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小規模事業者持続化補助金のウェブ経費についてのこと

各種補助金において「広報費」や「販売促進費」などが計上できる補助金はいくつかあります。

一方で「ものづくり補助金」のように経費算入が認められない補助金や「小規模事業者持続化補助金」のようにウェブサイトやインターネットに係る経費は制限がかかっているものもあります。本日はそうした補助金についてお話します。

基本的に補助金は「新サービス」や「新商品」を開発するために使用する。

近年、新型コロナの影響で急速に事業の方法が「非対面型」になりつつある現状で、ターゲットとする市場にも大きな変化がありました。

したがって、新事業への展開と共に、販促活動を行ってゆかないと。ということで、事業活動の中に「広報費」として一定の経費を算入できるようになっております。

それが「事業再構築補助金」というわけです。

新しい市場に、これまで自社が取り組んだ経験のないサービスを展開するわけですから、当然市場に対してのアプローチを行っていかなければいけませんので、これは必要不可欠というところです。

ですが、

本来、補助金については経費の支出が基本的に設備に関する・・いわゆる「形として残る」ものというのが基本であったりします。

日本の産業に、「差別化」であったり「優位性」といったところで競争力を強化してゆくことが奨励されていて、その課題解決のための設備投資といった意味合いが大きかったのが「経営革新」であり、「補助金」でした。

つまり、「どうやって売るか」という手法ではなく、「フロントエンドの引きのある商品を生み出して競争を勝ち抜いてゆこう」という目的のために出されていたのが補助金であり、過去形で書きましたが、現在もそういった目的で運用されております。

小規模事業者持続化補助金の場合

小規模事業者持続化補助金の場合、設備投資が目的であってもかねてより、「広告宣伝費」や「販売促進のための投資」に使える、使い勝手の良い補助金として小規模事業者・個人事業主・フリーランスに使われてきた補助金でもあります。

これは「小規模な事業者の持続的な成長」という目的がある中で、フロントエンドの商品は既存のもので、いかに販路を開拓したり、商圏を広げていったりする。といったような比較的、短期的な売り上げ目標に直結するような施策に対して補助が出る補助金です。

広報の手段としてもこれまでは、チラシ・展示会やノウハウ獲得のための書籍購入、ウェブサイト構築を含め、会社全体の広報以外であれば比較的幅広く経費に算入が認められてきました。

特にコロナ禍で行われた「低感染リスク型」に関しては、早急に非対面への販売方法に切り替えてゆかなければならないため、ECサイトの構築や、広報手段としてのウェブサイト構築などが認められてきました。

突然行われたウェブサイトに関する経費についての制限

そんな中、小規模事業者持続化補助金のこれまで「広報費」として計上可能であったウェブ経費が分離され、「ウェブサイト関連費」として下記のような制限が加えられるようになりました。

・全体の経費の1/4までの経費算入
・ウェブサイト関連費単体では申請できない

これには様々な理由があるようですが、一番の理由は「効果が出ていない」という意味合いが大きいと思います。

これは結構前から、、2019年くらいからウェブサイトについては問題がありました。当時、某商工会議所が行ったこの補助金についてのセミナーに参加したことがあったのですが、そこでセミナー講師の方が「ウエブサイトに関しては本当に要注意。対して効果が出るとは思えないようなサイトに75万円の支出など本当にあり得るのか疑問だ。」と苦虫を嚙み潰したような表情でおっしゃっていたのが印象的です。

今日び、ウェブサイトは事業を行う上で必須ですし、SNSの活用やMEO対策、SEO対策はもはや「常識」レベルでしょう。

コロナ禍で接触が憚られるようなこのご時世ですし働き方改革が叫ばれる中、リモートでの顧客対応ももはや一般的になってきたといえるでしょう。
では、どうして、こうしたウェブサイトに関する経費に制限をかけるなんて「時代に逆行している!」なんて批判が出るのはもっともです。

ただ、個人的に思うのは、これは結構良いことなんじゃないかと思います。

これまでの小規模事業者持続化補助金でのウェブサイトに関する問題点

これはあくまでも個人的に見聞きした事例であり、一般的なことではないので、ご注意ください。

① 戦略も何もない効果の不透明なサイト構築
② サイトを作ったは良いが、更新されていない
③ 作ったサイトをすぐに売ってしまう
④ コーポレートサイトのような使い方となっている

①については補助金に目を付けたウェブデザインの会社の暗躍が大きいです。補助金を満額もらうために営業をかけ、75万円のサイト構築、もっともらしい事業計画書を書き、凄い集客効果のあるサイトであるとアピールし、出来上がってみればただ本当にサイトを作っただけという事で、それをどうこうする余力は事業者さんにもウェブデザイン会社にもなく、本当に「作って終わり」という感じのサイトが散見されたことにあります。
そしてそれが②にも繋がります。

当然、ウェブサイトは作っただけではなんの効果もありません。
やっぱりウェブサイトもそこに誘導する仕掛けや広報が必要なわけで、どこまで戦略的にそのウェブを使えるかにかかってきます。

