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遠回りも、いいもんだよ

「過去に戻ってやり直せないんだよ、今は今しかないんだよ」

友人が言ってくれた言葉のおかげで、ようやく6年勤めた葬儀屋を辞められた。何度も何度も辞めようと思ってきたのに、そのたびに二の足を踏んでしまったのは、想像してしまったから。

辞めても新しい職場が見つからないかもしれない。食べていけないかもしれない。せっかく転職できても、また同じような会社で悩むことになるかもしれない。

大小取り揃えられた「かもしれない」に囲まれて、身動きがとれなくなっていた。そんなときに打開の一撃をくれたのは、友人の一言だったのだ。

葬儀屋を辞めてからも、正直いって、順風満帆ではなかった。

実家に戻り、近所で書店員のアルバイトをしても、月収は5万円。家族の支えがなければ食べていくこともできなかった。

そんなバイトも半年ほどで辞めてしまい、たまたま近所で見つけたPC教室の講師として働き始めたけれど、月収は10万円。「契約社員から正社員にならないか?」と声をかけてもらえたけれど、給料は1万円しか上がらないと知ってそこも辞めた。

二度目の転機があったとしたら、それはオンラインサロンとの出会いだ。

さまざまな人と知り合った。いろいろな働き方があることを知った。「フリーランス」「Webライター」といった馴染みのない言葉をたくさんたくさん摂取して、新しい「かもしれない」を手に入れた

もしかしたら、私もフリーランスになれるかもしれない。Webライターとして仕事ができるかもしれない。時間も場所も自由な働き方ができるかもしれない。

仕入れた情報を元に、行動し、真似しまくった。「Twitter発信をがんばろう」と言われたら1日30ツイートしたし、「クラウドソーシングに登録しよう」と言われたらとりあえず登録した。無料有料問わず、良さそうなライター養成講座があれば手当たり次第に受講した。

総額でいくらかかったかなんて怖くて計算できなかったし、今でさえしていない。とにかく未来の自分への投資だと思い、少しでも身になりそうだと直感したらチャレンジした

クラウドソーシングで受注する案件は、たしかに低単価だ。文字単価1-2円なんてまともなほうで、0.8円や0.5円なんて案件もある。内容はともあれ、がんばって3000字書いても1500円の収入。何度も気が遠くなった。

クラウドソーシングをネガティブな目で見るつもりはないけれど、正直いって「これだけでは食べていけない」と思った。医療・法律・金融など専門知識があれば別だけど、一般的なキュレーションサイトへの無記名記事だけせっせと書いていてもまとまった収入にはならない。早めに抜け出さないと地獄にハマっていく。とにかく、こわかった。

クラウドソーシングで受注した案件を継続してもらえるよう努力したり、ほかにお仕事がないか紹介してもらったりなどした。良いタイミングで単価交渉も抜け目なくした。並行して講座にはひっきりなしに通ったし、文章術に関する本も読みまくった。余談ですが宣伝会議でやっているライター養成講座はとても良いのでおすすめします。

気づいたらいくつかの継続案件をまわし、月の収入が葬儀屋時代を超えるようになった

近道なんてないんだ。とある瞬間、染み入るようにそう感じた。思い切って会社を辞め、フリーターのような生活をし、見切り発車でWebライターになって3年め。3年。3年かかった。ここまでくるのに3年もかかった。まだまだ理想には遠いけれど、コツコツ回り道してきてたどり着いた今だ。

やりたいことがある人たちへ。

なんとなく世の中は「個の時代」と言われるようになってきて、会社へ所属するよりもフリーで働くほうが自由だし、ある程度好きなことができると思われている。たしかに、そういう面もある。

ただ、ここまで来る道のりは長いし険しいし、決して楽なんかじゃない。パッと見は楽しそうにやりたいことやって稼いでそうに見える人も、その地点まで行くのには表に言えない量と質の努力をしてきたはずだ。それか、一部の天才か。

近道なんてない。一発で理想や夢が叶う魔法なんてありえない。

それでも、遠回りもいいもんだよ、とようやく言えるようになった。

つらかった。しんどかった。実家がなければ、支えてくれる家族がいなければ、とてもじゃないけど実現しなかった。長い長い時間がかかったけれど、途中で止めさえしなければ見えてくる。続けてさえいれば道がみつかる。

まだまだゴールは遠い。3年なんてビギナーの域だ。これからも先へ向かって歩いていく。遠回りだけど、回り道だけど、確実にやりたいことをやれる道だから

遠回りも、いいもんだよ。


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