見出し画像

『魔法骨董ここに眠る』プレイ記録

竹田ユウヤさんの作ったソロジャーナルTRPG『魔法骨董ここに眠る』をプレイしている。必要なものはプレイボードとトランプとサイコロだ。とはいえ、デジタル化の進んだ現代、全てのものがオンラインで揃う。と、友人に教えてもらった。

ココフォリアというサイトに、プレイセット一式を用意してもらい、もう私はただただカードを引き、サイコロを回しては文章を書くだけだ。環境をしっかり整えてもらったので、本日はエッセイと言うよりゲームのプレイログとして楽しんでいただけると幸いだ。

まずはゲームの世界観をお伝えするため、ゲームのクリエイターである竹田ユウヤさんのTwitterから説明文を引用する。

”骨董商であるあなたは、あと少しで力を失う魔法の道具の思い出を聞き、彼らの最期の言葉を日記に綴る。”

魔法の道具の言葉が聞こえる不思議なペンデュラムの耳飾りを仕事道具に、魔法道具の言葉に耳を傾ける。どんな道具なのか、どんな効果なのかおおよその枠組みはトランプが決めてくれる。そして、聞こえてくるエピソードもトランプを黒と赤に分けて「黒は好ましくない記憶」「赤は好ましい記憶」そして、さらにもう一枚引いたカードは「どんなエピソードを語ってくれるか」を示す。つまり、ほとんどカードとダイスに任せておけば方針が決まるので、私は手を動かしてその質問に答えればよい。

行程も、道具のイメージを決めるセットアップ、思い出を聞くリーディング、そして力を失う魔法道具の最後の言葉を聞くエンディング。このエンディングでは、気になったことや記録しておきたいことを書き手がメモしておくことができる。私はいつもこの欄を「商品名」として、タイトルをつけて幕を閉じることにしている。

この手のゲームはやってみるのが早い。また、今回はプレイログだ。私がどんなカードを引き、どんなエピソードを綴ったのかを記載していく。ただそれだけのエッセイである。

まずは、昨日、プレイ記録としてあげたものの再掲だ。前回はカードを引く臨場感も含めて記したが、今回は完成したものだけを記載する。

では、私の前に現れた魔法の骨董品の話を始めよう。


・2022/08/23

《セットアップ》

この道具は人の命を守るには小さすぎる。お守りのようなものだ。効果は紙切れと同程度、不幸を払うまじないがかけられているが、幸福にするほどの力は無い。

《リーディング》

赤の4

【一番長く使っていた人間のこと。大事に使われていたのか? それともたまたま置かれていたのか?】

おそらく魔法使いが幼い頃に試作品として制作したものだろう。呪文も難しいものではない。しかし確かに、持ち主の安全を願うものだ。このお守りの持ち主は大切にこのお守りを使っていた。

《エンディング》

Q:あなたが誇りに思っていることは?

 この道具は生涯を通じて、一度も魔術を発揮することはなかった。このお守りにすがるほどの不幸はついぞ最後まで、持ち主の前に姿を現すことはなかった。だから、このお守りは今ここにある。

 自身にかけられた稚拙な魔法が活かされることなく、持ち主が生涯を終えたこと。それがこのお守りの誇りであった。

Q:あなたが好きになったものは?

 風、それから人が足踏みをするときの音、それからそのリズムや揺れ。なぜなら、それは私がただの貝殻であったなら、生涯いや、あるいは何世紀経っても、きっと感じることはなかっただろうから。

商品名:小さな魔女のお守り


と、こんな具合で進めていく。では、ガンガン進めていこう。途中で出て来る「赤の4」などは引いたカードの色とその数字だ。赤なら好ましいこと、黒なら好ましくないことをベースに文章を書く。その色のあとに括弧でくくってあるのは、その数字に対応する質問である。この質問に対して、先ほどの赤と黒の傾向を踏まえて文章を記していく。これは竹田ユウヤさんが制作したものだ。このあたりまでやっておいてもらえると書き手としては大変助かる。また、エンディングではいくつか質問項目が用意されていて、その中から質問することができる。リストになっているのもまた助かるものだ。そして、それを最後に魔法の骨董品は力を失い、ただの道具へと戻っていく。私の演じる骨董商は、商人なので商品のラベルをつけてやや落ち着いた色の光が灯る店内に売り物として置いておくことが多い。という設定だ。

