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時をかける少女(アニメ)の思い出

ということで、今回はこのアニメの思い出を語っていこうと思う。

(C)「時をかける少女」製作委員会2006 

今更説明するまでもないが、あの細田守監督の出世作となった今作。
最初は宣伝も少なく、そもそも公開している映画館もごく少数というスタートだった。しかし口コミからじわじわ売れていき、レビューサイトでも軒並み高得点。

こりゃすげぇや!とアニメ映画通のオタクがこぞって大絶賛したのであった!とまぁこんな事を書いていながら自分的にはまったくノーマークだった。それどころかアニメ映画すら最後に見たのが千と千尋の神隠しという興味なしっぷり。

そんな自分がなぜ、本場のテアトル新宿で見たのか…そう、あれはまだ高校生の頃だった。うだるような8月の天気の中、俺は東京で大学生活をしている兄の元へ遊びに行った。

当時兄とは特別仲が良いというわけでもなかった。男兄弟なんてそんなもんだろう。あの時は何かのついで...みたいな感じで一人で向かったと記憶している。東北の山奥から東京へ。兄からのリクエストがあった地酒一升瓶をバッグに入れて(野球部がかけてるような横型のやつ)俺は新幹線で東京に向かった。

兄は町田に住んでいるらしい。一升瓶の重さが肩にずしんとのしかかるのを感じながら、俺は兄のアパートへたどり着いた。午前中は上野にある科学博物館に遊びにいった。昼。中庭みたいなところでジュースを飲んでいると兄が「時をかける少女っていう映画見に行かないか?」と言った。

「なにそれ?」
「映画」
「面白いの?」
「面白い。らしい」

という脳死会話をして、午後は映画鑑賞ということになった。
時をかける少女...

きっとSF物で、サイバーパンクな世界観だろう
主人公の少女が巨悪と対決するために時を戻して戦うのかな?
額にはゴーグル的なやつがついてるんだきっと...


ジュースを飲みながら、俺の頭の中ではまだ見ぬ映画のイメージが膨らんでいった。

新宿到着。

(画像は最近撮影されてたグーグルマップのだが、当時とはだいぶ変わったように思う)


映画館の付近まで歩いていくと、時をかける少女のポスターが貼ってあった。それを見て俺は思わず低い唸り声をあげた。

(C)「時をかける少女」製作委員会2006 


な、なんだこの青春っぽいアニメは!?

SFとは程遠い、どう見ても現代の女子高生が笑いながら夏の空へとジャンプしている。自分の中でのイメージと大きく違い、そして炎天下の日差しも相まって思わずめまいがした。

まったく想像と違うじゃないか...!と驚く俺。まぁいい。とにかく歩いて疲れたので早く映画館に入ろう。そう考えていた俺はさらに驚くことになる。
なんと、映画館の前には行列が出来ていた。

えっ...?
東北の山奥に住んでいた俺の感覚では、映画館が混むというのが理解出来なかった。せいぜい公開初日だろう。しかしこの映画は、公開してからそれなりに経っているはずなのに(兄情報)なんと行列が出来ていたのである。

そんな馬鹿な...

開場アナウンスが流れると、その場のみんなが一斉に拍手をした。ヒューヒュー!というような感じである。そんな馬鹿な!?祭りか!?なんだこれは!?と兄を見ると、彼もまた困惑しているようだった。

妙な盛り上がりと一体感の中、映画鑑賞へ。内容はご存知の通りなので割愛しよう。いや、簡単に説明しよう。


マコトという元気少女が偶然タイムリープする能力を手に入れて好き放題する。人間関係も都合よくやり直していたらなんかタイムリープ出来る上限回数があるのー!?やっべー!最後は告白してきた友達のちあき君の気持ちを受け入れたけど、ちあき君は未来人で元の世界へ帰っちゃった。私、この夏の出来事は忘れないから!



という内容である。いや、はしょりすぎた。ただ大まかにいえばこんな感じで合ってると思う。自分的には、映画を鑑賞しながら
(マコトの声がなぁ...)
(女1男2でつるむかな?)
と思った。逆に言えば、そこ以外は引っかからなかったし、本当に面白かった。これが青春映画か!と感じた。エンドロール中も誰一人立ち上がる事なく、終わってからまたみんなの拍手が鳴り響いた。

今なら分かる。このアニメの素晴らしさを。
ありがとう!みんなと一緒に見れて最高だったぜ!

後ろから兄の「そんなでも無かったな」という呟きを無視しながら映画館を出ると、また強烈な真夏の日差しが降り注いだ。ミーンミーンとセミがせわしなく鳴いている。不思議と不快感は無い。それどころか心地よいくらいだ。

あのアニメの登場人物は、限りある一夏を精一杯生きた。
自分も映画館を出ることで、彼らと同じ夏を生きているんだという共感と少し切ない気持ちになった。


夏公開。そしてこの劇場。きっとこの映画のレビューが高いのは、内容もさることながら見る側の環境もあるのではないだろうか。というわけで、今回の思い出話はここまでにしよう。


あと、一つ付け加えるのなら。
実家に帰る前に兄と寿司を食う予定だったが、電車の人身事故の影響で時間が無くなり、駅で購入したカツサンドになった。なぜかこの映画と同じくらいその事を覚えている。
食い物の恨みは恐ろしいですね。

おわり。


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