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シンガポール編①陸路で国境越え


「ここどこ?」「目的地に着いたぜ。」「電車はある?」「ない。」「両替所はある?」「ない。」「SIM売ってる?」「ない。」「wifiとか…」「ない。」

シンガポールというと、どんなイメージを抱くだろうか?治安がいい、旅行しやすい、住みやすい、など、これらのランキングは常に世界トップクラスだ。

シンガポールの空港


シンガポールは、東京23区とほぼ同じ大きさの、極めて小さな国だ。全土に地下鉄が張り巡らされ、夜間に歩いても安全なほど街灯が街を照らしており、そこらに地図や標識があり、みんな英語を喋ることができる国、というイメージが私にはあった…。そもそも、私はここに来たことがあり、当時はそのままのイメージだったのだ。


マレーシアの首都クアラルンプールからシンガポールに行くバスは、一日に何十便とあり、予約はすべてオンラインで完結する。

シンガポールの経済発展を信じてやまない私は、最適な目的地を探すわけもなく、スマホを親指でシュイ〜ンとスクロールして止まった、Boon Layという町を目的地に決めた。

クアラルンプールのKLセントラル駅から電車で1本の、TBSバスターミナル(Terminal Bersepadu Selatan)へと向かう。

電光掲示板を確認し、チケットを発券する。

すると、受付の女性が「ここじゃないわよ。」という。そんなはずはない。

「TBS?」私が指差したそれはBTS(Beriava Times Square)だった。

TBSとBTS!同じ頭文字のバスターミナルが2つあるって?!そんなわかりにくい名前にしてくれるなよ!😱

調べると、ここから10km離れている。

いや、まだ弁解したい。ここTBSの駅名はBandar Tasik Selatan駅(BTS)

ここだって、BTSじゃないか!

BTS駅(Bandar Tasik Selatan)に直結しているTBS (Terminal Bersepadu Selatan)ではなく、

別のバスターミナルBTS(Beriava Times Square)があると。

おかしい!そんなのおかしい!
そんな文句を言ったところでここのバスに乗れるわけもなく、走ってタクシーを捕まえる。

「シックスティー(1800円)」
ぼったくりタクシーに捕まってしまった。
「ノー!トゥエンティー(600円)プリーズ!」と言うと、唾を飛ばす勢いで怒鳴られた。でもこれが正当な値段なのだ。

Grabタクシーを呼んだものの、待ち合わせ場所に辿り着くことすらできない。電話がかかってきたが、相手の言うことが理解できず、「ギブアップ!」と言って電話を切った。😫

私はあきらめて、新しいバスのチケットを購入した。とほほ。2100円x2かあ〜。

指定されたバス乗り場に行くと、『シンガポール行き』の文字も、『Boon Lay』の文字もない。係のおじさんに「シンガポール?」というと、「イェッス」と笑顔で返された。

ほんまかいな。ぜんぜん違う行き先書いてあるやん。私は10分おきに、「シンガポール?リアリー?ヒア?」と聞いた。おじさんは、「イェッス!」と笑った。予定時刻になると、「シンガプー!」と声が上がった。

バスは快適だった。Wifiが使えないこと以外は。「Wifiあり」と書いてあっても信じてはいけない。まぁ、だよね〜という感じ。日本のバスは、横に2席、通路、2席がふつうだが、このバスは1席、通路、2席である。その分、座席が広々としていて、バスの乗客も6人ほどしかおらず、静かに過ごすことができた。😌


陸路で国境を越えたことは、過去に3度ほどあるが、特に困った覚えはなかった。途中でバスを降りて、出国審査と入国審査をするだけだ。ましてや、こんな大都会で困るわけなんて…

どこ行ったーーー!😱
わたしのバスはどこに消えたのー?

