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ガオガエンが好きだということを言いたい。

ガオガエンが好きだ。

使ったきっかけは、友人が「このキャラは楽しい 」と言っていたことだった。それだけではない。使い始めて手慣れてきた友人に、深夜2時までガオガエンでボコボコにされ続けた。一対一の勝負で、もはや勝負にならないくらい友人の思うがままにふっ飛ばされ続けた。

特にラリアットが強い。私はとにかくそのラリアットで倒され続けた。殴ろうとしてはラリアット。着地したらラリアット。走って距離を詰めたらラリアット。時々チョップ。あとラリアット。そんな感じで、一向に対策ができないままひたすらにボコボコにされ続けた。

しかもそのラリアットはタイミングを合わせてボタンを押さないとカス当たりになる。しょぼいダメージしか与えられないどころか、私もダメージを食らう。自滅技になるどころか、反撃のチャンスを与えてしまう。ハイリスクハイリターンとはよく言ったもので、当たればOKかというとそんなことはなく、最後まできっちり決めないと相手を倒すことはできない。しかし、そこはしっかり極めてきた友人。ぴったりタイミングを合わせて私をボコボコにした。

私はめげることなく何度も何度も挑み、そして負けた。ラリアット、ラリアット、ラリアット。来るとわかっても避けきれない。

何なんだこの技は。しかもたちの悪いことに、ガードをしても貫通する。リスクを背負っている分、当たりやすい。ラリアット、ラリアット、ラリアット。私はこうしてボッコボコにされることに慣れているのか、特にそれは嫌ではなかった。

むしろ、RPGに出てくるような、不条理な攻撃を食らわせてくる敵のような感覚で、とにかく攻略しなくてはと意気込んでいた。

しかし、話はそう簡単には進まない。とにかく熟練度が違う。ラリアット、ラリアット、ラリアット。何度も何度も倒された。タイミングに合わせてボタンを押す。それをしくじってくれればいいものの、全然失敗する気配がない。私はもう一回、もう一回、と繰り返すたびに、ピッタリのタイミングでボタンを押しきっちり技を決める友人のされるがままに蹂躙されていた。

「マジで、ガオガエンは楽しい」とは、友人の談である。思ったとおりに技が決まって、きっちり相手を倒せたらそりゃ楽しいだろう。私は一つのキャラをとことん使いたいタイプだったので、そのガオガエンにもめげること無く剣士のロイというキャラクターで戦っていた。しかし剣士は剣のリーチを活かすこと無く、何度もラリアットを食らう。

なんだかんだで4時間ほど蹂躙されていただろうか。もういよいよ、勝つことができない。なんとか、あのラリアットを攻略しなくてはいけない。

「使ってみれば弱いところもわかる」と、友人はアドバイスをくれた。確かに、ラリアットだって毎回決まるわけではない。タイミングに合わせてボタンを押す。コマンド、と言うほどのものでもないが、コツが居る。

そこで私は試しにガオガエンを使ってみることにした。一朝一夕には使えないだろうが、とにかくラリアットを当ててみよう。そんな気持ちだった。

そして、記念すべき最初のラリアットはきれいに当たった。

「あ、この辺か」と、なんとなくタイミングは解ってきた。焦りさえしなければ当たる。むしろ平常心を保つことが大切だ。

ラリアット、ラリアット、ラリアット。ガンガン当たる。むしろ、夜中の2時までボコボコにされた経験が生きた。なんで解っているのに当たるんだろうと思っていたが、それは相手も同じである。解っているのにラリアットを食らう。しかも、練習が必要なジャストタイミングでのコマンド入力は自分が散々食らっていたせいか、大して苦労はなかった。

これまで殴られていたタイミングで殴ればいいのだ。

「オラァ!」

ドーン!

相手は死ぬ。

昨日まで私がされていたことだ。でも、今は私が殴る側である。そして、一度決まれば、多少不利でも巻き返すことができた。ハイリスクハイリターンは、練習すればリターンを獲得できる可能性が高まる。私は殴られていただけだが、その中でもリターンを得られるタイミングを知らず知らずのうちに習得していたらしい。

そして、現在、友人から「いや、ラリアット決めるの俺よりうまくね?」と言われるまでになった。

嬉しい。すごく嬉しい。良くもこれまでさんざんボコボコにしてくれたな。だから今度は私の番だと言わんばかりにラリアットを叩き込んだ。

「楽しいな!」

「だから言ったろ?」

友人は私に楽しさが伝わったことを少し嬉しそうにしていた。結局、来るとわかっていても防げない攻撃をきっちり叩き込むと、相手が焦っていくのが少しずつ見えてくる。なんとかしてラリアットを避けねばと思うのだろうが、こいつはガードができない。ジャンプして避けるなどする必要があるのだが、ならばジャンプに対する回答を用意する。

相手を見て、対応する力の足りなかった私にとってカウンター型のガオガエンは学ぶところも多かった。逆に、同じようなカウンター型と相対したときには互いに様子を見ながら少しずつ距離を詰めていくようなプレイングも求められた。

ペースを握るのではなく、相手のペースに合わせながらも乱す。「ガードしとけば大丈夫」という手癖に付け込む。そういうのが私は好きだ。

しかし、物事はそう簡単には進まない。私がラリアットばかりするので、そこに対応して今度は相手もそれをかわしたり、届かない距離から攻撃してくるようになった。全く困ったものだ。やはり、相手を見るというのが大事である。

癖とか、好きなスタイルとか、私の攻撃に対してどう対応してくるかを見てから、今度は私がそれに適応していけばいい。それはなんだか、対話をしているようで好きだ。相手の苦手なことをひたすらやる。相手がなにか対策してくるまで、決まるとわかっている手をひたすら打つ。その大切さを友人は教えてくれた。

鬱陶しいくらいに、同じことを繰り返す。わかっているのに避けられないという苛立ちは、プレイングを雑にする。そしてまたそこに付け込む。そういう戦い方が、私は好きだ。

「あー、もうこれ無理じゃん」と、相手が投げ出しそうになるくらいまで追い詰められたらベストだ。戦うのではなく、選択肢を潰す。何をしてもラリアットが当たる状態に持っていく。外れても、反撃もできず再び硬直状態に陥る。そして、ちょっとでも動けばこちらの射程での戦いを強いられる。そういうのが好きだ。

ただ、やはり弱点もあって相手にペースを握られるとそのまま一方的にやられてしまうことも多い。また、私の動きも相手に見られているので、私以上に合わせるのが上手い人と当たるとやはり負ける。

でも、多少不利でも焦ること無く、相手の動きを見てから後出しできるのは好きだ。何より、強い。

ボコボコにされたからこそ分かる。ガオガエンは強い。そんな、キャラクターに対する信頼感が何度負けてもへこたれない精神を育てている。ラリアットが強い。切り返しが強い。簡単に仕切り直しができるのが強い。

ともすれば、あとは私の腕次第である。

負けても、ガオガエンが弱いとは思えない。もっと、もっと「あー、畜生」と相手に言わせるだけのポテンシャルを秘めている。そのすべてのカードを出し切って、相手が嫌になるまで追い詰める。

私はそういう戦い方が好きだ。そして、そういう戦い方をさせてくれるガオガエンが大好きだ。

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