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NAIST(情報領域)に落ちて京大情報学研究科システム科学コースの院試に合格した話

こんにちは。YKです.
今回はタイトルの通り,2023年の7月,8月に受験した大学院試験でNAISTの情報領域に落ちて京大情報学研究科システム科学コースに合格した話について,時系列で出来るだけ細かくまとめたいと思います.
前提として自分の状況をまとめておくと

・京都大学工学部工業化学科4回生(昨年度は休学していたので5年目)
・大学院で化学→情報へ専攻を変えようとしている
・化学の道に進もうとは全く考えていなかったので大学の成績は悪い(先に言っておくとこれがNAISTに落ちた原因の一つっぽい)
周りに同じ状況の知人はおらずインターネットからしか情報は得られなかったため苦労した

こんな感じです.なので,自分と同じく大学院から情報系に変えようと思っている人に参考程度に読んでもらえたらと思います.
少し過程が長くなってしまったので,「とにかく結論が知りたいんだ!」という方は目次の「前提情報」を読んだ上で,結論まで飛んで読んでみてください.使用した参考書等もそこにまとめています.


前提情報

それぞれの院試の項目を先にまとめておきます.

  • NAIST

    • 小論文90/数学(微積,線形)30/英語30/学部成績50

  • 京大情報学研究科システム科学コース

    • TOEFL 100/数学(微積,線形)120/専門(確率統計,複素関数論,制御工学,信号処理から2科目選択)200/面接150

ちなみに大学では微積,線形は単位を取得していましたが,専門科目は一つも履修していませんでした.

2023年になるまで

志望校としてはNAIST・京大・東工大あたりが候補だったのでいずれにせよTOEICのスコアが必要でした.(※京大はコースによってはTOEFLしか受け付けてないところもあるので要確認)
本格的な院試の対策は年明けから始めたらいいだろと思いこの時期まではだらだらとTOEICのスコア取得に向けて動いていました.
スコアの変遷を以下にまとめます.

  • 2021年

    • 9月:695

  • 2022年

    • 7月:640(久しぶりに受けたら最低の点数を取り少し焦りを感じて勉強始める)

    • 9月:760

    • 10月:745

  • 2023年

    • 1月:765

    • 2月:790

    • 4月:820(内訳:R375/L445。これでスコア提出)

提出したスコアをみても分かるように,リーディングよりもリスニングの方がかなりスコアが上がりやすいです.
リスニングの問題は、とにかく「問題を全てシャドーイングで追いかけられるようになること」を目指せばスコアアップに繋がると思います.
スコアの上がり方(特に2023年1月から4月にかけて)をみても分かるように,短期間で集中的にやれば上がると思います.面白くないですが.

2023年1~3月

  1. NAISTの数学対策開始

    1. 微積で出る教科書が指定されていたので,その教科書の出題範囲を1月から2月までに1周しました.

    2. 線形代数も同様に指定されていたので3月から4月1周目にかけて1周しました.

  2. 2月末のNAISTのオープンキャンパスに参加

    1. NAISTの院試は小論文が非常に重いので,どこの研究室に行きたいかは早めに決めてコンタクトを取るのが賢明です(落ちましたが).

  3. 3月の東工大の院試説明会に参加

    1. 外部からも多く受け入れている印象を受け,いいなと思った記憶があります.

  4. 上述のTOEIC対策継続

2023年4月

  1. NAISTの線形代数の教科書を1周終えました.

  2. 京大情報学研究科システム科学コースの研究室訪問

    1. 京大で「ここめっちゃ行きたい」と思ったシステム科学コースの研究室を見つけ,その研究室の教授に連絡して研究室訪問をしました.実際に研究室訪問をしてみてもその考えは変わらなかったので,システム科学コースを第一志望にしました.それと同時に,システム科学コースではTOEFLしか受け付けていないので対策を始めました.

  3. NAISTの研究室インターンシップに参加

    1. NAISTの研究室にコンタクトを取り,3週間弱ほどインターンシップとして参加させてもらいました.この期間で小論文を書き上げましたが,中の上ぐらいのクオリティには仕上がったように思います. 逆に言うと,自分のような非情報系出身者はインターンに参加しなければクオリティ高く小論文を仕上げるのは難しいように思います.

2023年5月

  1. TOEFLスコア取得:79(R:26/L:17/S:16/W:20)

    1. 4月に受験を決めてから2週間ぐらいしか準備出来ませんでしたが,TOEICでそこそこ対策していたのもあり合格するのに足を引っ張らないスコアを取得できました.

  2. 東工大のオープンキャンパスに参加

    1. 実際に研究室を訪問しましたが,「ここだ」と思うところが見つからないまま終えました.6月の出願締め切り直前まで迷いましたが結局出願しないことにしました.

