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ハードラックグルメレポート5

神戸市某所ラーメン屋


このシリーズも5回目である。
前回の記事のタイトルは「ハードラックグルメレポート3」であった。
その前も「ハードラックグルメレポート3」であった。

今回の記事の執筆にあたってナンバリングを確認した所、3が2つあるのを見つけた次第である。
如何にいい加減な人間が書いているのか良く解る話である。

さっき直しました。
ごめんなさい。

夜勤の前にラーメンを食べに行こうという事になった。

数年前の事である。
客先の都合によって時間が変わる仕事をしていたので、夜勤はしょっちゅうあった。
帰宅が日の出より後というのもしょっちゅうである。

まだ若い…とも言いづらい年齢でもあったので、とにかく精のつく物、ニンニクをよく食べていた。

その日のラーメン屋は同僚曰く、ニンニクラーメンが美味いという話を聞いたとかで連れていかれた店であった。
是非とも行きたいというのでご相伴する事にしたのである。

少しばかり会社から離れた所にその店は有った。

多少年期の入った看板は油に汚れ、濃いめの豚骨の臭いは嫌でもラーメン欲を掻き立ててくる。

入店するとそこは…薄暗かった。
蛍光灯の数が少ないのだ。
少なくとも、客商売をする場所としては。

カウンターだけの店内に客は誰も居なかった。
年若い店員が一人、背中を丸めて座っていた。

カウンターに座って一通り、出された水を飲みながらメニューを見る。
換気の調子が悪いのであろうか。
メニューは油でコーティングされていて、妙に指に張り付いた。

空腹だったので、チャーハンセットを頼む。


ラーメンはニンニクラーメンだ。

注文を通して、カウンターから厨房を見る。
よくあるラーメン屋の風景。
寸胴に放り込まれる麺、並べられる器、衣装ケースのごとく大きなタッパーから出されるチャーハン…

そう。やたら大きなタッパー(ひょっとしたら5合入りの米櫃とかかもしれない)から、お玉でチャーハンを掬い中華鍋に放り込んだのである。

温めなおしか!?
作り置きのチャーハン多いな!?その量のチャーハンはあんまり見たこと無いぞ!?
というか、そういうの見えない所でやってくれ!

僕の心の声は店員には届く筈もなく。しかし同僚には届いたようで、こちらにアイコンタクトを送ってきていた。
「スマヌ…」
「ええんやで…」
良くは無い。

そうこうしているウチに出てきたチャーハンは、緑色だった。


なんでやねん。
なんで緑になるねん。
緑になる要素ないやろチャーハンに。

言いたい気持ちを堪えてチャーハン用のスプーン、レンゲを差し込む。
ぐちょり。

店屋物のチャーハンはパラパラしているのが多い。
家で作るチャーハンはしっとりとしてしまう場合が多い。
コレは作り方以前に火力の違いがあげられるというのは、チャーハン通でなくともよく知られている話であろう。

しかし、このチャーハンはそのどれでもない感触をレンゲ越しに伝えて来たのである。

よく見てみると、レンゲの中で掬った米粒から油があふれだしている。
レンゲを傾ける事で、油を切る事が出来る位油があふれ出していた。
その油が緑色をしているのである。

一体何故!?
一体何故油が沁み出しているのか!?
一体何故その油が緑色なのか!?

真実を探るべく僕は、そのレンゲを口に入れてみた。

まずい。

油が多すぎる。
噛めば噛むほど油が出てきて、その油がなんとも気持ち悪い。

急いで、後から出て来たラーメンをすする。

本能が警告を出してくる。
気を他にやったらおしまいだ。
掻き込む。チャーハンを掻き込む。ラーメンをすする。
無心。
ひたすら無心に。
少しでも正気になったら、完食は間違いなく無理である。
ただただ、無心に掻き込んだ。

店を出て同僚が、ぽつりと言った。
「チャーハンと言うより油ごはんって感じやったな」

ちなみにラーメンの味は覚えていない。

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