夢見た世界の残り

　夢がかなわないのも、豊かなことだと思う。目指していたあれこれ以外のものが世界を占めている割合はとても大きいからだ。
　しかし、喪失感に溺れている最中は、そう簡単に見方の切り替えはできない。今は「失った自分」「なれなかった自分」でいっぱいだからだ。「喪失感でいっぱいの今」を、一生続けていくこともあるだろう。

　これまで生きてきて、成功よりも失敗を感じることが多かった。たまたま死ななかっただけかもしれないけど、どういうわけだが生き延びた。しかし、今生きている理由は、それだけでもいいんじゃないだろうか。

　自分の夢見た世界の残りぶん、ではなく、自分に与えられたものを、ありがたく受けとる。結構それだけでお腹いっぱいになれるかもしれない。