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小説

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#創作大賞2023

夕凪のひと|短編小説

やさしい獣のような声を上げて、男は果てた。なんの肥やしにもならないセックスだったけれど、…

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ドライブインなみま|小説 かつ丼編

紙風船みたいな男だと思っていたら、本当に紙風船だった。それを膨らませて地面へ着地させない…

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雨、恍惚として。|掌編小説

大雨が降る。世界をざーっと白く染めながら。私は、朝早く起きて窓からそれを見ていたら、子ど…

天文薄明は肉眼で6等星が見えないくらいの明るさのことだよ。|掌編小説

私は何かを待っている。 いつもそうだ。何かを待ちわびている。その何かとは人なのか物なのか…

ドライブインなみま|小説 焼きめし編

夜が漣にゆれる。月光が照らす海面は、てらてらとたゆたい、そのほかは波音しか聞こえない柔ら…

ドライブインなみま|小説 プリン編

だいたい甘くてやわらかいものは、すぐに口の中から溶けてなくなるから信用ならない。アイスク…

ドライブインなみま|小説 うどん編

「はい!息を吸ってえ、吐いてえ、吸ってえ、はい!止めて息んでっ!」 助産師の伊藤さんに言われる通りに息を深く吸ったり吐いたり息んだりしていると、自分がロボットになったような気がする。けれど、頭蓋骨を貫くような下腹部の激痛で私はロボットではなく動物なんだと実感できた。 「イタタタ!痛い!お願い!助けてえ!」 私は喉が千切れるかと思うくらいに叫んだ。すると伊藤さんは 「痛いよね。でも東さん、助けてあげるから、ちゃんと息をして。はい!もう一回!吸ってえ──」 と私に負けな

ドライブインなみま|小説 ナポリタン編

言葉が螺旋を描きながら私のてのひらへ舞い降りてきた。温かい。触れた瞬間にそう思った。  …

ドライブインなみま|小説 中華そば編

魚の鱗が手の甲と腕にあった。それは透明な瘡蓋のようにピタリと皮膚へ貼り付いている。 「手…

ドライブインなみま|小説 オムライス編

──あーあ、恋に落ちた。 瞬間的にそう思った。幾分高熱に魘された時のように身体が浮遊して…

ドライブインなみま|小説 サンドイッチ編

「私の名前は林 雨桐(リン・ユートン)と言います。」 と、茶色のテーブルにある自分が書い…

ドライブインなみま|小説 ミックスジュース編

自分の抜け殻を見たような気がした。空蝉の硬質な殻の内側は、がらんどうになっているような。…