「偉い人」がボトルネックにならないために、意思決定のレイヤーを理解する
事業におけるタスクの多くはプロジェクトとして進められる。それゆえに、事業における意思決定は大きく下記の二つのレイヤーに分かれる。
プロジェクトの採択や優先順位を決めるための意思決定
プロジェクト内で発生した事象に対しての意思決定
このレイヤーの違いを意識できていないがゆえに、「偉い人への確認タスクが増えてしまい、偉い人がボトルネックになった結果、事業が進まない」という問題が発生する。
うまく事業が進んでいない会社をみると、多くの場合に後者の意思決定についても「偉い人」に確認しているケースが目立つ。
当然ながら、後者の意思決定はわざわざ偉い人に確認する必要はなく、プロジェクトに閉じた範囲の確認で十分である。むしろ、プロジェクトの方針に従って担当者自身で決定すべきである。
ここからは上記の問題をもう少し詳細に記す。が、言いたいことはここまででほぼ伝え終わっているので補足程度に目を通してほしい。
どのプロジェクトを行うべきかの指針をどう作るか
実のところ、この指針がない会社がとても多い。それゆえに、いろんなプロジェクトを立ち上げては壊すだけであり、結果として事業が前に進まない。
この指針を持つためには二つのアプローチがある。未来からブレイクダウンする形のアプローチと、現在の優先事項から考えるアプローチである。通常の事業においては前者の形を取る。後者の形を取るケースはほぼ無いため、ここでは前者のアプローチのみを記す。
どのプロジェクトを行うべきか、どのプロジェクトの優先順位が高いかという話は、当然ながらその上位のレイヤーの意思決定に依存する。つまり、この上位のレイヤーの意思決定が曖昧であるがゆえに、プロジェクトの採択についてすら意思決定ができなくなっている。
としたときに、最上位のレイヤーの意思決定は当然ながらビジョンやミッション(ミッションとビジョンのどちらを上位レイヤーとするかは宗教戦争があるため、ここではミッションが最上位とする)と呼ばれるものである。
とはいえ、「世界平和」のような曖昧なミッションの場合、当然ながらその下位レイヤーの意思決定をまともに行うことはできない。つまり、曖昧なミッションの場合は最上位のレイヤーの意思決定からやり直す必要がある。
最上位のレイヤーの意思決定から不明瞭さがなくなったあとは、少し未来の意思決定、ちょっと先の意思決定、直近の意思決定へとブレイクダウンしていく。例えば、5年先の未来、1年先の未来、3ヶ月先の未来といった具合である。
ここで決められた直近の未来の意思決定に従い、プロジェクトの優先順位が決められることとなる。
言葉で書くととても簡単なことなのだが、なぜだかこれがうまくできない会社が多い。その原因は、一度決めたことを覆すことへの抵抗感であることが多い。意思決定を覆してはいけないという縛りプレイをしているがゆえに、曖昧な意思決定に逃げてしまい、その結果としてプロジェクトごとの優先順位すら決められなくなっている。
この問題に対する対処法はとても簡単であり、直近の未来の意思決定はあくまでも「仮説」であるということを認め、仮説は変わることがあるという当然の事業をメンバー全員に伝えるだけである。
ここまでがうまくいくと、プロジェクトごとの優先順位づけにおいて迷うことはほぼなくなる。そして、ここの迷いを無くすことが「偉い人」が本来やるべきことである。
プロジェクト内で発生した事象への対応指針をどう作るか
つづいて、それぞれのプロジェクト内で発生した事象に対しての意思決定の話へと移る。
ここでよく出てくる問題は、担当者自身で意思決定できないがゆえに、常に偉い人に確認することとなってしまい、結果として偉い人がボトルネックになってしまうという問題である。
権限移譲に問題があるとも考えられるが、これらの問題の多くはそれ以前の話であることが通常である。つまりは、プロジェクト内で発生した事象における対応方針を決めるというフェーズを行なっていないのである。
具体的には、なぜこのプロジェクトを行なっているのかという部分につき、偉い人と担当者の明確な合意が取れていないという部分に起因する。つまりは、偉い人の伝え方が悪い。
とはいえこれでは解決にならないため、道標となりそうなことを記しておく。
プロジェクトの背景を言語化する
そのプロジェクトをやるべきとなった理由(上位レイヤーの意思決定内容とその理由)を明確に記す
それらの背景にあった議論などを担当者が腹落ちするまで伝える
それらを全てテキストにし、お互いの認識齟齬がなく、かつ、第三者が見ても理解できる状態にする
おわり。
[なぜこのエントリが書かれたか]
若手と話していたときに出てきた話題を言語化してみたらこのエントリになった。
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