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ゲームキーパーの下ごしらえ。

さて、現在はTRPGのゲームキーパーをやり切るべく作業をこなしている。特に、勢いがあるうちに手の届く範囲から、今回プレイできそうなシナリオをピックアップして印刷しておいたのは良かった。ありとあらゆるものが電子化している昨今だが、動画を見たり調べ物をしながら手元に紙があるというのは良い。

まず紙は読むことに集中できる。正確には読むこと、そして追記くらいしかできない。しかし、そこまで機能を絞らないと使いづらい。なぜかと言えばiPadで見ようものならソシャゲの通知が来てそれをタップしたり、分からない言葉を調べてはいつの間にかTwitterを開いていたりする。紙は通知も来ないし突然Twitterにいることもない。便利なものに囲まれている中で、明らかに私側の欠陥によって紙が選ばれている。デジタルで気を散らすこと無く作業ができる人はすごい。きちんと集中モードなどの、気を散らさない工夫をしっかり活用しているのだろう。

全く別の話だが、私は腕時計をしている。スマホで時間の確認をすることはあまりない。なぜならスマホを開いたらいつの間にかTwitterを開いているからである。G-SHOCKにはまだそのような機能はない。同じ理由からApple Watchも使っていない。たくさんのことができすぎる。それは使いこなせればより効果的なのだろうが、すべての道がTwitterへ繋がってしまう以上、読む時は紙、時間は時計、と分けたほうが多少手間はかかるが気を散らすことはない。

さて、以前は無知の状態だったが、いくつかのシナリオといくつかの実際にプレイしている動画を見た。舞台装置の工夫があるシナリオや、手慣れている人はもちろん、辿々しさがありながらもシナリオとして成立しているものがあった。

そして、手元にあるシナリオについて印刷した紙を見ながら実際のプレイ動画と見比べる。そうしてみると、シナリオの内容と実際出来事が大きく異なっていることがある。例えば、出会う人の順番、情報開示のタイミング、あるいは物語を根底からひっくり返すようなダイスの出目。それらを踏まえてゲームキーパーは、シーンを進める語り部となる。また、時には一人のキャラクターとして物語を先導していくのだがシナリオの想定している道とプレイヤーたちが歩く道が全く異なる場合もしばしばある。

土台がしっかりある中で、必ず通ってほしい道がある一方、情報を手に入れる方法については帳尻が合えば多少の融通は効く。しかし、例外措置というべきか、物語がピークに差し掛かるときに、プレイヤーたちと物語とが強い摩擦を引き起こすタイミングがある。ゲームキーパーは、それをどう捌き切るかを含め手腕を問われるようだ。

本来ある物語の都合上通らなくてはならない道、動き始めて変わったシナリオや、物語を通じて変化していくキャラクターたちの存在が、当初の想定の外側へとハンドルを切る。それに対して、瞬発力や機転を利かせてお互いに対応する。物語の進もうとする道とプレイヤーたちが進みたい道が、違う時に果たしてどのように立ち回るか。

それはまるで脚本家のようではないか。かれこれ二十三年ほど仮面ライダーを追いかけ続けている私にとっては、まさに「憧れの職業」である。自分のやりたいことと他人の要望に挟まれながら、脚本を成立させていく。様々なリクエストを組み込み、必要なクオリティまでしっかり練り上げる。物語が始まってからも、想定外の事態や本来のシナリオを蹴り捨ててでも優先すべきことや絶対に譲ってはならない一線、そして「ダイスに任せる」という条件で決着するか。テーブルについてからは、まさにキーパーでありゲームとプレイヤーの間に立って調定をするような役割になる。

特に今参考にしているのはディズムさんだ。幾多のゲームキーパーをしており、同じシナリオを演じるときも全く違った世界が見られる。どうやらそれは「全員が納得して進められる物語にする」という信念の元ゲームを回していることにも関係がありそうだ。そして、事実彼は決断を迫るときとは別に、提案を行う際「この進め方で納得できますか」とか「私が納得すれば大丈夫です」と、いった言い回しをする。物語は大切だが、それと同じくらいには「納得の元進める」ということを大切にしているのだろう。

それに、ディズムさんの動画も含めて自分の手元にあるTRPGのシナリオタイトルで検索をかけるとプレイ動画を公開している方もいる。そして、私は手元にゲームキーパー用の資料を出すのだが、やはり、順番の前後やプレイヤーたちのやり取りを尊重して情報を差し込んでいく。その手腕や柔軟さ、何より通ってほしいところにはしっかり通ってもらいつつ、強制されているような感覚と距離が取れるようにする工夫は見習うべき部分がとても多い。

キーパーによって何を重要とするかは違うだろう。例えばクトゥルフ神話TRPGのルールブックにはエンタメ性よりリアリティを重視した動かし方もある。また、双方がルールを理解している前提のもとで内容を決めていたり、進行に対して「こういう行動はどうか?」と提案していたりする。プレイヤー側がTRPGのゲーム性に詳しくなるほど抜け穴や、壁にヒビのある場所を見つけて爆弾を仕掛けるように「ここには〇〇ができることにしませんか?」と目敏く提案してくる様子も見られた。

さて、そうした事態に私がどう対応するかについて検討するのも大切だが今はもっと大切な事がある。

ゲームそのものの用意だ。TRPGは謎解きの要素もあるので、一度やってしまったり誰かがシナリオをプレイしている様子を見てしまうともう答えを知った状態でプレイすることになる。なので、プレイヤーとして一緒にワクワクして謎解きを楽しむことができなくってしまう。その性質上、準備の大半をゲームキーパーが行う。

