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ある意識の苦悩ー4

人間の姿になるまでに

大龍と大蛇によって作られた人間は、虫・鳥・動物と生まれ変わって行き、それを見ていた者たちが、その様子をうらやましく思い、人間の後に虫・鳥・動物にとなり、この世界が生物の楽園になった。

ここまでが3での話であり、この後 今の人間の形が出来るのであるが、この間が9億年かかったのである。

そしてその間に思いもよらぬ事が起こって来たのであった。

さて、一番初めに虫を作ったと言ったが、この作り方である。

すでに人魚と白蛇とで、人間を作ってみた大龍と大蛇は、オスとメスを作り掛け合わせて新しいものを作るという方法を確立した。

そこで、同じ方法で見渡すものの中に入り、作って人間の魂を入れて、その物が大きくなる姿を観察したのである。

一番初めは、柔らかいうねうね動くものを作った。

今でいえばミミズのような、骨も何もない。ただただ柔らかい皮膚に守られたものである。

ところが、これは外からの圧力に弱い。すぐにつぶれてしまうのである。

そこで、外が固いカブトムシのような、カニのような、かたい殻に守られたものを作った。

するとこれはとても動けない。

そこで、固いのと柔らかいものが組み合わさり、つぶれにくく動きやすいものはと考えて、その固いものに節をつけて、足を作った。節をつけただけではダメで、節と節とをつなぐための筋も作ったのである。

それらがうまく動く方法はと考えて、筋肉になるしくみも段々と整えたのである。

するとこれはとても良く動くので、ではその足は何本が良いのだろうかと、100本のモノ、50本のモノ、25本のモノ、10本のモノ、8本、4本とだんだん減らしていった。

この事によって、かたい殻に覆われながらも、自由に動く方法を確立したのだった。

そして、この事を記録に残すことを思いつき、土の中に埋めて、化石を作る事にした。

次にただただ這うだけでは面白くないと思い、自由に動く他の方法を考えた。すると、翼をもたせてそれによって進むことを思いついた。

そこで翼を持った鳥なるものを作った。

最初は虫の手に足に柔らかい膜を作り飛ぶようにしてみた。

なるほど、上にも下にも自由に動く。これは面白いと、膜にかわるものを次々と作り、それを羽にして行った。

そしてまた、虫の次に鳥も沢山の種類が出来、人間はどんどんとそれらに生まれ変わって行き、人間の後には、この世界にあこがれをもった魂を入れて行ったのである。

鳥を作り終えた後、一番初めに、鱗の無いすべすべした肌のものを目指したことを思い出した。

そして子供を産む仕組みも、白蛇に似せることを思い出した。

そこで動物を作り始めた。

始めは鱗のあるものから、段々と鱗を細かくして柔らかい肌を作り、そしてかたい殻の代わりに、体内で支える骨を持つ動物を作る事にしたのである。

さらには、虫や鳥では卵として産んでいたものを。体の中で守り育てる方法も順次作って行ったのである。

その最終の形が、サルであった。

サルとなった時には、歩くだけの足は、手足となり別々に動かすことが出来るようになっており、子供も体内で育てて、産むという事が出来るようになったのである。

この間が9億年、そして一つの種で人間を育て経験させる年限を9千9百9十9年と決めて、約1万年で人間は次の種へと生まれ変わったのである。

つまり9万回という途方もない生まれ変わりの後に、今の人間の姿は出来上がったのであった。

ところがここで困ったことが起きて来た。

心の自由を許された人間は、虫であり、鳥であり、動物であっても、自分の思うように行動をする。

その行動の中には、食べるという事も含まれた。

つまり、はじめには、大龍や大蛇が用意した物を食べていてよかったのだが、それでは飽き足らず、思いつくままに食べる者もあらわれて来たのだ。

早く動けるもの、体の大きなものは、遅いもの小さいものを捕まえて食べるようになったのである。

こうしたことは、元々大龍も大蛇も行っていた事で、それによって、より多くの力を得て行くことが出来る。

そこで、大龍と大蛇は弱いもの、小さなものは沢山の子供を産むようにして、その種が無くならないようにした。

反対に強いものは、子供をたくさん産めなくしたのである。

こうする事で、種のバランスが保たれるようになったのであった。

そして、人間は常に新しい種へと生まれ変わり、生物の頂点として魂の経験を重ねたのであった。

「つづく」

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