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ねぇ、君の名は? #呑みながら書きました
マリナ油森さん主催の愉快な企画、第8回#呑みながら書きました がやってきました。マリナさん、楽しい企画をありがとうございます。今日呑み書きだから、なに書こうかなと喫茶店でアイスカフェラテを飲みながら考えていたら、隣の席から女子高生がつぶやいた。
「ねぇ、彼氏欲しーよね。」
「うん。マジで欲しいわ。」
店内に流れるおしゃれなJAZZをBGMに女子たちの嘆きと、女性自身の記事のような赤裸々な独白が右耳から聞こえてきてね。私は、
「わかるわ〜。」
と、彼女たちの会話へ混じりたかったけれど、流石に大人が一緒に騒いだらアレかなと、世間体ICチップ搭載の30代女性自身は一応やめておおいた。そしたら、そのICチップがバグったのか、むかーしの記憶が戻ってきたので、今日そのこと書こう!ときめて、脳みそを過去へトリップさせる。
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花の10代。ノーメイクでもお肌プルプル時代。女子ののうっすら膨らんだ胸は大志を抱き、先に見えるものは希望しかない輝ける瞬間。私は当時から花の時代は短いと知っていた。
花の色は移りにけりないたづらに我が身世にふるながめせし間に
小野小町
なぜならば、平安時代の小野小町もそう言っていたから。女子の本質は遥か昔の平安時代に、やんごとなき人がそう言っていたんだから、しゃーないよね。だから、18歳の私たちは妙に焦っていた。周りを見渡せば、女、女、女、な学舎だったために、男子との遭遇率0%。そんな私は、神に問うた。確かあなたはアダムとイヴを創りたもうたはず。で、アダムはどこかしら?
そんなイヴ満タンな私たちは、暇を弄び、『Aクラスのイヴたちへ、彼氏の有無の数値化と実態』を叩き出すため、アンケートを作成してクラス全員に配布した。アンケートの内容はすごくシンプルだった。
オブラートに包んで聞きます。彼氏はいますか?(妄想、二次元禁止。しかし、言い訳は受け付ける。)
THE 簡潔。
そして暇な親友たちと現状を把握するため、数字を弾き出した。クラスで彼氏いる人は、46名中9名。彼氏所有率19.6%、少なっ!
5人に1人しか彼氏がいない事実に、どでけえため息が出るし、余った4人が持っているものは、悲壮だ。残り僅かな花の10代は大驚失色になりにける。そして、彼氏がいない人の言い訳の数々よ。
・私は勇者だ。戦いのために男は捨てた。(ドラクエやり過ぎ)
・薔薇棘鞭刃で粉々になった。(幽遊白書の鞍馬推し)
・確か、もうすぐ白馬がやってくる。(王子じゃなく白馬推し)
・彼氏かぁ、砂糖まぶしてるアレね。(お菓子好き)
・修行中の身の上なので無理。(魔女になるらしい)
など、It's a crazy world。みんな大好き。そんな私たちは、冒頭の女子高生たちと、全く一緒の会話をほぼ毎日、呟いていた。抑揚のない声で、何度となく繰り返される言葉は、色褪せ、叶えられることはなく花弁は赤裸々に散ってゆく。けれど、捨てる神あれば拾う神あり。八百万の神が存在する日本に生まれてよかったと実感する。
なんと、親友(この子はめっちゃ可愛くて、安達祐実さんに似ているから以下安達と呼びます。)に彼氏ができてみんな大喜び。もう祭。法被着てねじり鉢巻して、神輿担ぐ勢いだった私たちは、安達の一言で静まり返る。
「ねぇ、今度、彼氏に頼んでみるよ、合コンしてって。」
ご、合コン……!?WHAT!?
もう全員で興奮。そうしている間に合コンはトントン拍子に進んで、人生ではじめての合コンをすることになった。けれど、合コンが近付くにつれ、不安になってきた私たち余計なことを考えて頭でっかちなるけれど、
Don't thing ! feel〜.