では次。


・2022/08/23

《セットアップ》

婚約指輪だ。しかし、その幸せは決して長くは続かなかった。

《リーディング》

黒4

【一番長く使っていた人間のこと。大事に使われていたのか? それともたまたま置かれていたのか?】

この指輪が最も価値を持っていたのは、店に飾られていたときだっただろう。持ち主の手に渡ることが決まった瞬間から、この指輪は急速に価値を失っていく。右手の薬指にピッタリはまっていたが、サイズがその指に収まったのはこの指輪にとっても持ち主にとっても決して幸福とは言えなかった。事実、指輪はかつての輝きを失っている。

赤K

【人間、あるいは世界について何かを学んだ。何がきっかけに なったのだろう?】

しかし、この指輪は確かに愛があったことの証明である。指輪を手にしたその日が、持ち主の笑顔を見た最後の日になったが、それでも指輪は「確かに二人は愛を誓い合った」と、証明する役割を担っていた。

黒6

【頻繁に魔法の力を使っていた頃のこと。持ち主が望んだことなのだろうか?】

この指輪にかけられた魔法は、魅了だ。もうとっくに、互いに愛し合っていたというのに、この指輪は小さな運命を引き寄せてしまった。それはとてもささやかなものだったが、指輪の主が行動を起こすには充分だった。

彼らは指輪を手にするまでは互いに支え合って生きていたが、この指輪の魔法によって僅かずつそれぞれが互いに最適な運命へと誘われていった。

「あなたに幸福あれ」と、願いを込められた指輪は確かに持ち主を幸福へと誘った。持ち主も、送り主もそれを望んでいた。

ただ、幸福になるためには二人は別々の道を歩む必要があった。

《エンディング》

Q:次に引き取られるならどんな人が良い?

幸せを望まれる人の元へ行きたい。

商品名:「幸せになろうね」


幸せにも様々な形がある。彼らは確かに愛を育んだが、より大きな幸せを引きつける指輪を手にしたために、離れ離れになってしまった。込められた願いは叶っただろうが、婚約指輪としての務めは果たせなかっただろう。そんな一品だ。

また、今回はカードを3回引いた。この引く回数もサイコロで決める。六面ダイスを振るので1から6までだ。ルール上、この骨董品の話をもう少し聞きたいというときはさらに二枚引けるのだが、際限なく引いてしまいそうなので今はダイスの目にしたがっている。

さて、余談も済んだところで次の商品だ。


《セットアップ》

切ったものの味を覚えておけるナイフ

《リーディング》

赤6

【頻繁に魔法の力を使っていた頃のこと。持ち主が望んだこと なのだろうか?】

代々、家庭の味を記憶してきたナイフだ。特に果物を切るときには、口いっぱいに味が広がる。子供達は秋の収穫物が献立に並ぶ時には、誰がこのナイフで果物を切るかで取り合いになった。

赤10

【直前の持ち主はどのようにして手放すことになったのだろう?】

 ずいぶん長い間大切に使われてきたようだ。親から子へ、子からまたその子へと渡ってきた。しかし、元々は大きな包丁であった刃物は、今や一般的な果物ナイフの半分ほど。リンゴも切れなくなってしまった。それでも、ずいぶん使い込まれたものだ。

 その効果故に、鉛筆を削ると口の中は鉛の味でいっぱいになる。木を切れば口の中はアクが染みたような苦々しい味が広がる。

 何より、このグルメなナイフが今更、鉛筆を削らされるなんてきっと耐えきれないだろうと、元の持ち主は笑いながら話していた。それでも、自分たちにはもう、このナイフを使う場所はないだろうからと、ここへ持ち込まれた。

《エンディング》

Q:あなたを探している人は?

