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ちょっと聞いて~-母と向き合う私のものがたり-

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認知症が進む実母と奮闘する毎日。 幼い頃は憧れだった母の姿。老いてゆくことは当たり前のこと。いつかは来ると覚悟はできていたつもり。私もゆく道なのだから。怒りたくない、理解してあげ…
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#介護

No.19 特別養護老人ホームへの入居

へっぽこ娘 母の介護認定が「要介護3」になったことは前に書いたが、その後見学して良さそうだった数か所の特別養護老人ホームに早速入居申し込みをした。同じタイミングで、ケアマネさんが今年の中旬に新しくオープンする施設のパンフレットを持ってきてくれて「ここに入れるといいなと思っているのよ」と勧めてくれた。 ケアマネさんは最近の母の様子や私の介護の大変さを聞いて、家で看るのも限界に近いということもわかってくれて、なるべく早い入居をと考えてくれていたのだ。 それまで申し込んだすべての

NO.16『大切なバック』

へっぽこ娘 今母が一番こだわっているのはバッグ。寝ても覚めても自分のバッグを肌身離さず持っている。家でもトイレには必ず持って入るし、夜は自分の枕の下に敷いて寝たり、足の間に挟んで寝ていることもあるくらいだ。 以前は若い女性が通勤に持ち歩くような大きなバッグにパンパンになるほど物を入れてデイサービスに持って行っていた。どう見ても90歳になろうとしているおばあさんが持つような形状のバッグではないし、歩くのもおぼつかないのにどうしてそんなに重たいものを持つのか、いつも呆れて見てい

NO.15『心の準備』

へっぽこ娘 母の介護認定がおりる前に、姉弟と一度母の今後について色々相談をする機会を設けた。「要介護3」になると特別養護老人ホームに入所することができるようになるので、入所させるかどうかについてもお互いの気持ちを確認し合った。 私の介護の大変さを心配してくれている姉弟は、特別養護老人ホームは数百人の入所待ちがあると耳にしていることもあって、入所させるならなるべく早く申し込みをしておいた方がいいと提案してくれて、その方向で行くことを皆で確認することができた。 まずは、母の現在

NO.14 『複雑に絡み合う』

肋骨骨折による11日間の入院から帰宅した母は、精神的混乱が一層強くなっていた。環境が変わることが認知症にはよくないことはどこかで聞いて知っていたが、ここまでひどくなるとは思っていなかった。表情に力がなくなり、目つきが変わり、ボーっとしていることが多くなった。食事もあまり食べなくなり、見た目でわかるほど痩せてしまった。そんな母の姿を見ると切なくなり、今さら考えても仕方ないことだとわかっているけれど、入院させたことを悔やむ気持ちも湧いてくる。でもそんな風に生気を失ったかのように見

NO.13『母の入院』

病院の先生に言われた一言。母との関りを通して心が色々動く。 こんなことがありました。 ちょっと、聞いて~ へっぽこ娘 母は自然がいっぱいの農村で幼少期を過ごしたこともあって元々足腰が丈夫だった。どちらかというと家でじっとしているより外に出るのが好きで、少し前までは暇さえあればよく近所を散歩していた。仲良くしていた友達が施設に入ったり亡くなったりして「私には行くところがないからつまらない」と嘆いては一人で外出していたのだが、さすがに最近はその足腰も年齢と共に衰えてきて、散歩

NO.11『変化』

大きな事件の後、少し心穏やかに私自身の変化を感じました。そんな自分が嬉しくて。 ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 二つの大きな事件の後は、しばらく落ち着いた日々が続いた。もちろん小さなことは毎日のようにあったが、意外と母がすぐに落ち着いてくれたので、私が困って大きな悩みのタネになるようなことは起こらなかった。 その間、相変わらず仕事に追われていた私には、新たなショートステイ先を見つけて見学するような余裕はなかったので、仕事でどうしても母を預けなければならない時は、恐る恐る今

NO.10『事件その2「凶器は隠して…」』

前回の事件の後、また事件が起きました。ドキドキしたけど、これまでとは少し違うふれあいが出来たような…。 いいふれあいって何だろう。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 そして、前回の事件から幾日も経たないうちに第二の事件が起こったのだ。その日は私も母も休みで家にいて、主人だけが出勤だった。朝から自分の部屋で何かしていた母が大きな荷物をいくつか抱えて恐ろしい表情で2階に上がってきた。「まったく、全部何にもなくなっちゃうんだから!」と大きな声で怒鳴っている。見ると片方の手に園芸で使う

