レンズ交換式カメラのファインダーまわりのスペックについて
※この記事は有料に設定していますが、本文は無料でお読みいただけます。
ファインダーはこれから撮る映像を「見る」ためのもので、写りには影響しない。
しかし、その映像を見ながら構図やフレーミングを考えたり、光の当たり具合やモデルの表情を確認するためのものなのだから、写真を撮るという行為におけるファインダーの重要性は高い。
それだけにカメラを買う前にはファインダーまわりのスペックのチェックも欠かせない。
安くないお金を出して買ったあとで「あれ、なんか違うぞ」とならないために、それぞれのスペックの意味を知っておくと安心だ。
視野率
一眼レフの場合はファインダーのみ、ミラーレスカメラではファインダーまたはモニター画面について、撮影する画像に記録される範囲に対するファインダーなどで見える範囲の比率をあらわす。
理想は記録される範囲と見える範囲が完全に一致する100%。
ただし、見えないものが写ることはOKなのに対して見えるものが写らないことはNGという暗黙の了解があると言われている。
そのため、公称値が100%であっても実際は「99%±1%(98%から100%のあいだ)」のケースや、「100%+0%-1%(99%から100%のあいだ)」のケースもあったりするらしい。
そのへんもあって、「約」がついていたりいなかったりする。
ミラーレスカメラでは撮像センサーに映った像を表示するシステムであるため、入門機でも完全な100%が容易に実現できる。
現行機種ではすべて100%となっている。
なお、フジフイルムX-Pro3はミラーレスカメラながら光学ファインダーも備えていて、こちらは撮影範囲フレーム基準で95%の視野率となっている。
一方の一眼レフは撮像センサーとファインダーの位置の調整に手間とコストがかかることもあって、以前は高級機以外は92〜98%程度のものが多かった。
が、最近ではほとんどが100%を実現している。低価格機でさえ100%があたりまえのミラーレスカメラやコンパクトカメラに負けているのが口惜しかったからではないかと個人的には勘ぐっている。
現行機種で100%でないのはキヤノンのEOS 6D Mark II(上下/左右とも98%)、EOS Kissシリーズ(上下/左右とも95%)だけとなっている。
ちなみに、「上下/左右とも」とあるのは「上下(縦)98%、左右(横)98%」という意味だが、以前はシグマSD10(縦97×横98%だった)などのように横と縦の数字が少し違うものもあった。
倍率
肉眼で見える被写体の大きさに対するファインダー越しに見える被写体の像の大きさの比率を「○○倍」のかたちであらわす。
数字が大きいほど被写体の像が大きく見えるので、ピントなどのチェックがやりやすいというメリットがある。
が、高倍率化はファインダー光学系の大型化を招くうえにケラレが生じやすくなる、目をぐりぐり動かさないと隅々まで見渡せないといった不都合もあるので一長一短とされる。
どういうわけか、焦点距離50mmのレンズをつけた状態での数字を記載するのが基本となっており、撮像センサーの小さなAPS-Cサイズやマイクロフォーサーズのカメラでは大きな数字になる。
センサーサイズが異なるカメラのあいだで横並びの比較をする際は、APS-Cサイズは倍率の数字を1.5で(キヤノン機のみ1.6となる)、マイクロフォーサーズは2で割った35mm判換算倍率を利用する(スペック表などに35mm判換算の数字が載っている場合もある)。
なお、フジフイルムだけは35mm判換算倍率を載せているので、そのままの数字で比較できる。
フルサイズ機の倍率がもっとも高いのはソニーα1とα7S IIIの0.9倍、もっとも低いのは同じソニーのα7Cで0.59倍だった。35機種の平均値は0.759倍となる。
APS-Cサイズ機では最高がフジフイルムX-T4の0.75倍相当(1.125倍)、最低がキヤノンEOS Kiss X90の0.5倍相当(0.8倍)。18機種の平均値は0.645倍相当だった。
