見出し画像

『「ついやってしまう」体験の作り方』 玉樹真一郎 2019年 ダイヤモンド社

コンセプト

 この本は、人の心を動かす体験の作り方について書かれています。その方法を「体験デザイン」と呼び、3つの形にまとめています。任天堂のゲーム機「Wii」の開発に携わった著者は、実際のゲームを分析しながら、体験デザインについて論じています。
 誰かの心を動かしたい、わかってほしい、行動させたい、そんな願いを叶えたい人におすすめの一冊です。

概要

 体験デザインとは、『直感のデザイン』『驚きのデザイン』『物語のデザイン』の3つです。
 『直感のデザイン』はユーザ自らが直感的に行動することを助け、自発的な体験を導きます。しかしこれが続くとユーザが疲れ、飽きてしまいます。そこへ、ユーザの予想を覆す『驚きのデザイン』を組み合わせることで、直線的で飽きない長時間の体験を構成します。さらに『物語のデザイン』を加えることで、状況を理解しようとするユーザを翻弄し、成長させ、自らの意志を持つまで導き、その体験を誰かに語りたくなるほどの意義を与えます。

「仮想空間」は現実のもの

 本文中に、「人はなぜゲームを遊ぶのか」という問いがありました。「ゲーム自体が面白いのではなく、プレイヤー自身が直感する体験そのものが面白いから遊ぶ」という答えに納得しました。
 ゲームにハマる人々を、バーチャルにのめり込む人、リアルを捨てた人などと表現することがありますが、その体験自体はこの現実世界で起こっていることなのでした。ゲームに没入する人への認識が少し変わってきます。

シンプルイズベスト

 私の小学生の息子たちもゲームが好きです。FPSで対戦をしたり、3D世界の中を冒険しています。そんな彼らが今、テトリスに熱中しています。きっと、直感と驚きのデザインのおかげなのでしょう。そして同じ落ちものパズルのぷよぷよとコラボしていました。対戦時、相手を攻撃するためにおじゃまキャラが降ってきます。別作品のキャラによる想定外の妨害となるため、非常に憎たらしく、面白いです。ぷよぷよはストーリーがあるので、物語要素も追加されました。

心は操作できない。しかし

 相手の行動や感情を変えることは難しいですが、体験を通じてそれを促すことができます。誰かに何かして欲しい時、体験してもらう仕組みを作るというアプローチができます。体験は記憶の現在形です。体験を記憶として残すために、相手の感情を強く動かす体験を設計することが重要です。そして、より強く記憶に残すためには自発的な経験をする必要があります。つまり、体験はシンプルかつ簡単にデザインすることが不可欠です。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?