家族は生きもの

風になびく柳

家族は生きものかも知れない。

「☆♯＄※！★￥％になる？」
「えっ、なに？」
「だから、☆♯＄※！★年になる？」
テレビを見ている夫のそばで趣味の本を読んでいた私は、せっかくの楽しみを中断されたようで、少しムッとし「何言ってるか分からない」と返した。いつの間にか夫婦共に高齢者の仲間入りをし、活舌が悪くなり、おまけに聞き取る力も衰え、老眼鏡が手放せない。

「だからさ、俺たち結婚して何年になる？」
どうして急にそんなこと聞くのかと思いながら、夫の見ているテレビに耳を傾けると、若かりし頃聞いたことのある音楽が聞こえてくる。
「長男がもうすぐ４０歳になるから、それくらい」
「そっか、そんな前の曲か」そう言って、膝の上の指でリズムをとっている。ふとテレビに目をやると、かなり年をとった昔のスター？が夫婦で映っていた。

今夜、長男は出張中、隣の部屋では末娘がタイドラマに夢中。家族みんな大人になって、それぞれが自分の時間や空間を持っている。多少かみ合わない会話をしてもギスギスせずに、程よい距離を保ちながら毎日を過ごせている心地よさ。

2人から生まれた家族は、半年ほどで夫の両親と義弟と同居し５人家族になった。数年のうちに３人の子宝に恵まれ８人に。暫くし義母が６４歳で亡くなり７人、そして義弟が結婚し６人家族に。次第に子供が成長し、次男が就職で家を出た同じ年に義父が亡くなり一気に４人となり、急に家が静かになった。夫が単身赴任したり、次男が出たり入ったりしながら５～４人の時が続く。昨年ようやく次男が結婚し新しい家族を作り初孫が生れた。家族の細胞分裂。

考えてみれば家族は生きものかも知れない。次はどんな生きものに変化するのだろうか。大きくなったり小さくなったり、時にはちょっと歪だったり。その時々を楽しみたいと思う。そうそう、マイペースな亀や癒しの犬が家族という生き物に栄養をくれた時もあったなぁ。