結局、作ったはいいけれど、どうしてよいのかわからない。特に更新をするネタも無い。忙しすぎて手が回らない。ということで、優先度が下がってゆき、更新情報が何年たっても「ホームページ公開しました」で止まっているケースも多々あります。
こうしたサイトに往々にして言えるのは、そのサイトで何をしたいのかが明確でない場合が多いのです。
ブログなどを更新してゆき、「コンテンツマーケティング」で地道にSEO対策などをしながら検索順位をあげて、市場に浸透させる集客をするのか、予約機能やEC決済できるシステムなどを搭載してリスティング広告などをバンバンうち、他のSNSなどと連携させて集客特化のサイトにするのかよくコンセプトも決まらないまま、「補助金で資金負担が少なく、流行りでナウくてトレンディなサイトが作れるよ!」という口車に乗ってサイトを作った結果、毎月の保守費用だけを取られるだけの産物となってしまうケースがありました。

③のように補助金で安く作って頑張って育て、高く売るなんていうまさかの事態もあったようで、補助金で作成したサイトは「処分制限財産」にあたるので概ね5年間は事務局の承認がないと処分できない(できても利益分は返金する可能性もある)はずですが、どういうわけかウェブサイトは資産ととらえておらず、報告をしない。なんていうケースがあったようです。

④は本来、経費に出来ない支出で、会社全体の広報活動用には使えないのが補助金でのお約束です。実績報告時だけそれっぽくしておいて、報告終わりで交付された後、求人広告乗っけるとかそんなケースが抜き打ちで検査があった際に実際にあったようで、事務局の苦虫を嚙みつぶしたような表情が、今でも忘れられません。

と、まぁ、上記が理由かどうかはわかりませんが、小規模事業者持続化補助金では「ウェブ」関連の経費に関してはサイトを作るだけでなく、広告もひっくるめて、ネットの海に泳がすものは全て制限を受けることとなりました。
これだけで申請できないのでいわゆる「附属的」な使い方を検討しなければなりませんね。

目的に応じては他の補助金を検討するのも良し

結局、持続化補助金の使い勝手や採択率を見るから、「時代に逆行して!国は何を考えているんだ!」となってしまうのですが、いわゆるウェブを効果的に使うのならば、もっと適した補助事業もあるよという話なのです。

例えば、業務効率化やデジタル化の波に乗る、そしてきちんとした決済機能を搭載したECシステムの導入であれば、「IT導入補助金」が最適ですし、目的に合致しております。

また、まったくの新規事業を始め、スタートに係る広報や販促活動を行わざるを得ない、そこまでが事業ということであれば「事業再構築補助金」を事業と一体で申請検討するのが良いです。

ただここまで言っても「いや、美麗なコーポレートサイトを作りたいんだ!なんか補助金あるだろ!」と言われることも多いですが、もともとコーポレートサイトは補助金では作れないですし、補助金で作らないまでも、今や結構必需品で行政書士事務所ですら作っているのですから自社のテーマに沿ったサイトを自分で好きなように作るのが一番なんですよ。

では、結局どんなことに小規模事業者持続化補助金を活用するべきなのか

最初に言った通り、「フロントエンドのサービス、商品を企画する事」が第一です。広報費(チラシや展示会など)に使うにしろ、目玉となる商品やサービスを前面に押し出しますよね。
例えば、チラシを見てきた人はビール一杯無料とか、展示会ではそもそも新しい製品が出なければ何もすることがないじゃないですか。

展開としては、自社の強みはこだわりのあるビールです。この度、付き合いの長い蔵元から「女性でも飲みやすい低糖質なビール」を仕入れることができそうです。この機をとらえて、これまでターゲットとしていなかった女性にもPRできるように新メニューの開発と広報を行います。経費はメニュー広告のチラシとインスタ広告を近隣にお住いの女性に向けて発信します。

こんな感じです。あくまで例えばですよ。例えば。

ウェブ経費は上記の場合「インスタの広告」です。
効果検証が厄介になり経費として難しいのが、インフルエンサーを使ってのマーケティングですが(やるのであれば、工夫が必要かと思います)、純広告の出稿であれば1/4の経費で十分かと思います。

結局、ウェブを作ることで集客や持続的な成長の課題について解決するというのはひたすらに飛躍ですから、結局、先ほどのように「ウェブをどうやって使うか」が重要なのではないかなと思います。

制限は戦略のチャンス

今回は小規模事業者持続化補助金のウェブ経費についてお話ししました。
ウェブというのはあくまでも手段であるということですが、正直、「ウェブ広告まで制限する事なくね?」と思う節もちょっとあります。正直。

いかにウェブで広告効果というか、「何を」「誰に」訴求してゆくか。
限られた予算とリソースを効果的に使ってゆく。
小規模事業者にはとにかくフットワークとバイタリティが武器となるので、こうした工夫とアイディアを充分に活かした戦略をよく練ってゆく。
まさに「持続化」補助金というわけです。



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