見出し画像

深海水槽のヒミツ

こんにちは!
北里アクアリウムラボ15期の阿部です。

いよいよ5月も終わりますね。皆さんはどのように過ごされたでしょうか。私は寒暖差の激しさに敗北して風邪をひきました…。6月はもっと安定した気温に落ち着いて欲しい、と願う毎日です。

さて、話は変わりますが先日お客様が水槽を見ながらこんな話をされていました。

「この水槽怖いね〜」
「なんでこんな色なんだろう?」

その水槽がこちらです。

深海水槽

(この水槽…何か変…)

察しの良い皆さんならもうお分かりですね。
そう、「照明が赤い」事です‼️
実はこの照明、白い光のライトに赤い下敷きを重ねて赤い光が出るようにしています。

北里アクアリウムラボに限らず、深海の環境を再現した水槽では照明に赤い光が使われる事が多くあります。

新江ノ島水族館のオオグソクムシ水槽
八景島シーパラダイスのサギフエ水槽

なぜ深海を再現した水槽には赤い光が使われやすいのでしょうか。これには深海の環境が深く関係しています。

そもそも「深海」とはどのような場所なのでしょうか?少しお付き合いください。

実は深海に厳密な定義は無く、一般的には
「水深200mよりも深い場所」
を指しています。これは海全体の約90%を占めており、その広さがよく分かりますね。

また、私達が海水浴や潮干狩り等で遊ぶ海とは大きく異なる部分があります。

それは「光」です。

実は水の分子は光を吸収します。そのため、水深100mまで届く光の量はとても少なくなります。その量、何と海の表面に当たる量の1%程度。ほとんど何も見えないのです。

これを実際の水槽で再現しようとすると…

光を最大限暗くした深海水槽(日中)

何が居る水槽なのか分からなくなってしまいました…。これではお客様に伝えたい深海の魅力が全て闇の中です。

ここで重要になってくる要素が
「光の波長」です。

実は白色に見える光は、様々な色の光で構成されています。この色は「波長」の長さによって決まるのですが、今回は長くなるので省略させていただきます。

光の波長(色)と届く水深の違い(参考文献①)

この中で「赤色の光」が最も浅い水深で止まってしまいます。その結果、赤い光が届かない深海で暮らす多くの生物は赤い光を感知できません。

そのため、赤い照明を使うことで光に敏感な深海生物をストレス無く、お客様に見やすい形で展示する事ができるのです。

もし北里アクアリウムラボや他の水族館に訪れた際には、中に入っている生物だけではなく照明や背景等たくさんの事に目を配って、さらに水族館を楽しんで欲しいです。

北里アクアリウムラボは
予約不要・入館料無料です。
なお、団体のお客様は事前申込制となっております。
・希望日時
・代表者氏名
・人数
・電話番号
をご確認の上、海洋生命科学部事務室学生課(042-778-7919)へお電話にて
お申し込みください。
開館時間は平日(10:00〜16:00)となっています。

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

<参考文献>
①三宅裕志 著「巨大深海生物の謎を解く」
 SUPERサイエンス (2022)

②横瀬久芳 著「はじめて学ぶ海洋学」
  朝倉書店 (2020)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?