見出し画像

サービスを閉じるときに知っておいてほしい、たったひとつのこと。

結論だけ先に。
これまでサービスに関わってきたメンバーを大切にしてください。
消えゆくサービスや会社のくだらない事情より、これからのキャリアの未来があるメンバーのことを一番に考えて、意思決定をしてください。


今年、自分が関わっていた幾つかのサービスをクローズすることとなった。そのときに改めて感じたこと、そして、Webサービスに関わる全ての人に知っておいてほしいことを書く。


私は bosyu というサービスや、関連サービスである bosyu Jobs といった幾つかのサービスのプロダクトマネージャーをしていた。紆余曲折あって、結果的にはほぼ同じタイミングで関連サービス共々クローズすることとなった。サービスクローズの経緯はサービスの運営には何ら関係のない胸糞悪い話だったので、ここでは割愛する。

さて、bosyu というサービスはなんだかんだ3年近く運営されていたこともあり、ファンになってくれたユーザーさんも沢山いれば、作り手であった私達も色々な思いを込めて作っていた。

ひとつひとつの機能には思いを込めたし、デザインや画面内の文言の細部に至るまで色々な事を考えて作っていた。至らないところは勿論あったが、時間の許す限りメンバーともども必死に考えて、より良いサービスになるように日々運営していた。

bosyu を運営していく中での戦略の変更ゆえに関連サービスに注力することとなったが、この関連サービスも限られた時間の中で必死に頭を使って体験を設計して、より良いものとなるようユーザーさんとも沢山対話して作り込んでいた。

何が言いたいかというと、それなりに長く運営されたサービスには、作り手、使い手、それぞれの思いが沢山つまっているということだ。

それゆえに、サービスを閉じるときには一種の喪失感を伴う。知人の言葉を借りるならば、「必死になって育ててきた我が子を殺される思い」といえる程度の喪失感が、現実に存在する。


サービスを閉じるというジャッジをドラスティックに行うことに何も問題はない。それは事業だし、ビジネスだし、利益を生まないのであれば閉じるべきだ。そこに何ら異論はないし、(経緯はどうであれ)閉じるというジャッジには私の意思も含まれているし、異論はない。だけれども、辛い。

この喪失感や辛さを増大させるのが、サービスを閉じるまでの期間の長さだ。

Webサービスの特性上、企業が運営しているサービスを急に閉じることは難しい。(勿論、不義理なことをすれば可能だが当然やるべきではない。)よほど利用者が少ないものでもない限り、まずはサービスクローズの告知をして、その告知から数カ月後にサービスを閉じることが一般的だ。また、お金が関わるサービスの場合は告知から半年〜1年後にクローズせざるを得ないケースも多い。

サービスクローズまでのその数ヶ月は虚無の期間といえる。それまでに仕込んできた施策はすべてお蔵入りし、作ってきた機能はリリースされることもなく捨て去られ、とはいえユーザーさんからの問い合わせがなくなるわけでも無いため運営に一定の人員は必要であり、その上でクローズするために必要な作業を地道に実施していかなければならない。

クローズすることが決まっているためポジティブなモチベーションは沸かず、とはいえそれらの作業を他のチームに依頼することも出来ず、淡々と虚無の時間を過ごしていくことになる。これが実はとてもきつい。

これまでのキャリアにおいて出くわしたサービスクローズのシーンにおいて、サービスをクローズすることとなったチームの多くは負け組のような扱いを社内から受け、肩身はとても狭く、経営側もそれを当然のように見ていた(ように見えていた)し、その結果としてそのサービスに関わる多くのメンバーが辞めてしまっていた。

さて、ここでメンバーというワードを出した。私が伝えたいたったひとつの大切なことは、「これまで関わってくれたメンバーを大切にすること以上に大切なことはない」ということだ。これだけは胸に刻み込んでほしい。


サービスを閉じたあとも、そのメンバーのキャリアは続く。状況次第だが、チーム自体はそのまま残ることも多い。としたときに大切なことは、そのチーム、メンバーのパフォーマンスをいかにして元に戻すかということだ。もっといえば、サービスクローズという学びを得て、どうやってより強くなって戻ってきてもらうかだ。

だけれども、私の観測範囲内では何故か真逆の行動を取る経営が多い。

上述のように負け組扱いすることは多いし、腫れ物に触るような扱いをすることも多い。昇進からも遠のけば、何故か給料を下げられたり、この会社にはあなたの居場所がないといった扱いを受けたりする。サービスクローズと同時期に退職者が多く出ることが、この事実を裏付けているように思う。

それでは、私たちはどうあるべきなのだろうか。以下に、私の考える具体的な処方箋を記す。


喪失感が伴うことを理解し、積極的な休暇取得を推奨する

サービスを閉じることが決まった時点で、タスクの多くは無くなっていく。とはいえ、すぐに次の仕事に移るというテンションではないことも多いため、積極的な休暇取得を経営が後押しすべきだ。「休んでも良い」というお墨付きがあることで、気兼ねなくリフレッシュ出来る。

サービスクローズまでの期間を可能な限り短くする

上述のように、サービスクローズまでの期間が喪失感を加速させていく。そのため、最短でクローズ出来るような取り計らいを会社全体として行っていくべきである。また、「一ヶ月後の経営会議まで決めることが出来ない」といった決断の先延ばしなどは言語道断であり、決して行ってはならない。

次の仕事に早めにアサインする

対処療法的ではあるが、何もせずにクローズまでの時間を過ごさせるよりも、いっそのことサクッと次の仕事にアサインしてしまった方が良い。目の前に何かやることがある方が、健全な気持ちを保ちやすいからだ。また、新しい仕事に目的を持ってアサインすることで、メンバーへの経営からの期待を直に伝えることが出来る。当然、このタイミングでの場当たり的な部署異動はメンバーへの尊敬に欠ける最も避けるべき行為であり、それを行うくらいならばパッケージをつけて会社都合で退職させる方がまだ良い。


先にも述べたように、サービスをクローズしたとしても、メンバーのキャリアは続く。閉じて無くなってしまうサービスよりも、今そこにいるメンバーの方が絶対に大切だ。

サービスクローズ後のメンバーにとっての最適解を一緒に模索することは、そのサービスにGoを出した経営の責任の一つといえる。サービスをクローズするジャッジだけでなく、そのあとに訪れるメンバーひとりひとりの喪失感ときちんと向き合っていける経営者が増えることを切に願う。



P.S. 最近はひまなので、話してみたかったり質問したかったりする方は適当に連絡してください!DMはだいたい返しています!


まいにちのご飯代として、よろしくお願いします。