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【単独忍び猟】北海道から関西に来て苦しんだこと

苦しんだ3ヶ月間

北海道から関西に来て初めての猟期、「11月から2月までって短いなあ」「猪ってどんな味なんだろうなあ」くらいのゆるい気持ちでいた。獲れると思っていた。少なくとも鹿くらいは。
結論から言えば、全然獲れなかった。
北海道(札幌)では初年は5頭、二年目は(たしか)8頭くらいで順調に忍び猟に慣れ親しんできていた。それが急転直下、今年は1頭に終わりそうである。

理由はいろいろ思い当たる。いずれにしても北海道から関西への環境変化が大きかったと感じる。ざっとこんな感じ

1.ゼロからの猟場探し
2.環境(植生・降雪)の違い
3.射撃(弾不足の影響)とメンタル
4.その他の外部要因

反省と来期に向けた改善のために深堀りしていこう。
同じような境遇のひとがいれば、参考になればと思う。

1.ゼロからの猟場探し

良い猟場とはなんだろうか。個人的には以下のように考えている。

  • 動物がいっぱい

  • 人間はいない

  • 歩きやすい地形と植生

  • アクセスの良い場所

鹿がたくさんのイメージ

良い猟場を見つけるには猟場探しが大事となる。
北海道ではこれには苦労しなかった。猟友会では狩猟者登録と同時に国有林の入林許可を申請してもらえるので、道内にある広大な国有林に出入り可能になる。もちろん禁猟区もあるが、それでもまだできるところはたくさんあった。その中から自宅から通えて歩きやすそうな(でも他のひとが来ない程度には奥深い)ところを探せばいい。

他方で関西での猟場探しは苦労する。
まず国有林は少なく、数えられるほどしかない。かつこれに禁猟区も設定されるので、国有林ではない行政所有の森林や私有地での猟を考える必要がある。ただ結局のところ調べてみても所有者のわかる森林は多くないため、実際に行ってみて、立ち入り禁止の看板や柵などがなければ、狩猟可能として判断している。最初の頃はこの感覚がなかったので、町有林を探したり、猟友会のひとに聞いたりして、なんとなくこのあたりで出来そうだなとあたりをつけていた。
※いずれにしても付近に住宅などがなく登山客もいないような森林で行うなど、周囲のひとが危険と感じないような配慮が前提になる

ただ、こうして見つけてきた猟場も猟期に入ると別の問題が発生してくる。他の猟師たちとのバッティングである。
仕事の都合もあり日曜に出猟することが多いのだが、忍び猟をしていると銃声や犬の声が聞こえたり、ひどいとグループ猟が始まったりする。昨日大きな猟をやったんかなってくらい人と犬の足跡や使用済みショットシェルがあったりもする。イノシシがいるぞ(!)と思っていた地域も一週間後には気配が消えていることもある。

撃ちたてほやほや?

聞くところによれば、今年は豚熱が流行った影響でイノシシの数が少なく、そういう猟隊もほうぼうを探して、他府県からも出張ってくるようなのだ。

こうして良い猟場を探すまでに時間がかかった。できそうな場所だとしても鹿・イノシシがいなかったり、いたとしてもいなくなってしまったりと。
結局関西では都市として大きいか、どこにいっても人間がいる。猟師だったり、トライアルバイクなんかも多い。これはもう仕方ないと思ってバッティングしないように曜日は時間帯を気を付けるしかないのだろう。
※あるいは自宅から遠い本当の山奥に行くとかだが、これはパートナーが心配するのであまりできない・・・。

ちなみに北海道(札幌)ではグループ猟はあまりやっているイメージはない。降雪のために犬が使えず、人間だけの囲みでは鹿の機動力で簡単に抜けられてしまうからだろう。

環境の違い

端的に言えば北海道(札幌)では12月中旬くらいから猟期が終わるまでは雪が解けない。いまの猟場では雪が一回降っただけだった。
雪のあるなしではそもそもの忍び猟の仕方が変わってくる。今回は改めて自分の技術の低さを思い知った。

雪の有無と忍び猟の違いについて

主に3つの違いをここでは記述する。歩き方(音の拾い方、目線の配り方)についてだ。
雪のあるなしが一番大きく影響するのは音だと考える。枯れ葉や枝、すべてのものをふわふわの雪は包み込む。足音の原因はなくなり、パウダースノーを踏むかすかな音さえも周囲の雪が吸収してさらに小さくなる。鹿はおろか自分の歩く音さえも聞こえなくなる。したがって北海道(札幌)では双眼鏡による索鹿が最重要となる。またこの索鹿も雪景色のなかなので比較的やりやすい(反面、鹿からも見えやすいので注意は必要だが)。

