バリューの存在理由がよくわからない

仕事さがしをする流れになってしまったため、いろいろな会社の紹介資料等々を読む機会が増えた。すごく昔に(10年くらい前)に転職活動をしたときは、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の記載がある会社紹介資料などほとんど存在せず(というよりも、会社紹介資料自体が殆どなかった)、事業内容等々が記載されていただけの記憶がある。

MVVが流行り出したのは2015年前後だったと認識しており、いつのまにか多くのスタートアップではMVVが掲げられるようになっていた。

とはいえ、M(ミッション)とV(ビジョン)というほぼ同じ内容のものが二つに分かれていることが意味不明だったり(ミッションベースのビジョンとビジョンベースのミッションがあるらしく、これも意味不明)、バリューというものの存在が個人的には本当によくわからないのであった。

(お気持ち)
個人的な意見をいえばMVV自体が不要だと思っていて、会社の存在理由 or 会社のゴールを記した何かがあれば良いと思っている。しかしなぜだか多くの会社においてMVVが定義されていてよくわからない。

バリューってなんのためにあるんだろうね

よくあるバリューの例としてはこんな感じだろうか。

  • 学び続けよう!

  • Giveし続けよう!

  • 成果にコミットしよう!

  • 顧客視点で考えよう!

  • 価値のあることにフォーカスしよう!

  • プロフェッショナルであろう!

  • 大胆にやろう!

と、まあいくらでも続くのだが、これらの多くは社会人として、プロフェッショナルとして働いていくのであれば当然のことであって、その会社独自のものでもなんでもなければ、特に大した意味も無いように思えてしまう。

「プロフェッショナルとして全体最適と個別最適を考えた上でよりよい行動をとりましょう」という当然のことしか言っておらず、その価値を私たちは大切にしているといわれたところで、「そうですか」としか言いようがないというのが本音である。

とはいえ、freeeさんの「マジ価値」のような言葉はなんとなくの共通言語として使うことができ、その面では良いのかもと思うこともある。逆にいえばそれだけなのだけども。

SONY設立趣意書からみるMVVとの差異

ところで、私はSONYの設立趣意書(正確には東京通信工業株式会社設立趣意書)がとても好きでたまに読み返す。読んだことがない人はこの機会に読んでみてほしい。

ここで書かれていることは、「どのような経緯でこの会社が作られたか」「この会社の目的は何か」「経営としての考えの拠り所は何か」「会社設立時点の戦略は何か」といったものである。

そのどれもがとても明快であり、井深さんらしい言葉遣いで書かれていて、読んでいてとても清々しいし、古き良き時代のSONYっぽいなと思ったりする。

さて、このSONYの設立趣意書とよくあるスタートアップのMVVで何が違うかといえば「経営者の覚悟」ではないかと思う。

会社創立の目的
一、真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設

であるとか

経営方針
一、不当なる儲け主義を廃し、あくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置き、いたずらに規模の大を追わず
一、経営規模としては、むしろ小なるを望み、大経営企業の大経営なるがために進み得ざる分野に、技術の進路と経営活動を期する

といった部分に覚悟がよく現れていると思う。つまるところ、「この会社としてありたい姿」を経営者の覚悟と共に記してある文章だと言えそうである。

ところが、いわゆるMVVにおいてはそれらが一切書かれていない(ことが多い)。

厳しくいうならば、大して覚悟もない経営者が見栄えだけよくするために何も考えずに書き上げたものがMVVなのではないかとすら思えてしまう。(これはとても批判的な書き方であるが、的外れではないと思っている)

では、本来的なMVV(みたいなもの)、その中でも特にバリューはどうあるべきなのだろうか?

本来的には行動指針ではなく経営者からのお願い事であるべきでは?

前述のように、いわゆる社会人として働く上で当然のことを「バリュー」として定めることにはなんら意味を感じていない。

とはいえ、いくつかのケースにおいてはバリューのようなものがあると良いなと思うことがある。その最たるものが「一般社員が意思決定で迷ったときの判断基準」である。

事業を進めていく上では数多くの意思決定が必要になるが、複数の案があったときに決め手に欠けるケースは稀によくある。そんな時の意思決定基準として使える何かがあると捗るよなと常々思っており、そしてこれは会社ごとに違う基準にならざるを得ず、明文化しておくことの意義は大きいと考えている。

例えばこんな感じ。

・迷ったら自分たちが楽しめる方を選んでほしい
・それでも迷ったら自分たちの子供に誇れる方を選んでほしい
・それでも迷ったら経営層に聞いてほしい

この辺りは会社ごとの色が出るだろうし、イチ従業員の立場だったとするならば是非とも知っておきたい情報である。

もうひとつあるとすれば、事業成長に直接繋がらない行動についてのお願い事だろうか。

例えばこんな感じ。

・将来を支える世代を育てるため、事業の利益に繋がらないケースであっても人材の育成を優先してほしい
・世の中の技術発展に寄与するため、可能な限りオープンソースコミュニティへの貢献を行なってほしい

ここまでくると経営層からのお願い事でしかないのだが、これは結構気になるというか、ここに経営者の色が出ると思うので、私が働く場所を選ぶのであれば大切にしたい部分だとは思う。(もちろん、全員の年収を3000万以上にしたいのでそのため頑張ってほしい、、みたいなやつも潔くて好きだ)

おきもち

MVV(特にバリュー)について批判的なことを書いてきたが、それらを決める過程において共同体意識や共通言語が生まれていくことには意味があるとは思っている。とはいえ、それはあくまでもその時に在籍していた人だけの話であり、後から入ってくる人にとってはあまり関係ない話である。

世の中で流行っているからMVVが必要だといった形で思考停止せず、自分たちの頭で考えた上で何かを生み出していける人たちと楽しく何かができたらいいなと思う。


P.S. 無職はおしごとをさがしているので、こちらのツイート記載のNotionをお読みいただいた上で、我こそはという方はご連絡いただけると嬉しいです!ただ単に話してみたいとかそんな雑なやつも歓迎です!


まいにちのご飯代として、よろしくお願いします。