見出し画像

いろんなものがすぐに消えてなくなってしまう世界であなたはどう生きますか?

「この日記は、日々欠落する記憶を補うためにつけることにしました。」

映画「今夜、世界からこの恋が消えても」

日野真織(ひのまおり)は高校2年生のゴールデンウィーク初日に事故に遭い、前向性健忘という記憶障害を患った。一度眠るとその日の記憶を失ってしまう。
記憶障害になる前の記憶は残っていて、このことを知っていたのは両親と親友の綿谷泉(わたやいずみ)だけ。
誰かにどんなことをされても、眠れば忘れてしまう。真織の中ではなかったことになってしまう。そのため、信頼できる人以外には記憶のことを打ち明けずに、真織は寝る前に日記をつけ、朝起きて昨日までの日記を読み返して生活していた。
そんなある日、神谷透(かみやとおる)はクラスメイトに流されるまま真織に嘘の告白をした。彼女は“お互いを好きにならないこと”を条件に告白を受け入れた。
一日ずつ積み上げられていくニ人の偽りの恋。やがてそれがお互い偽りと言えなくなっていく。
しかし、それは突然終わりを告げた。

嘘から始まった二人の恋。
無色透明だった透の人生に色がついていく。
自分が記憶障害であることを部屋の張り紙を見て知り絶望する朝を毎日迎える真織。
真織の大切な親友で、二人のことが大事な泉。

この映画は、2022年の7月29日に公開されました。
2022年の7月といえば、私は外に出られなくなって半年が経ったころでした。1月から春になるまで、外に出ようとすると不安と怖さで震えてしまい、外に出たいのに出られない状況でした。今までの人生で一番の暗闇だったと思います。それでも地道に練習を重ね半年後には、一人で映画館に行って、一人で映画を観ることができるようにまでなれました。思うように外に出られず悔しくて一人で泣いていたあの時の私に教えてあげたいです。
初めて一人で映画館へ行き映画を観ることはこの映画が初めてでした。いろんな意味でドキドキしながら観たのを覚えています。

私は原作を読む前に映画を観ました。
自然と笑顔になってしまうようなシーンもあれば、胸がキュッとなる切なさ、そしてボロボロと泣くシーンまでありました。
ファンタジーじゃない。実際にこの現実にも起こりうること。
たのしいのに切なくて、うれしいけど寂しくて。ずっと続けばいいのにって思うけど、そんなことは叶わない。透明感のある儚い青春だと感じました。

この3人以外にも他の登場人物それぞれの葛藤と決意と意志の強さが描かれている。

いつ終わるかわからないトンネルの中で、真織は透や泉のおかげもあり明るく、まっすぐ前を向き続けた。自分から逃げずに、まっすぐに。
泣いた日も、絶望した朝も、記憶がなくなってしまうことへの恐怖も乗り越えながら生きつづけていく真織の強さ。

真織と出会ったことで変わっていく透の人生。

二人の親友だからこそ迫られた泉へのある選択。

映画を観た後、小説を読んだ後、サントラを聞きながら考えてしまう。
もし、泉ちゃんの立場だったら。
真織ちゃんの立場だったら。
透くんの立場だったら。
考えただけでも胸が締め付けられて泣いてしまいそうになる。

今一緒にいてくれる人を、命を、この瞬間を大切にしようと思わせてくれる。

この映画を観てから、私は些細なことでも写真を撮ったり日記をつけたりしている。
透くんが真織ちゃんに手続き記憶(自転車の乗り方やクロッキーなどの体が覚える動き)について教えたことがきっかけで私も観る前と比べて絵を描くようになった。

私に挑戦する勇気と、何気ないことを大切にしようという想いを与えてくれました。

この世界には、消えてなくなるものが多すぎる。けれど、その中で色褪せずに残るものがちゃんとある。全部を鮮明に覚えておくことは、難しい。
それでも、そんな人間の体で、覚えていることがあることは幸せなことじゃないだろうか。

自転車の乗り方も、絵の描き方も、小さかった頃のわずかな記憶も、好きな匂い、思い出に残っている場所や友達、学校の先生も。
いやな記憶も、うれしかった記憶も。全部。

全部が交差して今の私がある。何かひとつでも違えば、もしかしたら大きく変わっていたかもしれない。数ミリでも変われば、その人の世界は思っているよりも変わるのかもしれない。
その人生の数ミリを広げることは勇気がいるけれど、挑戦する勇気をこの映画は与えてくれます。



上が映画の原作です。

下が続編のようなもので綿谷泉ちゃんメインの「あの日、居場所を失ったもう一つの恋」のお話。新しいものに挑戦する勇気・本気でやってみる勇気をもらえます。


よかったら原作もぜひ。この作品に触れることであなたの人生の幅が一ミリでも広がりますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?