ここへナイフを持ち込んだものの配偶者だ。彼は今頃家でナイフを探しているだろう。そして、顛末を聞いたら、夕方にはここへ取りに来るに違いない。

商品名:料理の醍醐味(売約済み)


この商品は3つめにして、私のお気に入りだ。特に商品名の部分に一工夫加えることで、この骨董品が大切にされていることがよくわかる。もう、このナイフに力は無いけれど、それでも、果物の皮を剥くときにはきっと重宝されるだろう。

それでは、次の骨董品だ。


2022/08/25

《セットアップ》

遊び道具+記憶

効果の強さ:4

「解いた手順を記憶する知恵の輪」

《リーディング》

赤のQ

【修理した人間のこと、その形を直したのか?それとも魔力を込めなおしたのか?】

何度も形を変えて楽しまれている知恵の輪だ。今は山羊の角が絡まった形をしているが、かつては蛇それ以前にもキューブ状だったこともある。解き方も様々だが、絡まった知恵の輪を二つに外しそれをもう一度元の形に戻すことで次の形へと変化するようだ。

何度も魔力を込めなおされている。これを作った人物は優秀だったのだろう。解き終えたときに魔力を消費して別のパズルへと変化する。また、以前に解いたパズルの形へと変化させることもできる。それを何度も何度も繰り返され、現在の形状になっているようだ。

《エンディング》

Q1:あなたが誇りに思っていることは?

このパズルは、とても難易度が高い。これは魔力によるものではなく、何度も何度もパズルを解かれた結果、このようにモチーフが明確でありながらも解くことが難しい形状になっている。また、解かれることでしか魔力の補充ができない。そして、おそらく300年ほど、このパズルは解かれていないだろう。誰かが何度も手にしたはずだが、このパズルの難易度は最高の状態になる。

魔力ではなく、人の知恵によって今この形を保っている。それこそがこのパズルの誇りのようだ。

Q2:次に引き取られるなら、どんな人が良い?

もちろん、このパズルを解くことができる人間。あるいは、解くことを諦めない人間だ。

商品名:未だ解かれぬ知恵の輪


書き方にも少し慣れが出てきた。セットアップでは、骨董品の形やかけられている魔法、それからどのようなものに見えるかを書くのだがそのあたりまで記載するようになってきた。今回は知恵の輪だ。この製品はタイトルが少しイマイチだと思っている。何度も解かれて来たのだから「未だ解かれぬ」というのは少し変な気がする。しかし、一方で300年解かれなかったともなると、数学の未解決問題を思い出す。それ故にまだ解決していない、消化不良な知恵の輪、といった意味合いの言葉を入れたかった。しかし、商品なのだから、挑戦心をあおるものが良いだろう。そんな気持ちでこのラベルを貼った。

さて、次が最後の品だ。


2022/08/25

《セットアップ》

守るもの+隠蔽

効果の強さ:3

「覆い隠したものを見えなくするヴェール」


《リーディング》

黒9

【9:長い間放置されたり、しまわれたりしていた。どのくらいの時間だったのだろう?また、何がその状況を変えたのだろう?】

王女が逢い引きをする際に、城を出るために用いたヴェールだ。魔力を持つ人間が被っている間は、ヴェールで覆われた部分は見えなくなる。しかし、大きさから見て隠れられるのは幼い子供くらいだろう。

また、ヴェールからはみ出した部分は見えてしまう。王女の背丈が伸び裾から足がはみ出た頃、このヴェールは役割を終えた。それから、ずいぶん長い間、このヴェールはクロゼットにしまわれていたようだ。

王女が城を出て、他国へと渡るために身の回りのものを整理していた際に発見された。

赤J

【J:持ち主とその周りの人間についての大きな出来事。その後何かが変わったのだろうか?】

王女はこのヴェールを纏って町へ出た。城下町では活気に溢れていて、その国の豊かさを象徴するようだった。城での生活に退屈していた王女にとって、外は自由だった。そして、ヴェールのおかげで誰も自分に気がつかない。

