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「雨降って地固まる」ものがたり

元教会長:はなちゃん

小さなケンカはあったけど初めて聞いた「離婚だ!」の一声・・

それこそ、ほんの些細のことから始まった高齢夫婦の口喧嘩。墓石は長方形が良いという夫に私は五輪塔がいいと譲らなかった。
ならば実家の五輪塔に入ると言ってしまった!その瞬間、夫のかみなり冒頭の言葉だった。
「離婚」の言葉に悔しさや切なさや悲しみが溢れ出て、心が落ち着くところ、「仏間」に緊急避難した。床の間には両家の父母と信仰している仏教の開祖さまの写真があり、ニコニコ笑っていた。そして一カ月前に亡くなった愛犬の、首をちょこっと傾けている写真も・・・
「ばぁば、やっちゃったね、喧嘩の種を食べるワタシはもういないんだから、じぃじと仲よくね!」・・・心を落ち着かせようとお経をあげた。
信仰を頂いて、悩みを聴かせて頂く立場なのにと思うと恥ずかしく情けなかった。知ること、わかること、出来ることの違いがわかった気がした。・・次々湧いてくる感情を抱きしめながら、なぜ、なぜと深堀りしていくと、ペットロスに陥っていた私は、哀しみを夫に癒して貰いたくて甘えていたんだ・・。
「甘えたかった」という気持ちに気づくとそれまで高ぶっていた感情がスーと消えた。

振り返るとこのひと月「寂しいね」とつぶやく私を「そうだね」と受けとめてくれていた夫・・そんな夫の優しさに気づいたとき、ごめんなさいの気持ちが溢れ出てきた。翌日「昨日は済まなかった」と詫びる夫に私も心から謝った。後日、両親の眠る長方形のお墓を磨かせて頂いた。
「長方形は地震のときコロコロ転がらず安定感があるよ」と持論を展開する夫に、「なるほどそうだね」と自然に相づちをうっている私がいた。どうしてそう思うかをあの晩も聴けば喧嘩にならなかったのになあー。
でも仲人名人だった私の両親の夫婦喧嘩の仲裁はいつも「雨降って地固まる」だった!
さぞ、めでたしめでたし!と言っているだろう。 


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