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熱海城のように図太く生きろ

観光城や観光寺という存在が好きだ。

由緒も歴史もあったものではない。観光用の城や寺社仏閣という存在はどれも特有の図太さと異様な雰囲気があり、それは私をもれなく喜ばせる。このコロナ禍で旅行もろくにできなくなり、胡乱な観光地に行くというちょっとした趣味が満たされないまま日々が過ぎていくのは悲しいものである。

なので、今日はそんな観光城のなかでも熱海城の話をしようと思う。

熱海城はその名が示す通り熱海は曽我山、駅前からバスに乗って約15分の立地にそびえる城だ。近くには『おもひでぽろぽろ』でタエ子ちゃんがぶっ倒れたローマ風呂を有するホテル大野屋や、現役ながらも検索のサジェストに「幽霊」と出てしまう外観も内観もイカしたホテルニューアカオなどがある。熱海にはまだまだ痺れるような観光地が多い。素晴らしいことである。そんな熱海城だが、地上6階建てとなっており、なんと地下階まである。フロア別に紹介すると展示内容は以下の通り。

地下 ゲームコーナー
1階 武家文化資料館・ジェット足湯・売店
2階 日本城郭資料館
3階 浮世絵展(だまし絵・春画)
4階 江戸のなぞ絵
5階 江戸体験コーナー
6階 展望天守閣

武家文化資料館には鎧兜や日本刀など、日本城郭資料館には日本全国の城にまつわる絵画や情報などが展示されている。
しかし、しかしだ。展示されてはいるものの、絶妙な薄さなのである。炭酸の抜けかかったコーラのごとき何ともいえないあと一歩のボリューム感、展示スペースが売店と地続きになっているがゆえに「もしかしてこれも買えたりするんですか?」という甲冑。これがたまらない。

浮世絵展やだまし絵の展示は壁にパネルが貼ってあり、特設春画コーナーは薄暗い通路の中、光るパネルで闇に浮かび上がる春画が見られるスペシャルな仕様だ。

他にもチョンマゲを付けて駕籠に乗れたり、昔の遊びコーナーと称してけん玉が置いてあったりするのだが、熱海城の何よりすごいところは地下階。なんと無料ゲームセンターがある。無料で遊べる城の地下のゲーセン、日本中に熱海城だけなのではないか? 城へ観光に来てなぜゲームで遊ぶのか、それを聞くのは野暮というもの。だってここは観光城、由緒も歴史もあったものではないお楽しみ城なのだ!

熱海城の独特の味を楽しんだ方は、すぐそばにある熱海秘宝館にも是非足を運んでほしい。こちらは詳しくない人でも名前は聞いたことがあるかもしれない、日本に現存する唯一の秘宝館。由緒と歴史もバリバリにあるSSR級観光地なのでご心配なく。(※ただし人は選ぶ)

気兼ねなく旅行ができるようになったら、他の観光城や観光寺にも行ってみたい。胡乱な観光地は多くの人間をガッカリさせ、楽しませてきた人生の先輩である。私も熱海城のように図太く生きるため、今はそんな場所に行ける日を待ち続ける他ない。

【追記】ちなみにこちらのホテル貫一さんのサイトでは熱海の観光地のパンフレットを見ることができ、その中に熱海城もある。興味を持った方は、まずはパンフレットを見てみるのが良いかもしれない。昭和レトロ喫茶マップなど、かなり有能なジャンル別パンフレットもあって楽しいぞ。

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