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魔法骨董ここに眠るプレイ記録Ⅱ


 前回のプレイ記録及び概要はこちら。

では、始めてまいります。

2022/08/25

《セットアップ》

【魔法道具の形】伝えるもの
【道具の効果】均整
【効果の程度】3(ちょっとした効用) 
【道具の概要】伝えた言葉の重さが質量として伝わる糸電話

《リーディング》 
  1d6 (1D6) > 3
この魔法道具から掬い上げられる思い出は三つ
カードを三枚めくる。

  【赤の4:一番長く使っていた人間のこと。大事に使われていたのか?それともたまたま置かれていたのか?】

  ずいぶん昔に流行した魔法道具だ。かつての持ち主は、自分の両親や友人と話す際の遊びとしてこの骨董を用いていたのだろう。魔法自体も簡素なものだ。相手の言葉の重さが自分の手元に伝わる。言霊を導線で魔力に変換し一時的にもう片側の電話がその魔力分、重量を増す仕組みだ。どんなに心を込めた言葉を放っても、せいぜい500グラム程度にしかならないだろう。むしろ、そのように調整されていると言っても良い。この電話は特に、悩みを相談するときに重宝した。元の持ち主はこれを通して悩みを相手に告げると、その言葉の重さを相手と共有することができた。それは、表情や声色を伝えることに加えて、相手に対して「重さ」という具体的な指標を与える。それがこの魔法道具の効用であった。

  【黒7:持ち主が道具を携えて何かを達成した。人間にとって好ましいことだったのだろうか?】

  いくらかの相談に乗るうち、言葉の重さや程度の比較ができるようになった。手のひらに伝わってくる重さと、耳に届く声は持ち主やその周囲の隣人の悩みを共有し合える良き共となる手伝いをした。その一方で、自分の悩みと他人の悩みを重さで比較するようにもなった。いつしか、持ち主やその友人達は言霊に込める魔法をある程度操れるようになり、重さを偽装できるようになった。一時は、彼女たちをつないでいた糸は、次第に疑念をもたらすようになった。

  【赤2:持ち主が何かに悩んでいた。または決断をした。どんなことをだろうか?】

  元々、遊びの道具のようなものだ。それから、徐々に内緒話をするにしても、持ち主や友人達は自然と声の重さを、相手に悟られないように調整ができるようになっていった。だから、初めのうちは「大丈夫」も「悲しい」も、ずっしりと手に伝わってきたが、彼女たちはその声色や重さを偽ることにも慣れていった。しかし、実のところ持ち主は、相手が言葉の重さ偽っているときに生じる独特の重さがあることに気がついた。ずっと使ってきた魔道具だ。重さを変えられることに気がついたのも持ち主が初めてだったが、偽りの重さに誰よりも早く気がついたのも持ち主だった。友人や家族の声とその重さの真偽を自分だけが知っている。その真実は持ち主の胸の内にしまわれることとなった。

  《エンディング》
この魔法道具に二つ質問ができる時間が残されている。

  Q1:あなたが後悔していることは?

  主は、声の重さを変化させられることに気がついてから、あまり私を使って話さなくなった。ほとんど聞くばかりになった。年老いて、耳が遠くなっていってからも、ただ手に伝わってくる振動とその重さにばかり気を向けていた。だから、主はいつからか、相手の目を見て話さなくなった。目を閉じて、私を耳に当て声の重さを知っては愉悦に浸る。私はそのための道具になってしまった。

  Q2:あなたが誇りに思っていることは?

  結果はどうであれ、私を通して主にだけ秘密を打ち明けた人物や、主に聞いてもらうことで心が、あるいは、声が軽くなっていった人物は確かにいた。何より。そう。「ありがとう」という言葉の重さを知ることができた。それは私の生涯における誇りだ。

