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医者の収入源は自分が払った税金と保険料?

若干過激なタイトルを付けてしまいました。

日本の保険診療における「さまざまな立場の利権が複雑に絡みあったとってもイビツなバランス」を解き明かして問題提起をしていきたい、と意気込んでいる以上、ヒトのことを言う前にまず自らが置かれた立場をしっかり説明しないと、と思いました。
忖度せずにアレコレ言うなら、まず自戒も込めて自分のことから。

医者は高収入

医者は高収入と言われます。否定はしません。
(あくまでこれは日本国内の話であり、欧米諸国と比べれば最低レベルなんですが、ここでは敢えて触れません。)
(労働時間や心身への負担や責任に見合った収入かと言われると、かなり疑問である、という見解も、敢えて触れません。)

心の声にフタをできず、括弧ながらも思わず吐露してしまう時点で未熟なワタシですが、脱線を修正して話を進めます。

高収入であることによるメリットはもちろん、

・自由になるお金が(比較的)多いことです。

では、デメリットは?

・税金が高くなる(累進課税、所得制限による控除や子供手当の不適応)
・保険料が高くなる(年金、健保、後期高齢者、介護保険すべて上限です)

ということです。

いずれももちろん、税金や保険料の負担が少ない人と受けられるサービスに違いはなく、特にご褒美もなければ、ホメてももらえません。

そして、現実的にはこれらの負担により、世の中の多くの人が思っているほど、お金は自由になりません。

医者の税・保険料負担

ひんしゅく覚悟で言います。

おおよそですが、
所得税・住民税・社会保険料の総額は、
年収400万だと、約85万。 
年収4,000万だと、約1,700万。
年収10倍で、税・保険料の負担額は20倍にもなります。
頑張って平均年収の10倍を稼ぎ出すと平均年収の方20人分もの税・保険料を納めさせて頂けます。極めて光栄です。
(注)医者の平均年収は4,000万もありません。あくまで例えです。

極端な例えではありますが、控え目に言ってもエグいです。

(その上「税収が余剰になった分を減税で国民全員に4万円定額で還元する」という案、累進課税で多く取られている立場の人からすれば、ナニソレ??です。余分に回収したから返すというなら回収したのと同じルールで返して下さい。累進はおろか定率ですらなく定額って…。それどころか所得制限をつける??勝手にバラまかれた感が最強です。そんなことするなら、子育て支援や軍事費に回して下さい。)

おっと、また話が逸れました。失礼。話を戻します。

医者の収入はどこから?

おそらく世の中の人々はあまり気にされていないかと思いますが、
医者の収入はどこから来るかということを冷静に考えてみましょう。

医者の立場も色々です。
常勤勤務医(=サラリーマン)だったり、
非常勤勤務医(=フリーター)だったり、
個人医院院長(=個人事業主)だったり、
医療法人の理事長(=会社社長)だったり。
※ 自費診療を行う医師は保険診療外なのでここでは除外します。

例えば、

病院で勤務医をしていれば、病院が給与を支払ってくれます。
(給与制の施設が多いですが、部分的に歩合制の施設もあります。)
給与の財源はどこかと言えば、主に病院の売上(=診療報酬)です。

医院で開業医をしていれば、医院での利益が報酬となります。
利益がどこから来ると言えば、主に医院の売上(=診療報酬)です。

医療法人で理事をしていれば、法人から役員報酬をとります。
役員報酬がどこから来ると言えば、主に法人の売上(=診療報酬)です。

診療報酬はどこから?

さて、診療報酬について。

令和3年の医療費財源分類を調べると、
国民医療費45兆円のうち、
・保険料は5割
・公費が4割
・患者窓口負担分はせいぜい1割…

公費って、なぜか具体的に何を示すか明記されていないものの、要するに税収や国債ですよね。

診療報酬(=ざっくり言えば医療費のうち医療機関が受け取る部分)のうち、患者さんが負担しているのはごくわずかであり、ほとんどは税金と保険料から来ています。

結局何が言いたいの?

回りくどい言い方をしましたが、単刀直入に言います。

医者の収入源(=診療報酬)は税金と保険料です。

そうです。平たく言えば、自分でいっぱい払ってるヤツです。
(意識的か無意識かは別として)気づけば、それを少しでも多く回収しようと奮闘している、という構図です。

こんな感じ↓

高い志で医療に従事 
 =>忙しいけど(比較的)高収入
 =>税・保険料負担にウンザリ(高齢者の社会保障を支えます)
 =>もっと収入増やさないと(高齢者の診療報酬から回収します)
 =>収入↑
 =>税・保険料負担↑↑にゲンナリ(高齢者の社会保障を支えます)
 =>もっと働いて取り返さないと(高齢者の診療報酬から回収します)
 =>リピート複数回
 =>あれ、オレ、いったい何してんだろ?

ざっくり言えば、こんなサイクルです。

立場によっても違うので、もう少し深掘りすると、

給与制の勤務医
 =>頑張っても収入増えないので、やる気が出ません。
(税・保険料とも給与天引きされるので、サラリーマン同様、仕組みすら理解していない人が多い。足掻きようががないので、知ろうとすらしない。)

歩合制の勤務医
 =>歩合の診療(手術等)は頑張りますが、それ以外やる気が出ません。
(年収高くなり税・保険料支払いも多いので、必死に(場合によっては過剰な)診療をして、納めた分を少しでも取り戻そうとします。)

開業医
 =>自分と家族とスタッフを養うため、頑張り続けるしかありません。
(自分の税・保険料に加えスタッフの保険料も支払うので、歩合制勤務医より更に必死に診療をして納めた分を少しでも多く診療報酬で回収します。)

医療法人の理事
 =>年俸制なので、あんまりがむしゃらに働く必要はありません。
(年収高くなり税・保険料支払いも多いですが、子供も巣立った高齢者寄りの立場の方が多いですし、まあ、といったところです。)

このあたりの解釈は個々の医師によりもちろん異なりますが、穿った見方をすれば、ざっくりこんな感じで概ね間違いはないと思います。

まとめ

医師の多くは、高い志を持って医療に従事しています。
ワタシ自身も、その心を忘れないように常に自分を律しております。
お金のことなど一切気にせず、常に最良の医療を提供しようと努めることができれば、それが理想です。

でも、現実的にはキレイゴトだけを言っているわけにはいきません。
医師の頭の中では、常に診療行為に伴う患者さんへの利益と不利益を比較し計算して、決断をしています。そして、それと同時にお金の計算もします。いまどきの言葉で言えば、コスパやタイパも考えます。さもなくば、いずれ破綻してしまい、そもそもの診療自体を継続できなくなります。
医師が聖職者かのように扱われることがありますが、断じて違います。

良くも悪くも、医師は保険診療の中心部に組み込まれており、その中で生計を立てて暮らしています。

その事実から目を背けたまま日本の医療を語ることは、やっぱりできないと思うのです。

あまり言われないことではありますが、
一番難しいところは、医師の医療行為をジャッジする立場の人がどこにもいないことです。

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