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自分を大切にするということ

自分の気持ちを考える

搾乳の仕事中。
ラジオからこんな言葉が聞こえてきた。
「『相手の気持ちを考えなさい。』とはよく言われますが、『自分の気持ちを考えた事』はどのくらいあるのでしょうか?・・・・」
前後の文脈は忘れてしまったが、この言葉だけが耳に残った。

小学生の頃、私は背の順ではいつも後ろから2、3番目。
大柄でぽっちゃりの子供だった。
3年生の時に音楽の授業でアコーディオンを演奏する事になったある日。
私は2サイズあるうちの、大きい方のアコーディオンをいつもつかっていた。
この大きいアコーディオンは、大柄でぽっちゃりの私でも大きく使いにくかったのである。
「小さい方のアコーディオン、使ってみたいなぁ・・・。」と思っていたある日。
音楽の授業のため音楽室に向かうと、なんと一番乗り。
「これは、、、!小さいアコーディオンが使える!」と思い、使いやすそうなアコーディオンを選んで、みんなが来るのを待っていた。
実際、小さいアコーディオンはとても使いやすかった。
ぞくぞくとクラスのみんなが音楽室に入ってきて、アコーディオンを準備し始めた。
すると、私よりも小柄な友達が、いつも私が使っていた大きいアコーディオンを使う事になったのである。
周りの子たちから、「◯◯ちゃん(私の事)、背が大きいんだから、その小さいアコーディオン◯◯ちゃん(小柄な友達)に貸してあげなよ!」と口々に言われ、私は責められている気分になって、とても悲しくなったのを思い出した。

周りの友達は、「相手の気持ち」を考えていたのだろう。
そして私も、小柄な友達の気持ちを考えて、小さいアコーディオンと大きいアコーディオンを交換したのである。

ラジオを聴きながら、こんな昔の事を思い出していた。
この時、私は「相手の気持ちを考えて」行動できたのである。
あれ、、、私の気持ちはどうなったんだっけ、、、?
「ただ、小さいアコーディオンが使ってみたかった気持ち」
「小さいアコーディオンが使えると思って嬉しかった気持ち」
「周りから責められてるみたいで、悲しくなった気持ち」
全部「わがままを言っちゃいけないんだ」「我慢しないと悪者になるんだ」って本当の気持ちを悪者にして、封印しっちゃってなかった?

誰しもが、このような経験をしたことがあるのではないだろうか。

大人になって思うのは、「相手の気持ちを考えること」と「自分の気持ちを否定すること」はイコールではないということだ。

あのとき、小さいアコーディオンを使いたかった気持ちも、小さな友達を思ってアコーディオンを交換しようと思った気持ちも、どちらの気持ちも自分で認めてあげれていたなら、自分を否定するともなかったのではないだろうか。

自分で自分の気持ちをわかってあげて、認めてあげられるというのが真に「自分を大切にする」ということなのではないかと思う。
そのためには「自分の気持ちを考える」というのもとても大切なことだなぁ。
と思いながら、黙々と牛のお乳を搾るのであった。

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