魔法道具はその言葉を最後に力を失った。

私は、道具を商品棚に並べ、カードに商品名を記載した。

  商品名:平気なふりをするための糸電話

次の骨董品へ進もう。

―――

  2022/08/25

《セットアップ》

【道具の形】伝えるもの
【道具の効果】保安
【効果の程度】2(ちょっとした効能)
【道具の概要】持ち主が危険を感じると大音量が鳴り響く鈴

《リーディング》

1d6 (1D6) > 2
この魔法道具から掬い上げられた記憶は二つ。
カードを二枚めくる。

【赤の2:持ち主が何かに悩んでいた。または決断をした。どんなことをだろうか?】

本来防犯に使われるもので、少年少女はよく持ち歩くのだが少々の感情の乱れや危険を感じやすい人間ほど誤作動を起こしやすい。また、防犯に用いられる特性上、鳴らしたあとは特定の手順を踏まなくては音を消すことができない。

持ち主は動物や物音に敏感で幼い頃はよく誤作動をさせていた。ただ、その結果、犬などの動物は持ち主から離れていった。また、この魔道具によって人攫いは激減した。

ただ、そうした効能がある一方、持ち主は「臆病者」と長らくからかわれることとなった。

【黒の4:一番長く使っていた人間のこと。大事に使われていたのか?それともたまたま置かれていたのか?】

持ち主が数え年にして10を迎えるまでの間は、常に身につけるよう言われていた。また、簡単に外れないよう左足のくるぶしに付いていたようだ。

間違って音を鳴らしてしまったとき、自力で止められるようになるまではその音を鳴らして泣きながら家路へ走って帰っていた。

自力で止められるようになってからも、自衛のためとはいえ、常に身につけており恐怖するたびに耳を貫くような音が響き渡るので、持ち主は忌々しく思っていた。

《エンディング》

この魔法道具には二つ、質問ができる時間が残されている。

Q1:あなたが好きになったものは?

この魔道具を止める手順は、鈴を手に握り「私は大丈夫」とつぶやいてから指を鳴らす。というものだ。この魔道具はこの仕草をとても気にいっていたようだ。この仕草は、持ち主に安全がもたらされたことを知らせるものだったからだ。

Q2:次に引き取られるならどんな人が良い?

できれば、ミサンガに結ばれてまた誰かのくるぶしに結ばれたい。あの位置は、私にとって一番落ち着く場所なんだ。

魔法道具はその言葉を最後に、力を失った。

私はこの道具も棚へと移し、カードに商品名を書き込んだ。

商品名:旅路の安全守り

―――

  2022/08/28

《セットアップ》

【道具の形】身につけるもの
【道具の効果】記憶
【効果の程度】1(ちょっとした効用)
【道具の概要】燃やしたものが相手に届くライター

《リーディング》

1d6 (1D6) > 5
この魔法道具から掬い上げられた記憶は五つ
カードを五枚めくる。

【赤8:他の魔法の道具との思い出。どんなことを話したのだろう?】

この魔法道具は古来、伝達に使われていたものだ。宛先と内容を書いた上で送る。しかし、その特性上、書いたものを燃やしてしまう。この道具とは速記ペンがよく使われており、相性がよかった。道具同士の相性というものもあるが、燃えやすい紙と書きやすい紙の好みも一致したのだろう。万年筆と呼ばれていたペンとは、万年とは行かないまでもかなり長い間相棒として連れ添っていたようだ。

【赤3:人間があだ名をつけたり、新たな使い道を探していた。うまくいったのだろうか?】

ペンとライターは凸凹コンビと呼ばれていた。伝書鳩よりも早く、のろしよりも正確に内容を伝えられる。距離として、そこまで遠くは行けなかったが、どんなものに何を書けば届くのかを試したことはあった。また、文字を記す形式の魔術であれば、紙に書きこのライターで「宛先」へ飛ばすことで使うこともできた。


【赤5:持ち主が代わった時のこと。合意はあったのだろうか?】

この魔法道具は伝達を生業とする仕事場の備品だった。数年に一度持ち主は変わる。そのときには相方はインクを補充され、このライターはオイルを補充された。インクとオイルの切れるタイミングがバラバラのこの二人だったが、引き継ぎの時だけはこうして二人して満タンに揃えられた。