マイクロフォーサーズ機はトップがパナソニックDC-G9の0.83倍相当(1.66倍)、僅差でオリンパスE-M1Xの1.65倍がつづく。もっとも低いのはオリンパスE-M10 Mark IVで0.62倍相当。10機種の平均値は0.75倍相当とAPS-Cサイズ機より高い結果となった。
なお、全体の平均値は0.724倍相当だった。
アイポイント
一般にはファインダーののぞきやすさの目安とされる数字。
接眼レンズの最後尾または接眼枠からファインダー像と情報表示がケラレることなく見られる目の位置までの最大距離であらわす。
スペック上の数字が20mmであれば、接眼レンズの最後尾または接眼枠から20mm離れた位置からのぞいてファインダー像や情報表示がケラレずに見られることを意味する。
なので、数字が大きければ大きいほどケラレが起きにくいと言える。
ファインダーの倍率が高いほどアイポイントは短くなる傾向となる。倍率を高くしつつ、アイポイントも長くするにはファインダー光学系を大掛かりにする必要があり、カメラの大型化と高コスト化につながる。
そのため、通常はケラレにくさも重視してほどほどの倍率とほどほどのアイポイントで手を打つことになっている。
ミラーレスカメラの一部の機種では、ファインダー像の表示エリアを狭くすることで倍率を下げる機能を備えており、それによってアイポイントを長くすることでケラレにくくできる。
ただし、メガネ使用者としての本音を書くと、この数字はあまりアテにするべきではない。
現行機種でもっともアイポイントが長いソニーα7 II(オリンパスE-M5 Mark IIIと並んで公称27mm)はアイカップをつけたままではケラレが避けられなかった。接眼枠からの数字でも22mmと長いアイポイントを確保しているにもかかわらず、である。
一方、もっともアイポイントが短いニコンD500(16mm)でケラレが気になった記憶はない。
これがどういうことかを正しく説明することはできない。
が、アイポイントだけをファインダーののぞきやすさの指標とするのは危険だということだけはたしかだ。とワタシは考えている。
数字がわかっている64機種の平均値は21.18mmだった。
表示デバイスの種類、サイズ、解像度
電子ビューファインダーだけの項目で、多くは「ファインダー形式/方式」の欄にまとめて記載されている。
種類についてはほとんどが有機EL(OLEDと書いているものもある)で、現行機種では47機種中42機種までが有機ELを採用している。
オリンパスE-M1XとE-M1 Mark III、シグマsd Quattroの3機種だけが液晶で、パナソニックDC-G100の強誘電LCOSも液晶の一種らしい。
なお、キヤノンEOS Kiss Mだけは種類の記述が見つけられなかった。が、EOS Kiss M2と同じであれば有機ELだろうと思う。
サイズは記述が見当たらなかったオリンパスをのぞく42機種中では0.5型がもっとも多く、次の0.39型だけでほとんどを占める。
例外は0.4型がパナソニックDC-G100の1機種、0.64型がソニーα1とα7S IIIの2機種の計3機種のみとなっている。
おおざっぱには、高級機ほど大きなデバイスが使われることが多い傾向と言える。
これはたぶん、高精細化のためにサイズの大きなデバイスが必要なことがあるのだろうと思われる。また、ある程度大きさがあったほうが接眼光学系の倍率を低めにできる=収差が抑えやすい=性能を上げやすい、というのもあるかもしれない。
解像度はドット数(通常、RGB3ドットで1ピクセルとなる)であらわされ、現行機種では236万ドット(21機種)と368万ドットないし369万ドット(18機種)が大半を占める。
ほかに、576万ドットが5機種、944万ドットが2機種、144万ドットが1機種ある。
たいていは4:3比率の画面なので、
144万ドット:800×600ピクセル
236万ドット:1024×768ピクセル
369万ドット:1280×960ピクセル
576万ドット:1600×1200ピクセル
944万ドット:2048×1536ピクセル
となる。
表示タイムラグ・フレームレート