燃えよドラゴンでブルースリーも言っていたではないか。(ごちゃごちゃ)考えるな!感じろ、だ!を胸に刻んでいざ出陣。
その勢いてで、合コン当日を迎えて、安達彼氏宅でたこ焼きパーティーをする運びになっている。そして私たちは、緊張しながらも楽しく時間は過ぎていった。
実はその時に、アダムたちの中に気になる男子がいてさ。その男子がみんなからJと呼ばれてさ。それがさぁ、優しくてさぁ、背が高くてさぁ、笑うと素敵でさぁ。いや、私は少しとか嘘を言っている。その時の私は、完全に瞳孔が開ききっていたと思う。それは、恋だろう。しかし、わたしの彼氏いない歴=年齢のため、アプローチがミリ単位で。彼を振り向かせるために私が考えた唯一の方法は、ファンタオレンジを他の人より多めに注ぐこと。アピール薄ッ!けれどそのときはそれが精一杯で。
そうしているうちに、楽しい宴は終わって帰路に就くことになって。それから家に到着すると、安達からメールがあって、Jと私が連絡先を交換することになって。唐突な展開に鼻血ブシャー!嬉しい過ぎて、家にあったファンタオレンジを神輿代わりに担いで、うるさいと母に怒られる始末。母よ、今日は許せ。
それから携帯へJの名前を登録しようとしたら、あることに気が付いた。アホな私はJ本名は覚えていなかった。そんな私は、今更J名前を聞けず、携帯登録名はJとして入力した。それからJとはメールしたり電話したりして、後日2人で遊ぶことになる。
それからわたしはデートの日に、待ち合わせ場所へ向かうと、端正な塩顔で優しく笑う彼に駆け寄る。街をブラブラして、ご飯食べて、広い公園を散歩した。背の高い秋桜も日に照らされ、風に揺れて美しい。穏やかだった。
「うちこの近くなんだ。今から来る?」
横を見るとJがこちらを見て恥ずかしそうにしていた。「うん、行こっか。」と言い付いて行くと、大きな門構えの豪邸で、たまげる。
豪邸を前に私の中の松田優作さんが叫ぶ。(割愛)
玄関でお母様と挨拶をして、階段を上がり緊張しながら、Jの部屋へと入った。テレビもソファーも大きい。「そこに座ってて。」と言う彼に従い、ソファに着地する。「お茶とお菓子を持ってくるる。」言い出て行ったJの部屋をもう一度見回す。なんだ、お坊ちゃまだったらしい。Jが戻って来ると、ファンタオレンジとバームクーヘンとトイプードルがキャンキャン言いながら入って来た。私はJそっちのけで犬と戯れる。テレビを付けたJは私の横に座った。それを観ながらあーでもないこーでもないと話していたら、映画を観ようということになる。
「昨日確か、青い春を途中まで観て止めたからそれ観る?」
青い春って優作さんの息子じゃんと思いながら頷く。JはDVDレコーダーを起動させて再生した。
青い春、
では、
なかった。。。
…………ものすんごい喘ぎ声と、
そして、
大画面ではアダムとイヴが…(割愛)
からだの穴という穴が全部開いた。毛穴まで全開き。そして白目をむく。絶叫したかったが絶句していた。私の中で、再び優作さんが現れ叫ぶ。(割愛)
う、嘘だ!!!!
端正な塩顔なのに。
笑ったら見える白い歯が素敵なのに。
背が高くてスマートなのに。
話し方も仕草も品があるのに。
お金持ちのお坊ちゃまなのに。
お母さん美人なのに。
トイプードル飼ってるのに。
Jは、慌ててテレビの電源をオフにした。
やってくる、
静寂、
そして、
無。。。
もう無理だった。
彼を見ることが出来なかった。
笑って誤魔化すことも出来なかった。
何も出来なかった。
気まずかった。
消えたかった。
目の前にあるファンタオレンジ浴びたかった。
そして犬が吠えていた。
「ごめん、今日帰るね。また連絡するから。」
と言って席を立ったら、
「あの、、、、連絡待ってる。俺からもするから。、、、、あの、、途中まで送るよ。」
というJに、首を横に振ってありがと、またね、と言い残して部屋を出た。
ただ、テクテクと、そして、淡々と下り坂を歩いた。
黄昏に あられもない声 ただ絶句
晩秋の アダムとイヴに 白目むく
勝手に二句できた。全然嬉しくないけど。
大志と共に刻んだトキメキは消え失せ、なんなら大志も消え失せ、薄ら膨らんだ胸だけが残る。
J、昨日観たのは、青い春を途中まで、それからはアダムとイヴに変えたんやね。
ブルースリーとかの中国映画は、最後に突然画面いっぱいの赤い文字で"終劇"で終わるけど、あの感じに似ている。それはまさに突然の"終劇"だった。アダムは健康な証拠だろうが、当時の私はウブだった。アダムの免疫ゼロなのに、いきなりアレはタフすぎる。初めてのアレを観たのが、初恋のアダムの横って。そして、花の10代、その花弁は、もぎ取られ、風に飛んで行った。
そしてわたしは思った、。
ところでさ、Jよ、ねぇ、君の名は?
それから1ヶ月後、人生初となる彼氏ができた。それはJだった。
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