弱めの流水)

 以上のような作業で、ちょっと濃い目のネガが仕上がったのだが、これはあくまで僕の場合こうなったという程度で、これが正解とは言いにくい。まず、使用カメラは露出計にCdSを使ったカメラで、これは劣化するので露出があまり正確でない可能性がある。それと作業者の性格がかなりいい加減である。だから参考データの一つだという程度に思っていただいて、自分の理想のネガを作る手助けになれば幸いである。

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