どちらも光学ファインダーにはない要素で、ミラーレスカメラでもスペック表に記載がないもののほうが多い。
表示タイムラグは撮像センサーに映った像が電子ビューファインダーやモニター画面に表示されるまでの時間を「秒」または「msec(ミリ秒)」単位であらわす。
数字が小さいほど動きの速い被写体を追いやすい、シャッターチャンスを的確にとらえやすいなどのメリットがある。
が、撮像センサーの読み出しの速さ、画像処理エンジンの処理の速さが必要なため、高級機や高速連写仕様機が優位となると考えられる。
また、映った像を読み出して処理して表示するのにかかる時間はゼロにはできないため、その点においては光学ファインダーにはかなわない。
とても重要な項目だと思うが、公開されているのはオリンパスE-M1XとE-M1 Mark III、パナソニックDC-GH5シリーズだけのようで、ほかの機種の数字は見つけられなかった。
表示フレームレートはファインダーやモニターに表示される映像の更新頻度を1秒間に表示するフレーム(コマ)数であらわす。単位は「fps」となる。
数字が大きいほど動きをなめらかに見せられるので動くものを撮るのには有利となる。
反面、消費電力が増えるほか、機種によっては表示される映像の品質が劣化する場合がある、と使用説明書などに注意書きがある機種もある。
フレームレートが固定のもの(たいていは数字は公開されていない)と、切り換え式のものがあり、後者では「60fps」と「120fps」が選べるのが一般的だ。
現行機種ではソニーα1のみ「60fps」「120fps」に加えて「240fps」も選択できる。
なお、モニターのフレームレートを切り換えられる機種もある。
視度調整範囲
視度とは近視や遠視の度合いのことで、これを調整できる範囲をあらわす。単位は「m-1(毎メートル)」。以前は「dpt(ディオプターまたはディオプトリー)」だったこともあって、今でもこちらを使う人がいる。
マイナス側が近視で、プラス側が遠視に対応する。
カメラのファインダーなどをのぞく際に一時的に近視状態となる「器械近視」が起きるため、弱い近視に合わせた「-1m-1」が標準の設定になっている、というような説明を昔読んだ記憶がある(不確かモード)。
接眼光学系の設計によっては視度を変えることで倍率が変動する場合がある。そのため、倍率の数字には「-1m-1時」という注釈がつけられていることが多い。
ミラーレスカメラでは画面上のなにか(測距点の枠や格子線など)がくっきり見えるように調整すればいいが、一眼レフの場合は注意しないといけない点がある。
と言うのは、最近の一眼レフは像が映る面の前後に測距点の枠や格子線などを表示する面があって、両者がくっきり見える視度は微妙に異なる。
そのため、測距点の枠や格子線がくっきり見えるように調整すると、肝心な被写体の像が少しピンボケになってしまうことになりかねないからだ。
目のピント調節機能が元気なうちはたいして問題にはならないが、加齢にともなって機能がおとろえてくると、ピントがうまく見えなくて困る場合が出てくる。というのがオッサンが現在進行形で痛感している部分である。
まとめ
アイポイントのことを調べがてら手もとのデータを再チェックしたそのついででファインダーまわりのスペックについてもまとめておこうと思った次第。
知っている人にはあたりまえのことばかりだろうが、カメラをはじめたばかりの人だと意味がわからない言葉もあるだろうし、カメラをより知るための助けになればと思っている。
例によってお代は見てのお帰り方式。おもしろかった、役に立ったと感じてもらえたら購入なりサポートをいただけると励みになりますんでよろしくお願いいたします<(_ _)>
プロのライターとしての活動へのご理解とご支援をいただけるとうれしく思う。
以下、現行の一眼レフとミラーレスカメラのうち、光学または電子ビューファインダーを備えた計65機種のスペックもまとめてみた。この部分は有料とさせていただきます。
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?