団地のはなし
団地を見ると泣きたくなる。
平々凡々なこんな私でも、これまでの30年間いろいろなことがあった。
波乱万丈かはわからないが、それなりの出来事や経験を重ねてきた。
団地住宅に並ぶ、無数の窓。
きっかりと同じサイズ、まったくの同じ材質である。
その窓の奥にはそれぞれの人生がある。
想像もつかない、他人の生活。
生まれてから今日までの日々。
知らないひとの人生なのに、そしてこれからも知ることはないのに、涙が出る。
嬉しい言葉をもらった日
友だちと喧嘩をした日
初めて制服を着た日
お母さんに怒られた日
よく働いた日
なんだか寂しくて泣いた日
緑がいきいきとしてくる春
ひたすらに蒸し暑い夏
水道水がすこし冷たくなる秋
窓から舞う雪を眺める冬
それぞれの一日一日が、人生が、あの無数の窓の奥にある。
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