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手鏡日録:2024年3月15日

これまでの人生でいちばん気の進まない確定申告を終えた。
いろいろ物申したいことはあるが、税務署への文句など世の中に溢れすぎているだろうから、取り立てて言うまい。
いやひとつだけ。税務署の狭苦しいブースに養鶏場の鶏みたいに並べられ、スマホにかかった医療費をぽちぽち入力させられたのはまあ構わない。僅かばかりの還付金を受け取ることに、そこはかとない浅ましさを認めてしまっているから。入力した数字が通信エラーで一度すべて吹き飛んでしまったのも、ご愛嬌と言っていい。
不快だったのは、すべて申告を終えた後に職員(バイトだろうか)に無言でスマホを横から勝手にいじられた上で、「スマホのファイルに保存しときましたからね。いつでも確認できますよ」と恩着せがましく告げられたことだった。
監獄実験ではないが、権力勾配のある環境下で人が暴力的にふるまうことがいかに容易であるか、思い知らされる。

いったん帰宅すると、放心状態でソファに身を預けた。とはいえひと眠りする時間もないので、のろのろと起き上がって簡単な昼飯をしたためることにする。
カップ麺、納豆、めかぶ。ぜんぶ啜るもの。
晴れているのに花粉症でつらい。
午後から仕事というのも気が重い。
テレビを点けたところで、ワイドショーがオータニサンで騒いでいるのは目に見えている。
気晴らしと思ってAlexaでかけたセントポール組曲は、Jigが終わるといつの間にか陰鬱な吹奏楽曲に変わっていた。
ため息。
どうせたやすく生きられないのだから、喉越しの良いものを好きに食おう。
窓を開ける。日なたにあるささやかな退廃としてのめかぶ納豆。
誰に構うこともない。一人きり、ずずずと盛大な音を立ててやった。

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