  3. NAISTの小論文仕上げ(~5/23)

  4. 京大の専門科目として制御工学と複素関数論の教科書をそれぞれ1周しました(~5月末)

    1. どちらの科目も大学で履修したことがなかったので,0からの勉強でしたが,Youtube等で公開されている動画を視聴してとっかかりを掴んで勉強していました

    2. 制御工学

      1. 他のシステム科学コース院試合格体験記等でも言及されていますが,フィードバック制御入門 (システム制御工学シリーズ) 単行本 – 1999/2/1杉江 俊治 (著), 藤田 政之 (著) を使用して5月中に1周しました. また,以下の大阪大学の研究室がフィードバック制御入門 (システム制御工学シリーズ) 単行本に沿って解説してくれている(動画:制御工学 0610 前半のスーパークイック復習)ので自分のような初学者は一連の動画を視聴しながら勉強するのが良いと思います.

    3. 複素関数論

      1. 工学系学生のための 複素関数攻略への一本道を5月末までに1周しました.複素関数論はヨビノリが留数定理まで動画でやってくれていた(複素関数論の動画リスト)ので,それを視聴しながら進めました.

2023年6月(勉強時間:平均約8h/日)

5月までで一通り全科目の範囲を1周出来たので演習中心に移行しました.

  1. NAIST,京大に出願

  2. 試験対策

    1. 微積(5月末~6月8日で一周)

      1. 演習ではマセマ演習を使用しました. 難易度としては然程難しくなく,院試対策の演習の初手としては適切だったと思います.

    2. 線形代数(6/16~6/23で一周)

      1. 微積と同様にマセマ演習を使用しました.これも院試対策の演習の初手としては適切だったと思います.

    3. 制御工学(6/9~6/15で一周)

      1. 演習は先述の「フィードバック制御入門 (システム制御工学シリーズ)」ではなく,「演習で学ぶ基礎制御工学」を最初は使用していました.題名通り演習中心なので,教科書的な説明を超えて自分の理解が深まるのでおすすめできます.その上で「フィードバック制御入門 (システム制御工学シリーズ)」の演習問題に取り組むのが難易度的にも良いと思います.

    4. 複素関数論(5月末~6月8日)

      1. 先述の工学系学生のための 複素関数攻略への一本道の演習問題を,微積の勉強と並行して進めました.

    5. 6/24以降~NAIST受験(7/4)直前

      1. 京大の受験科目の演習を一通り終えたのでNAISTの受験に向けて微積,線形中心に演習しました.やった内容としては

        1. 先述の微積,線形それぞれマセマ演習を,2周目は特に1周目時にマークしておいた間違えたところや復習が必要だと感じたところを重点的にやりました.

        2. マセマ以外には「詳解と演習大学院入試問題〈数学〉: 大学数学の理解を深めよう」に取り組みました. この教材には微積,線形,複素関数論が含まれており,様々な大学院試問題を分野毎に解説付けてくれているのでマセマの次に取り組むには適切だったと思います.ただし,微積に関しては数学専攻の問題も入っていたりするので,そういう類の問題は非数学専攻からすると難しく感じることもありますが,そういうのは一旦スルーしても良いと思います.

        3. ネットに落ちていたNAISTの過去問を見つけて解いていました.

      2. NAISTの面接対策として想定問答集を自作しました.

2023年7月(勉強時間:平均約10h/日)

  1. NAIST受験@7/4

    1. 数学0完

      1. ちょい癖があり,12分しかないのに頭が真っ白になって撃沈しました.面接も終わった後に考えたら,実はそんなに難しくないことに気付いて余計に落ち込んでました.ちゃんと指定された教科書で演習しましょう.

    2. 面接

      1. 小論文がそこそこ深いところまで突っ込んでいたからなのか,「なぜNAISTなのか」「なぜ専攻変えるのか」などの基本的な質問はなく終始小論文に関する質問をされました.特に詰まることなく問答できて耐えていたのではないかと思います.

    3. 結果

      1. 落ちました.敗因は指定教科書の問題で演習するべきだったのと,学部成績もうちょい取るべきだったことだと思います.「まぁなんとかなるやろ」と思っていた自分が甘かったですね.

  2. 切り替えて再び院試対策

    1. NAIST受験で微積,線形を重点的にやっていたので制御工学,複素関数論の演習に取り組みました(~7/10).

      1. 制御工学

        1. 演習で学ぶ基礎制御工学」の2周目と「フィードバック制御入門 (システム制御工学シリーズ)」の演習問題1周目に取り組みました.

      2. 複素関数論

        1. 詳解と演習大学院入試問題〈数学〉: 大学数学の理解を深めよう」の複素関数章に取り組みました.問題難易度としてもちょうど良く,一通り理解した上で取り組むにはちょうど良いと思います.

