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青春18キッパーの独り言三枚目(中央線で富山へ)

はるばる乗りに来たのはエスカレーター

 東京にいる間にもう一日切符を使おうと思っていたのだけど、連日の暑さに友人とついビールなんぞを飲んでしまい、すぐに帰る日となってしまった。東京から富山に帰るには、行きと同じ東海道が早いのだが、どうせなら違う道を通って帰りたいものだ。そこで中央線である。実は今回の南海トラフ臨時情報によって、海からはるか遠い中央線もダイヤが乱れている。しかも塩尻から先は極端に本数が少なくなるし、いざという時の新幹線ワープなども使えない。そう考えると若干リスキーなのだが、実は今回ちょっと寄ってみたいところがあるのだ。

 昔松本に住んでいたので、中央線は通いなれた道だった。そして、いつも窓から見ては気になっていたものが2つある。山の中腹にあるラブレターと、山に向かって伸びたガラスのチューブである。これの正体はコモアブリッジという長大なエスカレーターで、山頂の街と駅を結んでいる。実を言うとここは前にも来た事がある。ただその日は休日だったためエスカレーターには乗れなかった。並走する斜行エレベーターも十分に楽しいが、エスカレーターにも乗ってみたい。

 という訳で始発に乗って出発し、四方津駅までやってきたが、とにかく暑い(今回の旅は暑いしか言ってないな)。僕らのようなスナップを撮るやつらは、歩かない事には棒に当たらない。しかし毎日朝からこの暑さでは商売上がったりだ。本当は上の街を散策したいところだが、少し歩いただけで引き返してくる。朝のエスカレーターは下り運転なので、上りはエレベーターに乗ってきた。したがって帰りはいよいよ初のエスカレーターという事になるのだが、これに乗ってしまうとすぐにアクティビティは終了となってしまうので、乗るのがもったいない。

 8分の乗車時間はあっという間に過ぎた。でも毎日これで通勤している人には、8分は長いだろうな。歩いて下ったりするのだろうか。

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 乗り継ぎの時間があったので甲府で降りてみる。駅前は昔より観光地っぽく整備されていて、藤村記念館というのがあったので入ってみる。僕はてっきりこれを「トウソン記念館」だと思っていたが、地元の教育に功績のあった「フジムラ」さんの記念館だった。そうだよな、島崎さんは小諸だよな。

難所とは聞いていたが

 塩尻から先は中山道の時代から難所であったと思うが、18キッパーにとっても難所として名高い。この区間は列車の本数が少なく、車両も2両しかないのでいつも混むのだ。沿線人口も少ないので乗客の入れ替わりが無く、塩尻で座れないと中津川まで立ちっぱなしとなる。しかも時間は昼時。僕はこの車内で無謀にも昼食を取ろうと思っているのだ。幸い乗り換え時間が30分もあったので、ボックス席の片隅に席を確保できて、おにぎりを食べ始めたまでは良かった。

 ほどなくして、何とも言えない酸えた臭いが漂っきた。発生源は前に座っているおじさんのようだ。この車両は比較的新しい車両で、空調がよく効いているのはいいのだが、その風が一定のインターバルを置いておじさんの側から吹いてくる。空気が止まっていれば段々と鼻も麻痺して気にならなくなるのだろうが、風が吹く度に新鮮な芳香が押し寄せてくる。やはりここは難所だった。

 おじさんはつなぎの作業服を着ているので、林業関係者のはずだ。とすれば、木曽福島か上松まで辛抱すれば下車するだろう。などという都合のいい想定は見事に打ち砕かれ、当たり前のように中津川までの時間を共に過ごした。青春18の難所恐るべし。

清心18きっぷ

 美濃太田からの高山線、シートガチャはロングシートだった。行きはクロスシートだったので確率的には仕方無いが、景色のいい区間だけにちょっと残念だ。ロングシートが来るとちょっと損した気分になるが、最近の18きっぷの旅ではロングシートに当たることがどんどん増えてきたので、そろそろ発想を変えたほうがいいかもしれない。例えば席と反対側の窓に目を向ければ、窓向きの展望シートと言えないだろうか。まぁ混んでいれば向かいの席の人と目が合って気まずいが、幸い高山線はとても空いている。リムジンと同じだと言う事もできるだろう(できないか)。

 まぁ足も延ばせるし意外と快適だが、高山までの3時間は結構ヒマである。でも今はネットも見られるし、スポティファイも聴けるもんねと、スマホを開きイヤホンを耳に入れる。そこでふと、「明日から普通に仕事だよな」という事が頭をよぎる。ここでネットのニュースなんか見てしまったら、それは日常である。それはもったいない!何もする事が無い、何もできない幸せを堪能できるのが青春18なのだ。昔能登の総持寺で座禅を体験した時に言われたのは、何も考え事をしないで下さいという事だった。これは本当に難しい。考えないようにするほど、リーマンの悲しさで仕事の事を思い出すし、お腹も空いてきたりする。でも何も考えない時間の貴重さを知っただけでも尊い体験だった。そう、いままさに頭を空っぽにできる時間が訪れているのだ。青春18は禅である!

 とても清々しい気分になって高山へ到着。いよいよ富山へのラストランに備えて、ビールとつまみを購入(禅はどこへ行った)。乗り込む列車は・・・ロングシート!

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