そうして何年も王女は自分の国の人々や、木々や動物を見て過ごしていた。

しかしある日、自分に注目が集まっていることに気がついた。

「足だ!」

少年の声が響き渡った。

王女は自分の足がヴェールからはみ出していることに気がついた。その場を一目散に走り去ったが、城下町は大騒ぎになった。駆けつけた衛兵に捕らえられ、ヴェールを剥ぎ取ったときの顔はすぐに真っ青になった。

「殿下、なぜここに」

ばつが悪そうに肩を竦めるが、衛兵はヴェールを察してかすぐに王女を城へと、努めて丁重に帰した。城へ入る直前に、王女は衛兵へ靴を渡した。そして「うまくごまかして」とお願いした。

城下町を歩く奇っ怪な靴を衛兵が見事に捕らえたとしばらくの間噂になった。

《エンディング》

Q:次に引き取られるならどんな場所が良い?

できれば、静かなところが良い。お転婆娘はこりごりだ。結局、噂として広まったあとも「定期的に散歩を必要とする呪いの靴」として、衛兵と共に城下町へ出かけていたんだ。街の人間は、おおよそ正体に気がついていたようだがね。

それから、衛兵の前では「首だけ人間」と言いながら首から下を隠して、私を道化の道具に使ったんだ。遊ぶのは楽しかったが、それにしても、快活なお嬢様だった。

だが、次は家族の団らんを囲むテーブルクロスや、ブランケットになりたいと思うよ。

商品名:秘密のヴェール


一つ前の商品名に懲りすぎたので、今回はシンプルな商品名にした。おそらく、大切に扱われていただろうし、高級な生地だろうが時間が経っているので買い手が付くかはわからない。しかし、粗悪な品でもないので一応店頭に並べておくことにしたようだ。


このように、トランプとサイコロを使って一つの骨董品に眠る記憶を想像して、それを日記につけていく。ところで、トランプにはジョーカーが入っている。これを引いたときには、もう一回引き直しであったり、質問を自由に選べたりとちょっとした特典が付く。そして、日記の最初のページなど、わかりやすい場所に○をつける。二回目に引いたときにはその○に一本横線を引く。三回目に引いたときにはそれに加えて縦線を引く。こうして、○の中に十字が表れたとき、次回の骨董品は仕事道具であるペンデュラム耳飾りになる。耳飾りも力を失い始め、骨董商は新たなペンデュラムの耳飾りをつけてこれまでの仕事道具が発する最後の言葉を聞く。それから、その仕事をもって最後の仕事とするか、新たな耳飾りと共に仕事を続けるかを選ぶ。

私は、今日までのゲームでジョーカーを二枚引いた。耳飾りの魔力はいよいよ少なくなってきているようだ。この仕事道具が発する最後の声を聞くことになるのもそう遠い未来ではないだろう。しかし、今はただただ、骨董品の声を聞き、一つのお話にまとめるのが楽しい。

最初のうちはよくある魔法道具ばかりが浮かんでくるが、まずはそれらを全て出し切り、「もう無いよ」と思ってからが本番なのではないだろうか。もしくは、そのときがこのゲームとしばらくお別れの時期なのかもしれない。

ひとまず、これにてゲームのバックログとして記録を残す。ずっとカードを引いてダイスを振っていられそうだ。なにより、今の耳飾りとはもう少し長く仕事をしていたいと思う。ただ、ゲームのほとんどは運に任されている。

さて、次はどんな骨董品に出会えるだろうか。

―――
参考文献

Twitter 2022/08/25(最終閲覧日)

ルールブック 2022/08/25(最終閲覧日)


ここまで読んでいただいてありがとうございました。 感想なども、お待ちしています。SNSでシェアしていただけると、大変嬉しいです。