    2. 過去問5年分の演習と各科目の復習の並行

      1. 過去問5年分の演習(7/11~7/23)

        1. 数学/専門それぞれ時間を測って取り組みました.この時点で大体数学も専門も平均で6割ぐらいでした(問題は情報学研究科のホームページから見れます).

      2. 各科目の復習

        1. 制御工学

          1. フィードバック制御入門 (システム制御工学シリーズ)」の演習問題の2周目に取り組みました.(7/12~7/15)

        2. 複素関数論

          1. 実積分へ複素積分を適用する問題はAkiyaMathさんが公開しているこちらのPDFで補いました.半分くらいの問題がAkiyaMathによってYoutubeで解説されており,また問題の幅も広くこれをやっていれば複素積分は怖いものなしになるのではないかと思います.余談ですが,工学系学生のための 複素関数攻略への一本道ではジョルダンの補助定理を用いた解説がなされていたりしますが,他の教材では見かけなかったですし,積分路次第では使えない可能性も十分あるので,ジョルダンの補助定理を用いずに不等式で評価する答案の書き方に慣れる方が無難かもしれません.(7/12~19)

          2. 詳解と演習大学院入試問題〈数学〉: 大学数学の理解を深めよう」の複素関数章の2周目に取り組みました.(7/12~16)

          3. 等角写像の問題がそれまでに使用していた問題集に全く含まれていなかったので,「演習大学院入試問題[数学]II」を使用して取り組みました.(7/20~23)

        3. 微積/線形

          1. これまでに使用したマセマや「詳解と演習大学院入試問題〈数学〉: 大学数学の理解を深めよう」の復習をしました.(~7/24)

        4. 保険で確率統計の対策も始めましたが,間に合わないことを悟り途中でやめました.間に合わすには6月ぐらいから始めるのが良いと思います(当たり前).

    3. 直前の2週間(7/24~8/6)

      1. 大体この時点でほとんどやらないといけないと思っていたことは終えて,感覚としても悪くないなという感じでした.

      2. 直前は定理の証明やそれまでに使用した問題集で印をつけたところのやり直しをしていました.

        1. 特に複素関数論は定理の証明もやっておくのが良いと思います.

      3. 微積,線形

        1. 難しい問題にも頭を慣らすために,「演習 大学院入試問題[数学]I」の微積,線形章を急ピッチで取り組みました.問題数も多く,難易度的にも「詳解と演習大学院入試問題〈数学〉: 大学数学の理解を深めよう」の次に取り組むのに適していたと思います.

本番(8/7,8)

  1. 筆記

    1. 数学:線形 8割3分/微積 4割~4割5分 (希望的観測含む)

    2. 専門:制御工学 7割+α/複素関数論 7割5分 (希望的観測含む)

  2. 面接(1人6分)

    1. 志望動機説明書にA4×2枚分いっぱいに書いて提出したので,それに関する口頭説明で終えました.

    2. 余談ですが,面接で61人中17人欠席してることが当日の出席確認で分かったので,少し安心しました.

    3. 当日はスーツが8割ぐらいでした.

  3. 結果

    1. 無事第一志望の研究室に合格しました.後がなかったので,とにかく合格出来て良かったです.

※後日成績が分かり次第追記するかもしれませんし,しないかもしれません.

結論(申し送り)

・NAISTを受ける場合,学部成績は良いほど良い(当たり前).
・英語のスコアは出来るだけ早く取得する.取得する際にも,出来るだけ短期集中で取りきってしまうのが吉.
・行きたい研究室の候補は早めにコンタクトを取り,院試のアドバイスをもらう.
・NAISTを受験する場合,非情報系専攻の人はインターンシップに参加するのが吉.
・京大情報学研究科システム科学コースを受験する場合においては,自分が使用した以下の教材は間違ってないと思う(取り組んだ順)
[微積]
マセマ演習
詳解と演習大学院入試問題〈数学〉: 大学数学の理解を深めよう
演習 大学院入試問題[数学]I
[線形]
マセマ演習
詳解と演習大学院入試問題〈数学〉: 大学数学の理解を深めよう
演習 大学院入試問題[数学]I
[制御工学]
演習で学ぶ基礎制御工学
フィードバック制御入門 (システム制御工学シリーズ)
[複素関数論]
工学系学生のための 複素関数攻略への一本道
詳解と演習大学院入試問題〈数学〉: 大学数学の理解を深めよう
こちらのPDF(複素積分)
演習大学院入試問題[数学]II

長くなりましたが,以上となります.
そこそこ細かく書いたつもりなので,参考になったら幸いです.
最後まで読んでいただいた方々,ありがとうございました.



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