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ちょっと聞いて~-母と向き合う私のものがたり-

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認知症が進む実母と奮闘する毎日。 幼い頃は憧れだった母の姿。老いてゆくことは当たり前のこと。いつかは来ると覚悟はできていたつもり。私もゆく道なのだから。怒りたくない、理解してあげ… もっと読む
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#親子

No.19 特別養護老人ホームへの入居

へっぽこ娘 母の介護認定が「要介護3」になったことは前に書いたが、その後見学して良さそうだった数か所の特別養護老人ホームに早速入居申し込みをした。同じタイミングで、ケアマネさんが今年の中旬に新しくオープンする施設のパンフレットを持ってきてくれて「ここに入れるといいなと思っているのよ」と勧めてくれた。 ケアマネさんは最近の母の様子や私の介護の大変さを聞いて、家で看るのも限界に近いということもわかってくれて、なるべく早い入居をと考えてくれていたのだ。 それまで申し込んだすべての

NO.18『お願い、出てきて…』

へっぽこ娘 ある日の夕方、階下から私を呼ぶ声がする。「どうしたの?」と降りていくと「私は流していないんだけどね」と言いながら母はトイレの便器を指さした。覗いてみると「え~~~っ!!」水が溜まっているところに何やら白い物がちょっとだけ顔をのぞかせている。トイレットペーパーではないことは明らかだった。 「これって、もしかして尿とりパッド?!嘘だよね?!だとしたら大変!」あれには高吸水性ポリマーとやらが入っていて、水を吸うとものすごく膨らむことを私は知っている。以前母のズボン下に

No17.私が私で居られる場所

母はデイサービスから帰って来ると必ず私を探す。それは子どもが学校から帰って来て一番初めにお母さんを探すのと同じだなと微笑ましく思えるときもあるのだが…。 在宅ワークの日は私が家にいるのでそれでいい。問題は出勤日。デイサービスに行った母は私より2時間ほど前に帰宅する。すると真っ先に2Fに上がり、リビングに私の姿がないと手あたり次第部屋のドアを開けて私を探すのだと先に帰宅している主人が教えてくれた。それは、いつも帰るとトイレのドアや、すべての部屋のドアが開けっぱなしになっているこ

NO.16『大切なバック』

へっぽこ娘 今母が一番こだわっているのはバッグ。寝ても覚めても自分のバッグを肌身離さず持っている。家でもトイレには必ず持って入るし、夜は自分の枕の下に敷いて寝たり、足の間に挟んで寝ていることもあるくらいだ。 以前は若い女性が通勤に持ち歩くような大きなバッグにパンパンになるほど物を入れてデイサービスに持って行っていた。どう見ても90歳になろうとしているおばあさんが持つような形状のバッグではないし、歩くのもおぼつかないのにどうしてそんなに重たいものを持つのか、いつも呆れて見てい

NO.15『心の準備』

へっぽこ娘 母の介護認定がおりる前に、姉弟と一度母の今後について色々相談をする機会を設けた。「要介護3」になると特別養護老人ホームに入所することができるようになるので、入所させるかどうかについてもお互いの気持ちを確認し合った。 私の介護の大変さを心配してくれている姉弟は、特別養護老人ホームは数百人の入所待ちがあると耳にしていることもあって、入所させるならなるべく早く申し込みをしておいた方がいいと提案してくれて、その方向で行くことを皆で確認することができた。 まずは、母の現在

NO.14 『複雑に絡み合う』

肋骨骨折による11日間の入院から帰宅した母は、精神的混乱が一層強くなっていた。環境が変わることが認知症にはよくないことはどこかで聞いて知っていたが、ここまでひどくなるとは思っていなかった。表情に力がなくなり、目つきが変わり、ボーっとしていることが多くなった。食事もあまり食べなくなり、見た目でわかるほど痩せてしまった。そんな母の姿を見ると切なくなり、今さら考えても仕方ないことだとわかっているけれど、入院させたことを悔やむ気持ちも湧いてくる。でもそんな風に生気を失ったかのように見

NO.13『母の入院』

病院の先生に言われた一言。母との関りを通して心が色々動く。 こんなことがありました。 ちょっと、聞いて~ へっぽこ娘 母は自然がいっぱいの農村で幼少期を過ごしたこともあって元々足腰が丈夫だった。どちらかというと家でじっとしているより外に出るのが好きで、少し前までは暇さえあればよく近所を散歩していた。仲良くしていた友達が施設に入ったり亡くなったりして「私には行くところがないからつまらない」と嘆いては一人で外出していたのだが、さすがに最近はその足腰も年齢と共に衰えてきて、散歩