浜の少年たち
陽を挫き浜の少年たちは初夏
空蟬の眼に払暁の濡れたまま
カプリブルー泳ぎ疲れた背は空室
女郎蜘蛛ちがふ唾液のきのふけふ
サーファーみな敗北の影ゆふやける
籐椅子の軋みて森の深い息
大花火青年の貌盗むまで
干潮に抱擁ずれる音残暑
チェリストに月の洞穴ありにけり
ぬるくつめたく躰はなれるときつゆくさ
熟睡のやうな胡桃をもてあそぶ
弟は月影の荷を下ろせたか
てのひらを雲の器に秋逝けり
ピーナッツ夜明けの坂で人が嫌い
唇を読むまなざしに白鳥来
冬の園ビーズのやうにあたためて
うたごゑ老い滲むけむりもこがらしも
アメリカよ寒く半端な神様よ
枯菊手にやくそく行きのバスを待つ
冬ゆふやけ浜の少年たち無尽
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豆の木賞は年一回、このところは11月頃に行われている。
賞は、参加者の互選によって決せられる。参加者全員が選者でもあるので、某作家のように泣訴状を書くべくもない。私は今年で6回目の挑戦となる。
結果は、次席。
受賞された高橋洋子さんの作品には私も点を入れたので、すっきりした敗北感がある。
でも、今回は連作のテーマを定めて臨んだ20句だけに、このまま葬るのが惜しい気がして、かつての某番組の「負けシェフの晩餐」よろしくここで公開することにした。
さて、ネタバラシ。
本作のテーマは、Brian Wilsonである。
ビーチ・ボーイズはリアルタイムではなかったけれど、初めてBrian Wilsonに触れた時は中学生だったか、高校生だったか。
グランジ、パンクに夢中だった時分に、彼の紡ぐキャッチーなメロディと錆びた華やかさのある声に急速に惹かれていった。
伝記映画も公開されたとあり、今年は彼をテーマに連作を編むことにした。ちなみに件の映画は観ていない。
筋金入りの熱狂的ファンというわけではないので、彼をきちんと投影できているか、まとまりあるものになっているかは甚だ不安ではある。
結局、元ネタは誰にも気付かれなかったのだけれど、ここで密かに呟くことで作品の供養になれば幸いである。
応募するまでは強烈な不安と自信喪失を味わうくせに、出してしまうと身の程知らずにも良い結果をいつかいつかと待ち侘びることになる。
こうした気分の乱高下が、賞に応募する醍醐味なのかもしれない。
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