雪は音を吸収する

いま私の住む地域では雪は年に1,2回降る程度だろう。基本的には枯れ葉や枯れ枝がむき出しだ。人間も動物も音を出さざるを得ないし、この音が狩猟者にとってピンチにもチャンスにもなる。忍び猟とはこの音を出さずに忍ぶことを意味するのだと思う。できる限り音を抑え、動物たちの出す音を拾う。そんな当たり前の経験をようやく積むことができた。
※北海道(札幌)でも雪が降る前は同じ状況だが、繁殖期のためかあまり気にせず歩いてくる鹿が多い

音の拾い方に関してはよく言われることだが、数歩ごとに立ち止まって耳を澄ませるしかない。私は基本的には生耳だ。撃つ直前に耳栓をすることで耳を保護している。比較的安価な電子耳栓やイヤーマフも持っているがグループ猟や超絶寒いときしか使わないだろう。高価なタイプは知らん!(なぜかキレ気味)

結局あまり使っていない電子耳栓

歩き方については、はじめの頃はサクサク歩いており、逃げていく鹿の音だけが聞こえてくることが多かった(というかそれが鹿かもわからない)。
なんとなく音を抑えて歩けるようなってきても今度は足元ばかり見ていて、気づいたら鹿が20m先におり、お互いびっくりして何もできない、なんてこともあった。
忍びながら目線を配ることを両立する、そのトレーニングにやはり時間がかかったし、未だにできているとは言えない。目の前に倒木があり、その上には枯れ枝がぶら下がっている状況でどのように進んでいくか、倒木を跨ぎながら枯れ枝を避けるか、回り道をするか、枯れ枝を慎重にどけてしまうか。またそういう歩行に意識が持っていかれる箇所では周囲の探索が疎かになりがちだ。急斜面でよく滑るような場面を乗り越えた途端、鹿に気づかれるということが二度ほどあった。

歩くという行為は単純だが、色々な手続き、やり方があり、その中から瞬時に適切な方法を選択できるようにならなければならないのだろう。もっとうまくなりたい・・・。

ところで雪なし地域の良さもある。
・双眼鏡やスコープに雪がつかない
・銃の手入れが楽(雪は濡れるので乾かして油を塗る必要がある)
・歩きやすい
・歩きやすい
・歩きやすい
とにかく歩きやすさだ。北海道(札幌)ではスノーシューを使用していたが、それでも普通に歩くよりかは疲れる。斜面も登りやすいが、やはり疲れる。そして何よりそういう装備を揃えるにはお金がかかる。

スノーシュー&ストックが雪上での自由度を高くした

植生への意識

北海道(札幌)ではすべての植物は雪に覆われてしまうので、土地ごとの植生の違いで鹿の多少は気にするが、忍び猟自体に影響することはなかった。
しかし、こちらではすべてむき出しなので、例えば広葉樹林帯では枯れ葉がうるさい、針葉樹では枯れ枝がうるさい、藪はとても通れない、など実際上の問題として植生が立ち現れてくることが多く考慮する必要があった。

歩きやすい場所として尾根があると思うが、忍び猟では必ずしも尾根が歩くのに適さないこともあるだろう。地域によると思うが尾根や稜線の手前あたりは日の当たりが良いこともあり、藪が多いような気がする(印象論)。その場合、尾根を歩いても下を見渡すことができないし、また高いところにあるためその姿や音から動物に気付かれやすくもあるだろう。ハイウェイのように山を早く歩くには尾根は便利だが、忍びには不適なこともある

そんなわけで途中から山の中腹あたりを歩くようになった。木々のなかに入った方が姿も誤魔化されるし、音が届く範囲も狭くなる(尾根の向こう側には届きにくい)。こういう意識的なルート選びも植生への意識から生まれてきたことだ。

植生に関しては専門的にはもっと役立つ知識があったりするんだろうが、私が今期考えた以上のようなことだ。このあたりはもう少し学んでみたい気もする。

次回。

さて、ちょっと長くなってしまった。

3.射撃(弾不足の影響)とメンタル
4.その他の外部要因

続きの章(↑)についてはまた後日書く。
意外とメンタルが重要なのだ。スポーツ選手じゃあるまいしと思うが、特に忍び猟に関しては影響が大きいと感じる。
乞うご期待。

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