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君の顔では泣けない¦君嶋彼方

この小説は男女が入れ替わります。
あーハイハイ、と思った方こそ読むべき小説。
圧倒的リアリティで「入れ替わり」を描く小説野性時代新人賞受賞作!と露出されているが、圧倒的リアリティとはすなわち「入れ替わり」というギミックに対して真摯に向き合っているということだ。
作者の2作目となる「夜がうたた寝してる間に」も読んで確信しているが、君嶋彼方は小説のギミックに対し、取り憑かれたほど実直に描く。
例えば、男女の中身が入れ替わったとして、直面する現実問題は何が挙げられるだろうか。
心の問題、性の問題、身体機能の問題など、挙げればキリがないほど問題がある。
多くのエンタメ作品はそのようなギミックから生まれる課題を無視、あるいは見せないように工夫して、ギミックの面白さのみを抽出して、作品に落とし込む。
これは最早広く当たり前の認識になっているからこそ、細々とした部分に突っ込みを入れる人が少なく、成り立っているのだと思う。
しかし、本書を読めば「ここまで男女入れ替わりというギミックに対して真面目に描いたものはない」と感じるはずだ。
もちろん、その実直さだけでなく、小説としても当然面白い。
僕は読み終えた後、完璧なラストシーンについ拍手をしてしまった。

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