【赤K:人間、あるいは世界について何かを学んだ。何がきっかけになったのだろう?】

このライターそのものは魔法道具としてそこまで大きな効用はない。あくまで文字を飛ばすだけだ。しかし、魔術を込めて飛ばした場合には厄介なことになり得る。例えば、机に宛てて「炎」の魔法を放てば簡単にものを燃やすことができる。

ただ、相棒であるペンのインクは特別なもので、誰が使ったかをすぐに特定できる。人間は賢いものだと、ライターは感心した。


【黒5:持ち主が代わった時のこと。合意はあったのだろうか?】

ライターは人を選べなかった。ペンもそうであったが、火をつけるのが得意な者と苦手な者がいた。ライターに仕込まれた火打ち石は、誤作動を防止するための仕組みではあったが、しかし、年々、その火打ち石をうまく使える人間が減っていった。


【赤K人間、あるいは世界について何かを学んだ。何がきっかけになったのだろう?】

ライターはいつも燃やす係だったので、手紙の内容を知ることはできなかった。しかし、速記ペンから今送った手紙の内容について、こっそりと教えてもらうことがあった。毎週、同じ内容でうんざりするとか。今日の担当は字が汚いとか、そんな話もあった。

そうして人間は、速記ペンで紙に字を走らせると宛名を書いて封をして、このライターで燃やした。人間が立ち去ったあと、二人は今の人間が何を送ったのかを話し、笑い合った。


《エンディング》
この魔法道具には一つ、質問ができる時間が残されている。

Q:引き取られるならどんな場所が良い?

速記ペンに、もう一度会いたい。実は、寿命は彼の方が早かったんだ。ライターより、使われている時間はずっと長い。僕は最後に一度使われるだけだけれど、彼は何度も書き直しをしたりペン先が潰れたりして幾度も修理をされていた。それから、彼がいなくなってしまって。僕の魔法もどんどん薄くなっていった。

だから、素敵なペンの傍らに、僕を置いてほしいんだ。


その言葉を最後に、魔法道具は力を失った。

ペンの傍ら、パイプが好みの文筆家に引き取られることが、この骨董の望みと近いものかもしれない。

私は棚にライターを並べ、商品名をカードに記した。

商品名:文豪の一服

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2022/08/28

《セットアップ》

【道具の概要】ペンデュラムイヤリング

僕の仕事道具だ。しかし、今にも魔力が消えそうだ。

《リーディング》
1d6 (1D6) > 3
この魔法道具から聞こえる思い出は三つ。
カードを三枚めくる。

【赤3:人間があだ名をつけたり、新たな使い道を探していた。うまくいったのだろうか?】

このペンデュラムイヤリングは、実のところ安物だ。元々は占いをしたり、捜し物を見つけるための魔法道具として用いられるはずだったが、不純物が混ざっていたために小さく削られてペンデュラムイヤリングとして再利用された。

【黒3:人間があだ名をつけたり、新たな使い道を探していた。うまくいったのだろうか?】

ペンデュラムイヤリングとなってからは、日々道具として活用された。ただ、それ以外の道は与えられなかった。例えばアクセサリーとして使われることはなかった。あくまでも、骨董品の気持ちを読み取る道具として使われた。生まれながらにして不良品であり、新たな場所においても「ペンデュラムイヤリング」としての枠組みから離れることはなかった。


【赤5:持ち主が代わった時のこと。合意はあったのだろうか?】

このイヤリングは、主が仕事をするために購入したものだ。元の持ち主といっても商人だった。採掘され、加工され、そして今の主へと渡る。

ただ、もし道具が人を選んだとするのなら、このイヤリングは自分の仕事をさせてくれそうな主を選んだのだろう。

《エンディング》

Q:あなたが好きになったものは?

骨董品が好きだ。私は人の未来を占うことはできなかったが、骨董品達から、過去の思い出を聞くことができた。それは、未来を知ることと同じくらい、私にとって楽しい時間だった。

そして、このイヤリングは力を失った。もう、声は聞こえない。

このペンデュラムイヤリングは、仕事机の引き出しへ収められる。そして、新たなペンデュラムイヤリングと共に、私はまた骨董品の声を聞く仕事へと向かう。

商品名:なし

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参考文献(遊んでみたい方はこちらから)


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