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『彗星書架』第4号 ~初デート~ のこと①

BL俳句ネプリ『彗星書架』も、第4号と相成りました。BLに関してはドシロウトの私も、先達からの数々のリコメンドを読み漁り、BL俳句の養分にしております。
今回も極私的・彗星書架レビューを綴っていきたいと思います。
ぜひお手元にネプリをご用意いただき、一緒に楽しんでいただければ幸いです。

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逆光』 松本てふこ

冬の眩しい日差しの中、相手方へ向ける視線から、初デートにおける二人の関係性が垣間見える。テキストとしてはどこにも書いていないけれど、それを読み取るのが醍醐味なのだ。
二句目のパーマは、似合っていないわけではないけどめちゃくちゃ似合っているわけでもない、あるいは似合っているけど素直にそう言えないスンとした感じなのかも。小六月のやわらかな日差しがふんわりしたパーマを想起させる。そこにそっと手を触れて「似合ってるよ」とささやく、そんな芸当はまだできない(多分こいつはずっとできない)。
砂浜に出てみたものの寒くて車に戻り、しばし沈黙の日向ぼっこ。そして車内に漂う潮の香り。「助手席」から「肘に肘」の距離に近付いていき、同じ匂いに笑いあう=二人の感覚が溶けあう様へと移行していくのが読み取れる。
穏やかで、安全に距離を縮めることができた初デートなのでは。
なんというかこの健やかな感じ、イイね…。


デートつて』 松本てふこ

一読して、デートに対する熱量の違う二人の初デート、と捉えたのだけれど、やはり一句目のLINEブロックが引っかかる。私の感覚では、LINEブロックってそんな軽々にするものだとは思えないのだ。引っかかると言えば、わざわざ二人で足湯に出かけているにも関わらず、「特別なこと何もせず」と感じている作中主体の感覚もやや気になる。
すなわち、作中主体のデートへの期待値が高すぎるのではないだろうか。
そしてやはりLINEブロック。これは前日あたりに何かがあったに違いない。おそらく、前日までに二人の気持ちには決定的なすれ違いが生じている。おおよそ無神経な作中主体が原因なのだが、相手も若干ワガママちゃんなのだ。要はジルベールだよ。向こうはデートなどに行く気分ではなく、かといって完全に作中主体を拒み切るだけの踏ん切りもついていない(未練を断つためにLINEはブロックしたものの)。
そこへ、いまいち彼の気持ちを察することのできていない作中主体が訪ねてきた。やむなく連れ立って外へ出る。別に腹も空いていないし、食事にはわざとチェーンの居酒屋をぶっきらぼうに希望した。このへんは、作中主体の出方を探る試し行動である。しかしそれに気付かない作中主体。彼はあえて風情のない、しかし二人で共有するスタイルであるキムチ鍋を選んで注文する。
それでもめげない作中主体。肩を並べて雪道を帰る頃には、臍を曲げていた彼も気持ちがちょっぴりほだされるのを感じている——みたいな妄想がはかどるぅー!

で、てふこさんの2作品だが、当然「デートつて」のほうが好きでした。
だって妄想がはかどってしまったんだもの。

(つづく)

彗星書架のプリントはこちら↓


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