具体的には、まずココフォリアというサイトにルームを作り、新クトゥルフ神話TRPGのルールを適用する。それからキャラクターを入れる。一人、二人、三人……とイラストと名前を入れていくのだが、そのイラストも用意する。シナリオと一緒に配布されている場合もあるが、無いときには作るしかない。ただ、私は絵が書けないのでキャラクターメーカーサイトで立ち絵を作る。それらをページにアップロードして必要に応じて名前やステータスを入力していく。

次にシーンを作成する。場面に合わせた画像やイラストを入れて、音楽を入れていく。私はイラストも描けなければ、写真も撮れず、曲も弾けないので「〇〇 フリー素材」などとグーグルで検索して状況に合わせたものを入れていく。状況に合わせたもの、というがでは何が状況に合うのかに関してもまたプレイ動画を参考にする。一つ困るのは、画像や音楽は検索しづらいのだ。例えば動画ですごく良いシーンがあったとする。しかし、その画像とその曲が何であるかについての文字的な手がかりは無い。

一応、ツールとして画像検索や音楽検索は存在している。しかし、あるのと使えるのは別問題であり、使えるようになるかどうかもまた別問題なのである。目的を見失っては問題を増やすだけなので、まずは、自力でできるところから着手する。実際、今回ピックアップしたシナリオは、キャラクターか背景のどちらかがいくつか用意されているものにした。

しかし足りない分は数少ないゲームキーパーの知識で補っていく。私はこれまでやってきた手順に沿ってキャラクターを入れていき、背景となる画像を検索して入れた。難関は曲で、しっくり来る出だしのものを一旦入れてみて流しつつチェックする。ここは次回作るときには音声検索をして、良いと思ったものへアクセスする速度を上げたほうが早くなるだろうと感じた。

さて、こうしてキャラクターとシーンの二つを入れ終わった。一応、シナリオをめくりつつ、頭からシーンを確認していく。使わないシーンが出てくるぶんには良いが、必要なシーンが抜けていたり場面に合わない曲が意図せず流れていないかを確認する。私の意図通りで場面に合っていないならもうそれはセンスの問題なので、後回しだ。

こうして、一本のシナリオを遊ぶ準備のうちゲームキーパー側の準備が終わった。実際は、プレイヤー側にも自分のキャラクターを作ってもらう作業がある。特に今回は新ルールへ移行するので、これまでやっていた人からもルールについて質問が生じる可能性が高い。作っている時は検索してもらえれば出るし、シナリオが始まってからでも「ちょっとルールブック見まーす」と言えば良いのだが、それらを踏まえても正確に情報を伝えられることが望ましい。確かな知識や、認識の齟齬をしっかりとなくしておくことは納得する上で重要なことだ。不信感やズレた認識は合意から人を遠ざけてしまう。

特に間違った知識を伝えてしまい、訂正するタイミングを逃してゲームが進んでしまおうものなら、それなりに目も当てられないバッドゲームが誕生することになるだろう。避けたい。それだけはなんとか避けたい。

脚本家を夢に見つつ、一通りの面倒な作業もこなす。半分以上が面倒な作業である。それは事実だ。しかし、だからといって辞めるわけにもいかない。やりたいことは常に楽しいことばかりではない。また、割いた労力が全て報われるわけでもない。

できるからやる。ゲームキーパーは、今の私ができるからやる。元々憧れだったからやる。あと、ダルいことはやらなくてもいいみたいな風潮に逆らうためにもやっておく。ゲームでも面倒くさいことや、思ったとおりに行かないことばかりだ。

しかし、そこで投げ出しては私の中にいるすごく厄介な何かが「てめぇは、仮面ライダーから何を学んだんだよ!」と叫び始める。そうだ。私のしていることなど、最前線で血まみれになって身を削っている人からすればお遊びだ。しかし、遊びに本気になれないような大人にも育っていない。……と、思う。正直、自信はない。

まず人に見せられるまで仕上げたシナリオが一つある。そして、まだいくつか手元にシナリオは残っている。次は、音楽検索ができそうなシナリオが一つあるのでそれに着手して成功するかどうかによって、ゲームキーパーとして動かせるシナリオが増えるかを大きく左右するだろう。

とりあえず、今の力でそもそも一本のゲームを作り上げれるかどうかは試し終わったので、次はまた別のことを試す。そういったきっかけがないと手が動かなくなりそうなほどには、ゲームキーパーの作業は手間だ。もう少し、手順を整理して圧縮していきたい。今は特に、音楽面だ。いい曲を早く探し当てる。

それから、時々こうして経過を記録しておく。人は慣れると、大変だった頃のことを忘れてしまうものだ。知ってしまうと知らなかった頃には戻れない。

私は以前と比べれば無知でも無力でもなくなった。ただ、知識はまだ浅く力も弱い。微力で微弱である。

しかしそれでも、三回目だか四回目のゲームキーパーのときに、私がどこまでできていたのか。あるいは、できていると思いこんでいたのかは書き記しておく。私はすぐに忘れてしまう。

あるいは、忘れるために書いておく。ゲームキーパーをやりきるにあたって、そこまで積み重ねた苦労には、しがみつかない方が良い。それは、直感的なものだ。どうあれまだ、片手で数えられるほどしか私は経験を積んでいないのだから。

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【参考】
ディズムさんのYou Tubeチャンネル


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