NO.9『事件①“散らかった部屋…”part3』

前々回からの続き。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 翌日、何事もなかったかのように朝を迎えた。昨日のことを母はどのように思っているだろうか。忘れているのだろうかと思ったが、少し衝撃的な事件だったので、母と話すときもそのことには触れないでおこうと思い、私は腫れ物にさわるかのような優しい言葉かけを意識した。母はいつもと変わらない様子で起きてきたが、会話の中でふと思い出したように「あの人にお詫びにいかなきゃ」と昨日お世話になったおばちゃんのことを言ったので、覚えているんだなと思った

NO.9『事件①“散らかった部屋…”part2』

前回の続き。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 その人は民生委員さんを長年されていた方で、現在もお年寄りが日中遊びに来るようなサロンでボランティアをされている。あの人なら何か力になってくれるかもしれないと思い、嫌がる母を引きずるようにそのお宅まで連れていった。玄関に出てきてくれたおばちゃんに事情を話すと「あらお母さん、どうしたの?少し私とおしゃべりしようか?うちでお茶でも飲んで行かない?」と優しい言葉をかけてくれた。その言葉に私自身が癒され、すごく救われた気持ちになったが、母は

NO.9『事件①“散らかった部屋…”part1』

梅雨に入りジメジメした日がつづくとなんとなく気分も重くなる。それに加え母との毎日は事件だらけ。 こんな事件がありました。長くなったので3週に分けて。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 先日、母と向き合うようになってから最大の事件が起きた。母が2泊3日のショートステイから帰ってきた日のことだ。今思うと迎えに行った時から少し様子がおかしかった気もするが、今までもあまり機嫌よく帰ってきたことがないのと、ステイでの記録にも割と落ち着いて過ごせたと記載されていたので気にも留めていなかった

NO.8『混乱』

日々変化する母の様子。過去と現在がごちゃごちゃしちゃう感じ。どんな感じなのだろう。 こんな事がありました。ちょっと聞いて~。 へっぽこ娘 その日母は、デイサービスから帰ってくるなり玄関で大きな声で私を呼ぶので、慌てて下りていくと、スタッフの方が待っていて、「今日は少し混乱しているようなので、お伝えしておきますね」と耳打ちして帰られた。母を見ると何かを恐れているような表情で「○○さんがね、トイレに行ったまま帰ってこないのよ…」と心配そうにそう言った。部屋に入るとベッドの上に

NO.7『覚悟』

母と共に歩む毎日。向き合うのは母だけじゃない、周りの家族とも色々ありまして。 こんな事がありました。ちょっと聞いて~。 へっぽこ娘 母にとって私は二女で、長女の姉と長男の弟がいる。二女の私が何故母と同居しているかと言うと、それなりの事情があってのことだ。それを書いていると長い話になるので割愛するが、それぞれの配偶者も含めて姉弟はとても仲が良いことだけは伝えておこう。高齢になった母のことも姉を中心に3人で相談しながらここまできている。姉家族も弟家族も私が仕事などで大変なとき

NO.6『イライラメーター』

なるべく穏やかに、優しく、温かくって思うけど…。 私のイライラメーターが段々と上昇していくのを感じたある日の出来事。こんな事がありました。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 その日はケアマネさんの訪問日だったので、午前中30分ほど仕事を抜けさせてもらい、母の近況を報告した。デイサービスが休みだった母も楽しそうに話に加わり、イイ感じだったのだが、午後になると母は「私は何もやることがない」と言い出した。「テレビでも見ていたら?」と言って私は仕事に戻ったが、少しすると「縫い物をしよう

NO.5『骨折 part1』

母が骨折した日。非日常の出来事が日常に溶け込んでくる。過去の苦い思い出も引きだされたり。長くなったので3週に分けて。ちょっと聞いて~ へっぽこ娘 昨年末、母は夜中に布団の上で滑ってしまい、次の日足の痛みがひどくなり歩けなくなってしまった。高齢者は足の骨折から入院して寝たきりになり、そのまま施設入所となることが多いと聞いていた私は「母にもとうとうこの日が来てしまった」と思った。まずは医者に診せなければと病院を探すと同時に、それよりも歩けない母をどうやって連れて行けばいいのか