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モニターアームをつけてみた。

私の部屋にはゲーム用のモニターがある。

あまり大きなものではないが、ゲームをするには十分な大きさだ。そのモニターにプレイステーションとかNintendo Switchがつないである。

私はいつもこの画面でゲームをプレイして、ボコボコにされてやめる。そして、手元のスマホで上手い人の動画を見て、なんだかうまくなった気になってまた挑戦することを繰り返していた。

ゲーム関連の動画を見ているせいか、はたまたパソコン関係のレビュー動画を見たせいか、関連動画にゲーミングチェアやモニターのレビューが上がってきている。そのなかに「とモヤシさん」という方がいた。似たようなマウスを複数買って試してみる動画は、全部間違いなく自分でやっているのにどことなく「後始末」のような哀愁が漂っている。好きなものの隣には面倒くささが潜んでいることがよくわかるレビューをしていた。

次に再生されたのは、大変厄介なものを抱えてしまったと言わんばかりのテンションで、しかし、どこか嬉々としてモニターアームを組み立てる様子だった。好きだけど、めんどくさい。楽になるけど、組み立てのときにここが厄介。そんな正直すぎるレビューは、銀魂を見ているときに感じる「大人には色々あるんだよ。うるせぇな」という気持ちを抱えながらも「見ていて楽しいものを作ろう」という遊び心が散りばめられていた。

「モニターアーム、いいな」

実際、設置はとてもめんどくさそうだった。無理ではないが、手間がかかる。しかし、アームに接続されたモニターが上下左右にスイスイと動く様子は、とてもかっこよかった。アイアンマンで見た「スーツを着せてくれるアーム」みたいでもあったし、スッと画面を動かすのはどこか「秘密基地」感がある。

その動画を見てから、度々そのアームのことを思い出すようになった。これまで特に不便はなかったし、今もない。ゲームさえ映せれば問題ないはずだ。

なのに、アームが欲しくなってきた。しかし、動画でも言っていたが、アームをつけるためにはモニターの裏に穴が空いていなくてはいけない。VESA規格と呼ばれており、USBのようにメーカーに関わらず統一されている。私はよく考えずに足がついているタイプのモニターを買ってしまった。かといって、モニターを買い換えるほどの時期にはきていない。

私はモニターの裏を覗く。そう、ちょうどここに、4つ穴が……。ある。

えっ、ある。なんで? え? 足をつけたままアームもつけられますってこと? いや、落ち着け、この穴が規格どおりかはまだわからない。ぬか喜びではないか。

メジャーをリビングからとってきて、穴の距離を測った。

「マジか」

信じられないことだが、この足つきのモニターはVESA規格に対応しているらしい。いや、よく見るとモニター側の足の付根にネジがついていた。……外せる……? え、外せるの?

しかしもう私には足が外せようが外せなかろうがどっちでも良かった。最悪の場合、足つきでもいいモニターアームがつけられるのだから、もう別にそれでいいのだ。

Amazonでモニターアームを注文すると、翌日に発送された。2,3日かかると書いてあったのだが、思ったよりも早く届き、私はウキウキしながら箱を開けた。そして、恋人に手伝ってもらいながら設置していく、案の定めんどくさい。何がどのパーツかよくわからないし、ネジも使わないものがあるようだ。

「このネジ使って」

「オッケー」

しかし、手に取ったネジはぜんぜん違うやつだった。全くはまらない。

「ダメじゃん」と笑う。間違った手順のまま進んでしまうことはなかったが、こうした微妙な噛み合わなさは度々起こった。ゴールまでは一本道だが、障害物のある一本道だ。

好きなことをしているときも、ずっと楽しいばかりではない。なんやねんこれ値段の割に使いにくいやんけ、なんて、思うこともある。ずっと陽気に作業ができるわけではない。もう、どうしようもなくめんどくさいのだ。

避けて通れない面倒くささが、そこにある。そしてそれを、厄介だとか、重いとか、なんなんだよこれとか、言いながらやればいい。それでも最後にはきちんと出来上がる。

なんとか、アームを組み立て終えた。次はモニターだ。

着る毛布を広げて、その上にモニターを寝かせた。3日前まで存在を知らなかった穴にネジをはめ込み、アームと接続する準備を整える。

「あれ、この足は?」

モニターを設置しようとしたとき、恋人が言った。足の付根についたネジを外したものの、全く取れる気配がなかったので、別にそのままでもいいかと思っていることを伝えた。

「それに、元々、この足の土台だけカチッとはめるタイプだったから、取れないのかもしれない」

「説明書は?」

「どっかいった」

「調べなよ。型番で出るよ」

一応、調べる。

「と、取れるのか? でも、動かないよ?」

足をグイグイと引っ張るが、取れない。外すときに押し込むボタンらしきものもあるのだが、やはり取れない。うーん。強くボタンを押し込み、今度は横にカチャカチャと振るように動かしてから引っ張った。

スポン。

「抜けた!」

抜けないと思っていた足は、やや苦戦したもののちゃんと抜けた。画面だけになったので、満を持してアームに装着する。完成!

あぁ、大変めんどくさかった。しかしおかげで、グイグイと画面を動かせるようになった。ゲームの画面との距離を調節できるし自分の目の高さに合わせられる。姿勢が少し楽になった。

パソコンをテーブルにおいて、その横に画面が来るようにもできる。サブディスプレイとして、前よりも便利に使えるようになった。とりあえず表示しておくだけよりも、ずっと戦力になる。

しかも、縦にもなる! 意味はよくわからないが、グイッと縦にできるのだ。そして、画面を回したときにパキッと、音がした。HDMIケーブルがひしゃげている。

短いケーブルを使っていたのに! 画面を何も考えずに回すから! ケーブルの先が曲がってしまった! ちくしょう!

私はケラケラ笑って写真を撮り、友人に送った。モニターアームを設置したことと、ケーブルがひしゃげたこと。多分ちょっとウケるだろう。

送った後は、すぐに新しいケーブルを注文した。少し長めのケーブルだ。それまでは、Switchを買ったときに付いてきたものを使う。ゲームを買ってもモニターを買っても、そして今回のアームを買ってもHDMIケーブルがセットになっている。あって困ることはない。今回のように、パキッと壊してしまうこともある。

こうして、私の部屋は特撮の世界で見た秘密基地にちょっとだけ近づいた。画面が動くのはやはり楽しい。グニョングニョンと動かす。決まった位置まで持っていくのは少しコツがいるけれど、動かしていくうちに慣れそうだ。

ゲーム用のモニターは、ゲームもできるモニターになった。今はパソコンのディスプレイとしても使える。これまでも特に不便はなかったが、画面が動かせるのは想像していたよりずっと便利だ。できることが増えた。

そうなると、ここで作業する時間が増える。

……椅子がほしいな。

今使っている座椅子も使ってに年くらいになる。モニターと違って、こっちは買い替えどきだろう。

私はゲーミングチェアを注文した。どうやらまた組み立てなくてはいけないらしいが、まぁ、なんとかなるだろう。

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とモヤシさんの動画はこちら。

https://youtu.be/g7Izv_SrFKs

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