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診療報酬引下げが、なぜ愚策なのか①〜医療は有限で貴重なもの〜

少子高齢化に伴って国民医療費が増え続けていることが大問題だっていう状況で、それを改善するために診療報酬を下げるっていうことが、いかにダメかというハナシです。

Limited Medical Resources

医療資源は、限られています。
医師をはじめ、いわゆるコメディカルと呼ばれる看護師、放射線技師、理学・作業療法士、薬剤師、保健師、医療事務ほか、すべての医療従事者(ヒト)、それから医療機器、薬剤、医療材料など(モノ)もそうですし、何よりその財源である保険料と税金(カネ)は主に医療サービスを受けることの少ない元気な現役世代が払っているもので無尽蔵にはありません。

医療において、ヒトモノカネも不必要に多くてはマズいですし、限られて然るべきなのです。

Value-based Health Care

そして、医療はとても貴重なものです。
理由として「医療資源が限られているから」ということはもちろんありますが、それにも増して「健康に長生きするため=質の高い生活を送り続けるため」に、生きていれば誰にとっても不可欠なものだからです。その価値を医療サービスを受ける側(=患者)が認識していないといけないし、医療者側が提供する医療は価値の高いものでないといけない(価値の低い医療を提供すべきではない)のです。

敢えてもう一度言います。

健康に生きるために不可欠な『医療』は、限られた資源によって成り立っており、とても価値の高いものなのです。

では、
「医療費がかかり過ぎているから診療報酬を引き下げよう!」というのが、なぜ愚策なのか?

理由は2つ。

理由1つ目。
「そこが原因ではない」から。
医療費がかかり過ぎている主な原因は、
① 高齢者の割合が多い
② 医療が浪費されている 
からであり、診療報酬が高いからではありません。
診療報酬を下げたところで、高齢化に歯止めがかかるわけでも、医療の浪費が減るわけでもありません。効果がないだけであればまだいいですが、次に書くように、状況はむしろ悪化しかねません。

理由2つ目。
「医療の価値を下げることによる代償は大きい」から。
診療報酬の引き下げは、医療の価値を低く見積もることを意味します。
医療の価値を低く見積もれば、医療者のモチベーションは下がりそれ相応の低い価値の医療を提供するようになります。患者側からすれば、ただでさえ安くて軽視されている医療の価値がさらに軽んじられ、結果として医療資源の濫用につながります。有限で貴重な医療が、際限なく消費されてしまうのです。

例えば、

・家庭で食費がかかり過ぎていたとします。
まず考えるべきは、節約して食事にかかる費用を減らすことであって、レストランやスーパーに値下げを求めたりしませんよね?

・家庭でガソリン代がかかり過ぎていたとします。
まず考えるべきは、車の走行距離を減らしたり徒歩や自転車や公共交通機関等の代替移動手段を使うことであって、石油会社に原油価格の引き下げを求めたりしませんよね?

ということです。(ちょっと違うかな…?)
でもとにかく、
普通に考えれば、まずすべきことは、
「医療が現場で適正に活用されているかを確かめて、無駄を削る」こと
のはずです。診療報酬を削っている場合ではないんです。

次の記事では、日本以外の国での医療に関する常識をお伝えしつつ、もう少し深掘りしていきます。








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