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大熊町民の私と警察のお付き合い

双葉警察署から感謝状を受けた。なにをしたということはない。3年間、双葉郡を管轄する双葉警察署協議会に大熊町委員として参加し、本日任期を終えただけだ。

警察署協議会は各警察署長の諮問機関で、管内の住民代表で構成される。大熊町に人が再び暮らせるようになって1年が経過したころ、私は単に大熊に住んでいるというだけで、双葉署に人選を相談された役場から相談され、受けた。だって、警察署から直接この地域の治安について説明を受け、質問もできるなんて、面白そうだったんだもの。
とはいえ、コロナが本格的に蔓延しはじめたころ。協議会は書面開催がほとんどで、ようやく対面での会議ができたのはこの1年ほどだ。

初めての署での会議では、道場で逮捕術の実演を見せてもらった。よくテレビで見る機動隊が持っている盾は、ゴツい署員が持てば軽々にみえるけど、実はかなりずっしり重いこと。さすまたは威嚇の役割で、あれで動きを抑制することは難しいこと。
本日は署内の留置所を見せてもらった。現在は使われていない双葉署の留置所(浜通り地域の大きな署の留置所に集約しているらしい)。避難により、留置所を維持することも難しい地域になった、ということだ。例えば、一人でも容疑者を逮捕して留置すれば、食事を提供する必要がある。1食401円(2023年3月現在)の弁当を、毎日3食、提供してくれるお弁当屋さんがいなくなった。ああ、避難というのはこういうところにも影響するのだな、と思った。今となっては、集約による人員の効率配置などの理由もあるだろうけれど。

双葉署管内では目下、窃盗が増加中。といっても、双葉署だけの課題ではい。鉄の値段が高止まりし、側溝のあのアミアミ(グレーチングというらしい)とか工事現場の鉄板とかが盗まれているという。非侵入盗というらしい。なるほど。
一方で、大熊も含め避難指示区域をいまだ抱える町では、空き巣もいまだ横行。住民が一時帰宅した際に異常に気付いて通報するものの、もはや日常生活の場ではないだけに、被害時期の特定は難しい。被害届の提出に至らずに終わるものも少なくないらしい。

町民から聞く言葉。「いまさら盗るもんなんてないのにね」。すでに必要なものは持ち出したということもあるけど、すでに盗みに入られているというニュアンスも響く。震災後12年経つ前に、あちらの家もこちらも泥棒に入られているのだ。タンスを荒らされた跡、なくなった電子レンジ、中をあらためられたお年玉袋。動物に入られるより、見知らぬ人間が自分の家を侵したことを語るとき、彼ら彼女らの顔はゆがむ。
いまさら。いまなお。空き巣の被害は続いている。

人が住んでいない家がいまだ多いこの地域は、見回りのパトカーの配置も多い。他県警からの応援もまだある。町を運転していて、歩いていて、こんなにパトカーと遭遇する地域もないのかもしれない。数年前、まだ道路しか避難指示が解除されていない地域(そんな解除の仕方もあるのだ)を歩いて家に帰っていた時、職質された。「ねえ、どこに行くの?」「え、ここ、歩いていいとこなんだっけ~?」とパトカーに乗ったまま、ため口で語りかけられた時には、無視して歩き去ろうかとしたくらい苛ついたけど。

人が少ないから、交通事故やほかの刑法犯は多くなく、よく見かけるパトカーと警察官に安心感を覚える一方、まあ、警察によく見られてる感じもしないでもないここでの生活。住み始めて日が浅い時は、うちの庭先にパトカーがやってきて、ピンポン押されて単に居住状況を確認されるということもあったなあ…。迷惑だけど仕方ない、でも、当たり前に個人情報をメモしようとする警察官に反骨心がむくむく出てきて必要以上の情報は言う必要ないとごねたなあ……。

今の大熊(双葉郡)は、少し警察と住民の関係性が近いのかもしれない。いい悪いはまた別の話。ただ、少なくとも双葉署協議会の委員としていろいろ見聞できたことは面白かったので、委員委嘱の話が来たら、ぜひ受けてみることをお勧めしたい。コロナ禍のせいもあるけど、もう少しやりたかったなと思うもの。

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