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子どもの正義

教会長:コトちゃん

東京で生まれ育った夫と私が、子どもを自然豊かな所で育てたいと郊外に引っ越してきたのは42年前のことです。
高台にある我が家は、春は一面桜色に染まりウグイスがさえずり、夏には緑濃い木々に囲まれてセミしぐれ。都心にある職場に通勤する夫の大変さと引き替えに、子どもたちは四季の味わいを体感しながらスクスクと育ちました。

長男が小学3年生のある日のことです。ヒヨドリのヒナを抱えて帰ってきました。どうやら木の上にある巣から落ちてしまったようです。
困惑した顔でいる私に向かって長男は「お母さん!そのままにしたら猫に襲われて死んじゃうでしょ。命は大切でしょ!」と目をウルウルさせながら、珍しく強い口調で訴えてきたのです。一緒に見つけた友達は「うちのママはダメっていうよ」「絶対、許してもらえない」と口々に言われて自分が連れてきたようでした。
「参ったな・・野鳥を育てるなんて無理だし・・」と思う気持ちを抑えて、泣きそうな顔で必死に訴えている長男の優しさに寄り添うことにしました。

子どもの頃から虫や鳥を触ったことのない私が、インコを飼っているご近所さんから餌を分けてもらい、すり潰して水と一緒にスポイトに入れて「ピーピー」と鳴きながらくちばしを開けるヒナに餌やりを始めたのでした。
ヒナとはいっても手の平ほどの大きさで「かわいい」という感じには程遠く、とにかく餌を食べさせて生かさなければ。という必死な思いで2日間、長男と一緒に世話をしました。

結局、市内にある小さな動物園でヒナを引き取ってくれることになり一件落着となりましたが、忘れられない出来事でした。あの時、友達の親が反対する中で長男は「毎日、仏さまに手を合わせてお経をあげているお母さんならきっと命を大事にしてくれるはず。」と信じて連れてきたのかも・・・今頃そんなふうに思い、子どものおかげで色んな体験をさせてもらえたな。とニンマリしている私です。


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