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何が趣味かと問われると

 自己紹介の場面で、趣味を言う機会は多いと思う。私は「何か作るのが好きです」とよく言う。すると「何を作るのが好きなんですか?」と聞かれる。ここで、「何か」に代入できるワードが即答できない。

 何か「を」作るのが好き、というより何かが作れそうな気がしてしまうと手を動かさずにはいられない衝動によって行動を起こした結果、何かが出来上がる。こういうものが欲しい!というアイディアがあるとは限らない。当初の予定通りのものが出来上がらなくても、結構満足している。
 金銭を対価とせずに制作活動に勤しむ、というのが「趣味」ならばそうであろう。頼まれもせずに行動を起こすならそれを「好き」と呼ぶのかもしれない。

 これまで色々な”ものを作る”習い事へ通ってみた。受講料を払うので「技術を上げなければ」と考えるほどに行きたくなくなった。突き抜けて、上手くならなくてもいい、行くのが楽しいと思うと長く続いた。
 行って先生に聞こうとしたのは、どこを手抜き(言い方が悪い)しても大丈夫ですか、どこがポイントで、どこがそれほど重要じゃないんですか、ということだった。出来上がりの成果物が欲しいというわけでもなかった。先生がどのようにものを見ているか、何でもって判断しているのか、そんな感じのことを聞きたかった。

 何かうまくいってない時、手芸キットをいくつも買って作らずにしまい込んだりもした。完成見本を見ていいなと思って、それを完成させる追体験をしたいと思って手に入れる。しかしパッケージを開けて手を動かさなければ、キットはキットのままだ。完成品ができないことに加え、作り方も材料も揃ってるのに、作らない自分でいることが自分を責める理由にもなった。

 何かを教わる時、知りたいのは先生の判断基準や考え方だった。きっとそれは、他の人がどうものを見て、考えているのかへの興味だろう。何かを作った時、出来上がったら満足して、完成品はどうでも良くなってしまう。つまり得たいのは完成品ではなく達成感だ。多分そうなんだと思う。

 でもやっぱり、達成感が欲しいです、は趣味を聞かれた時の答えとしては適当ではない。今度からは「手芸です」とか言っておくことにしようか。

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