読書記録:ブラック職場

笹山尚人:ブラック職場(2017,光文社新書)

今回は労働に関する書籍としてブラック職場という本を読みました.近年労働環境に関する話題が注目されていることもあるので,日本の働き方について考えながら読みました.

この本を読んで感じたことは,以前から感じていたことであるが,日本の労働環境の問題である.その問題点の一つが労働者も使用者も労働法を知らないという点である.

私たちには,労働法を学ぶ機会がなかった.ただ,それだけのことである.

pp.25

確かに,これまでの学校生活で労働法について学んだ記憶がほとんどない.中学の社会で労働3法を学びはしたが,その内容についてはあまり触れてはいなかったと思う.義務教育で労働法について学ばずに,労働者となることが当たり前になっているということは問題があると感じた.
そして,義務教育で学ぶことのなかった労働法について労働者になってから学ぼうとする人はほとんどいないと感じる.それは,そもそも労働法について学んでこなかったため,労働法について興味もなく,仮に学ぼうと思ったとしても,どのように学べばよいか分からないためである.
また,日本の特徴として「現状維持であれば問題ない」と考える人が多いことも労働法を学ぶことから遠ざけている要因でもあるのではないだろうか.今よりも給与が下がらない(=現状維持)のであれば,長時間労働などの世界的に見れば異常な労働環境においても,何も気にせずに働いてしまうとういう人が多いのではないだろうか.そして,長時間労働を終えて家に帰った後に労働法について勉強する余裕などなくなっている.
このように労働法について労働者や使用者が知らないという日本の現状を変えていく必要があると感じた.

次に,本書でも指摘があるが,労働者と使用者が守れていない労働法について,十分に取り締まることができていないという問題である.日本には労働法が存在し,労働法に違反している事業者等を取り締まるための労働基準監督官が存在してはいるものの,その数が圧倒的に不足している.その結果,労働法に違反していても取り締まることができていないため,労働法に違反している状態が長年続いている可能性があるという問題が発生している.

この指摘によると,「労働基準監督官数は3000人程度」であり,この中には現場に出ない管理職員なども含まれるので,「日常的に臨検監督,申告処理,司法実務(捜査)等に従事している監督官は,その一部にすぎない」「この人数は,ILOが定める労働基準監督官の配置基準(労働者1万人に1人)を大きく下回る」とのことである.

pp.145

このような労働監督官の人手不足によって,労働法という労働者を守るための法律の目的が達成できていない状態になっている.これでは,労働者を守るための労働法を設定したという,労働者を守る「それっぽい形」だけ用意されているだけで,実際に労働者を守る環境が整備されていることにはならい.
「それっぽい形」だけ用意されているのは,労働法という法律だけの問題ではない.例えば仕事のプロセスに無駄な部分(上司の判子を順番に押すなど)が多くあるのにも関わらず,それに目を向けずに,残業時間の削減を目指すといった働き方や,労働法の残業時間に縛られながら仕事をするといった目的と手段が逆になった働き方など多くあると感じた.
このような働き方を変えていかないと,いくら法律を法律を変えたとしても日本の労働環境は改善していかないと感じた.

そして,本書で取り上げられていた労働に関する問題は,実際に日本社会で発生している労働環境に関する問題の氷山の一角ではないかと感じた.労働法を知らない多くの労働者と使用者が,そこまで問題としていない違法な労働が,実際には多々あるのではないだろうかと感じた.そして,そのような労働環境を「おかしい」と主張するためには,その「おかしい」部分に気づく必要がある.そのためにもまず私たちは労働法を知る必要があるのだと感じた.

今回は少し短めですが,「ブラック職場」という本から,日本の労働環境について考えてみました.労働者であるにも関わらず,労働法を知らない自分に気づくことができました.そして,現状維持で満足せずに,常に周囲の状況について観察し,色々考え続けていきたいと感じました.

#読書記録 #ブラック職場 #労働問題

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