とにかく、人もバスも多いのだ。私は冷や汗をかいて、1台ずつバスをのぞきこんだ。せめて、運転手と乗客の顔を覚えておくんだった、と後悔した。

さらに、入国審査は長蛇の列。機械にパスポートを通すのだけど、【エラー】の文字。何度やっても、入国させてもらえない。うしろのツーリストの罵声が飛んでくる。そんなこと言ったって。けっきょく真相は謎のまま、かなりの時間を無駄にして、マレーシア人の窓口からシンガポールに入国した。

あぁ、時間がたちすぎた!私のバス!私を置いていったらどうしよう!とにかく走る!1人で走る!🥵

そのあと、バスは順調に進んだ。時刻は夜19時。6時間たったが、到着時間は知らされていない。外は真っ暗だけど、まだ心は余裕だった。だってシンガポールだもん。発展途上国じゃないんだから。地下鉄乗って、ヒョヒョーイでしょ。

旅の疲れでうたたねしていると、運転手が起こしにきた。「着いたぞ。」あわてて荷物をまとめる。乗客は、わたしひとりだ。もうみんな降りたのかもしれない。

バスを降りると、そこは、今朝いたはずのマレーシアよりも、よっぽどさびれた町だった。「ここどこ?」「Boon Lay」


「電車はどこ?」「ここにはないよ。バスを乗り継いで行かなくっちゃね。」「両替所は?」「このあたりにはないよ。ATMはこのショッピングモールの中にあるよ。」「タクシーは?」「うーん、この小さな町ではあまり見かけないねぇ。良い旅を👨🏽」

想像とちがう。ここからどうやって脱出する?😰
とにかく落ち着くために深呼吸をした。シンガポールにも田舎ってあるんだ。ここは見た感じ、インド系の人が多そうだ。

まずは、ATM。あぁどうか、カードが吸い込まれませんように。何度かトライしたが、引き出し方が分からない。キャッシングって、日本での手続き必要なんだっけ。そもそも、「引き出す」の英語がわからないよ。後ろの人の目を気にして、3回も列に並び直した。3枚目のカードで、キャッシングに成功し、50ドル札(約5000円)を手に入れた。しまった!小さなお金がない。

スーパーでSIMを探した。ネットに繋がりたい。ググりたい。Googleマップが見たい。あぁ、つくづく、スマホがないと生きていけない現代人だよ。しかし、SIMは売っていないという。私はマレーシアのSIMを見せたので、理解はしてくれたはずだ。だがやっぱり、売っていないのだ。

私はおなかが空いて限界だったが、買ったものはチョコひとつだけだった。とにかく、ホテルに着きたい。私は、バス停に行き、目的地を告げた。「240と書いてあるバスよ」これに乗れば、まずは近くの地下鉄駅に行くことができ、それから自分の予約したホテルまでは地下鉄を乗り継いでいけるというわけだ。


目の前でバスに乗り損ね、ベンチに座ってぼーっとしていると、遠くに携帯ショップらしきお店が見えた。SIMがあるかもしれないと思い、駆け込んだ。「Do you have a SIM card?」「イエス」あぁ、我が主イエスよ、マリア様よ。ぽっちゃりとしたマリア様がSIMカードの説明を始める。

「どちらも1ヶ月のSIMなんだけど、これは安いけど1日の上限があるから、あまりおすすめしないわね。それでこっちが…」「え?1日とか1週間とかないんですか?明日、日本に帰るんですけど。」「ないわね。」たった2日間のために30日分だって…?たぶんもっと大きな街に行けば、もっと便利なSIMがあるはず。でもこれ、意外と高くないかもな。

もう体力も判断力もほとんど残っていなかった。私はその1ヶ月SIMを購入し、シンガポールのネット回線に繋がり、grabタクシーを呼んで、さっさとホテルの目の前に着いてしまった。

なんだか、あっさりとした終わりである。
時刻は21時過ぎ。長い1日だったから、良いことにしよう。ふと、横を見ると、ホテルの横に「ミシュラン」の張り紙が。

「ご褒美だぁー!!」
私は、ミシュランに選ばれた大人気レストランに駆け込んだ。

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