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教師人生

作家はフランク マコート。
ニューヨーク生まれの、アイルランド系アメリカ人。
軍人として世界大戦を生き残った彼は、大学で教師になる資格を取得。
教室での生涯を書いた作品がこれだ。

アイルランドよりもアメリカにいた期間のほうが長いのに、アイルランド訛りが抜けない。
そんなマコート先生が教えるのが英語。

アメリカ人が英語を習うのは、へんな感じがするけども、日本における国語にあたるようだ。

いくつもの高校やカレッジで、学校で教鞭を奮うが、最初に就いたのが職業高校。

英語のような一般科目より、実習のほうが優先される学校だ。生徒の多くは、つまらない授業が嫌いで、いつもで教師を値踏みしつつ、限られた時間をダメにしようと企んでいる。
座らないスペイン人、後ろ向きでおしゃべりをやめない黒人女子。窓のほうを向いて関心を示さないヒスパニッシュ。

雑多な人種と、複雑な家庭環境のオンパレードの教室を、1日に5つ受け持つ。
アメリカの学校はドライだ。失敗した教師は、次の学期は来なくていいと首になる。
生徒の人気と、学校側から信頼を、同時に勝ち取る必要がある。

人と話すことが苦手なマコート先生。主導権を得ないと、まともな授業を続けることができない。

初めての授業。こっそりと監視する教頭。生徒のサンドイッチが飛んできて床に落ちる。

いきなりの混乱。迷いに迷ったマコートはどうしたか。
彼は、それを拾って食べることに……。

映画にもなった「アンジェラの灰」作家の半生。
訳された文章なので、慣れるまでは読みにくい思いをします。

映画でもアメリカの授業風景が描かれることがありますが、日本と違って自由奔放。平気で大人を批判するし、気に入らない教師は相手にされないとは、怖い国です。

授業として生徒たちに語る形式で、マコートの人生が、ブロックのようにくみ上げられていきます。教室でおこる騒動の臨場感は、新鮮で、その場に居合わせた気分にひたれます。

本人の人生も暗いものですが、生徒たちやその親ら生きざまも、なかなか、複雑で考えさせられます。

飛びはねるようなセンテンスで、暗さを笑いに変えてしまえるのは、この作家の技量なのでしょう。

授業の進めかたは、教師しだい。気質とやり方が合わないと、教師人生は長くもたない。
苦労と試行錯誤が実らせたマコートは、人生の後半、自分のやり方をやっと身に着けます。

それはもう、手をたたきたくなるほど、型にはまらない授業で(本人もどこに転ぶかわかってなかったが)クラスを完全に支配下においてしまう。英語創作の授業なのに、料理本レシピで演奏……なんて、どんな教師だって実行はしません。

アメリカ社会の縮図を、教室という角度から覗くことができた一冊でした。

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