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エッセイ『味覚嗅覚いずこ?』

先週ちょいと軽く風邪を引いてしまいましてね。

まあ、熱も微熱で病院に行ってコロナでもなかったので、クーラーに当たりすぎて夏風邪でも引いたのだろう、と高を括っていたのですが、えらいもんで噂の症状、味覚嗅覚がなくなる状態に陥ってしまいましてね。

怖かったですよ、火曜日の朝。
その日は休みでゆっくり朝寝坊しようと思うていたのですが暑くて明け方目が覚めてしまい、やれやれこんなもん熱中症なったら敵わん、どぉれ冷蔵庫に入ったアクエリアスでも飲んだろかいと寝ぼけ眼で蓋を開けてグビグビ液体を喉に通過させてみたのですが、味がない。

ん?はて? …あ、たまに、ありまんねん。
なんかデートを控えてるわけでもないのに前日丁寧に歯を磨いてしまったせいで口の中が口臭ケアとしては万全なのだが、飲食物の香りを一切通さない時。あれやあれ、と、思ったけれど前日そんな丁寧に歯を磨いた記憶もない、でもあの時の感覚に近い、いや、むしろあの時より何もないぞ。。え、、嫌や、あれ、、怖っ!怖っ!
で、慌ててカフェ・オ・レに手を出したのですが、ほおれ見たことか!水飲んでるみたいや。
…嘘やん。
カフェ・オ・レとアク・エリ・アスを飲み比べて違いが分かりませんのや。

利きシリーズ全くわからずの図

びっくりしましたの、ほんと。
夢でも見ているのではないか、怖っ、ゾゾ毛スタンダップ、そんな状況。
怖いから一旦寝てから冷静な頭でもう一回考えようと思い、ふたたび就寝。
半分現実逃避、布団被っててグースカ寝て昼前に起きてリトライ!
カフェ・オ・レ、アク・エリ利きドリンク一本勝負!…見事完敗。味もニオイも全くせんので落ち込みましたわよ、これほんまに、とほほ。

三日くらい続いたでしょうか。

もう二度と味の違いなどわからないかもしれない、そんな不安に苛まれながらも腹は減る。味のしないものを口へ運ぶ作業はなんとナンセンスなのだ。だりー、まじで飯食うんだりー。
ぜんぜん旨ない、お茶ぜんぜん合えへん、合う合わんと言うより『無』。『無』なのよ。

ニオイがわからん恐怖は食だけに止まらず別にもあってね、にっくき生乾きのニオイがわからんのよね。
これは怖いよ。
鼻が利かなくなった日に外に洗濯物を干したのですが突然雨が降ってきやがったもんだから部屋干しにシフトしましたの。
でもなんか怪しい気がして洗濯物のニオイを嗅いでもわからない。
「生乾きですか?」って聞いても「うん、生乾きー!」ってパンツや靴下が答えてくれるわけもなく半信半疑で着衣するしかもう手立てがない。生乾きのニオイを垂れ流しにしているくせに堂々と公共機関を利用する哀れなおっさんにだけはなるまいと死んだじっちゃんと約束しましたが、その約束もこんなお粗末な鼻になってしまっては破るのも時間の問題。あたしゃ周りから「くさいねー、あの人くさいねー、こっち来た!くさいの来たから逃ーげよ」と言われる毎日を送るより他ないのかしら。悲観しちゃう。涙が出る。地獄や地獄。死んだ方がマシじゃね?とか思っちゃうのですよ。

地獄の図


悲惨な火曜日に始まり、陰鬱な水曜日、辛辣な木曜日、解脱する日は一体いつになるのやら。

回復の兆しが見えたのは突如としてでした。

朝イチでとかではなく、
夕方に突如として訪れたのですよ。
職場のみんなが靴を履き替える下駄箱があるのですが、開けた瞬間、「クサっ」と思って。
…えっ?あれ?そういえば俺って確かニオイ全般わからん人間じゃなかったっけ?うそ?治った?
もう一度確認のため下駄箱を開けたらやっぱり臭い、まぁー臭い。
…嬉しかったねぇ。

におい感じてソーハッピーの図


くさいのがわかるとこんなにも嬉しいのかと実感。そして独りって色んな意味で怖いなーと実感しましたわよ。アローン🥺

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