読書記録:誰が「働き方改革」を邪魔するのか

中村東吾:誰が「働き方改革」の邪魔をするのか(光文社新書,2017)

今回,この本を読んで感じた物事の本質を知ることの重要性について考えたことを本書からの引用と共に書いていきたいと思う.

最初に,本書の序章にあった以下の文章について考えさせられた.これは,自分も含め多くの人がやってしまっていることだと思うが,大事なことを見なかったことにしてしまうことである.正直このように対応する方が楽であるので,そのような対応をすることが多くあると思うが,これでは更なる課題が発生し,最終的な労力やコストは大きくなってしまう可能性がある.
このような状況から脱却するために重要であることだと感じた,現状を知ること,自分を知ること,主体的に行動することの3点について考えてみた.

もともと改善力に長けた国民であるにもかかわらず労働力改善策で力を発揮できなかったのは,歩みの過程で"本当は大切なのに手をつけると大変だから看過してきたモノ"があるからではなかったか.
~(中略)~
真の改善は,これまで日本人が成功をおさめていたのと同じように,現実を直視し,表面を見てきただけでは分からない内側に潜んだ"本当は大切なのに手をつけると大変だから看過してきたコト"をつかみとり,マイナス要素,他者と比較して負けている短所をえぐり出して,ひとつずつ問題を克服してくことで実現する.

pp.26-27

現状について知る

まずは,現状について知ることである.本書でも以下のような記述があり,時代の変化に対応することが求められていることが分かる.そのためにも,まず現状について知る必要があると感じる.

パネラーとして登壇した6人の大手企業経営者のひとりが,自社の働き方改革のひとつに「急激に変化していく時代に対応できる人材の育成」をあげ,「今の20歳代,30歳代の人たちが,どれだけダイバーシティの感覚をもって自分たち自身が変われるかが,10年後に自分の企業が残っていけるか(どうかを左右する)いちばん大きな課題だと思っている」と語っている.

pp.51

時代の変化にまず気づく.これは普段から意識していないと意外と難しい事である.それは,常識だと考えられていたことが本当に正しいのかを思考する必要があるからである.そして,常識だと思われていたことを疑って思考することで,日本社会において常識だと思われていることでも,異常であると考えられる部分が多々見えてくることに気づくのではないだろうか.

例えば,日本の残業に対する考え方やシステムについて,本書でも記載があるが,日本の残業時間は法律で上限を定めているものの,労使間で協定を結ぶことで合法的にその上限を上げることが可能となってる.これは諸外国と比較できないほど長い労働時間を合法としている.このような労務環境で果たして生産性は上がるのだろうか.

日本でも議論されているインターバル制度ではあるが,なかなか立法に至らないのは抵抗勢力の存在が大きいからである.残業を前提とした業務体制を整えている企業にとっては,現行の「三六協定」を基盤に据えていたほうが何かと都合がいいのだ.
~(中略)~
労働に期待する総力を,限られた労働者でまかなわざるを得ない企業にとって,新たな残業対策の立法は労働体制を根底から揺るがす一大事であり,それだけにおいそれと認めるわけにはいかないのだ.

pp.65

次に,右にならう習慣である.本書でもいくつかの事例が紹介されているが,例えば労働時間に関して,労働時間の長短のみで成果が決まるわけではないが,労働時間の短い人や,上司よりも早く帰宅する人は,仕事をしないイメージがついてしまう.これは,以前から労働時間と成果の関係をこのように捉えていた文化を何も考えずに引き継がれていたことが原因にあると考えられ,そのように根拠もなく不合理な伝統を断ち切っていく必要があるのではないだろうか.このままでは,赤信号をみんなで渡って車に轢かれるのと同じになってしまうと思う.

当然のことながら,仕事は労働時間の長短だけで成果が決まるわけでない.なら,早帰りをする従業員はすなわち"仕事をしない人"とイコールで結ぶのは不合理なはずである.なのに,一律,"仕事をしない人"とイメージしてしまったのは,みんながそうしてきたし,自分たちもそれにならわなければならなかったからである.

pp.90

そして,現状を変えていくことをやめて現状維持に向かっている点がある.本書でも記載があるが,日本社会では現状維持できれいれば問題ないという考えが多く残っているが,現状維持を目指していれば現状を維持することもできないと思うし,この考え方を変えていく必要があると感じる.大学時代とある教授が,「現状維持は退化だ」と言っており,まさにそうだと感じた.現状を維持することを目標としている限り,その現状を超える可能性もないし,周囲が進化していくことで,相対的に退化していく.そのため,現状維持を目指すという現状を変えていく必要があると感じる.

「現状維持で精いっぱい」という方が日本社会にあふれていることも知っている.だからといって,忙しいことを言い訳に「しなければならないこと」をいつまでも放置したままでいては,私たちの暮らしぶり,働きぶりはいつまでたっても改まることはない.現代社会において,変わらないことは後退するのと同じである.放っておけば,現状はますます悪くなっていくのだから.

pp.177

自分について知ること

このような現代の日本に生きる人間として,日本の現状を知るとともに自分について知ることも重要であると感じた.
現状維持を目標に進みゆく社会で,社会の空気に流されて右にならって生きていくのではなく,少なくとも自分だけはその流れから脱却して生きるという気持ちを大切にしてきたいと感じた.本書でも記載のあるように強くないと生きていけない社会において,強くありたいと思うし,そのためにもまず自分について知る必要があると感じた.

一方で,「強くなければ生きていけない」ことも確かなのである.

pp.150

そして,自分の能力や社会の課題などを把握した上で,自分に合う働きを行っていく必要があると感じた.

そのために,やらなければならないこととは.
・「自分が可能な働き方や提供できる能力」と「企業が求める労働力,アウトプット」のマッチングの模索
・模索で導き出した結果を企業に提案・交渉」

pp.200

多忙で時間的ゆとりがなく,自分を育てることができないと嘆く方がいるのなら,まずは自分に宿る"個人に潜む多様性"を浮き彫りにしておくことである.そしてしかるべき時が来た時に,"個人が育む多様性"につなげていけばいい.

pp.181

主体的に行動する

このように現状や自分について知ったら,どのように行動するかが重要である.そこで自分に足りないことは主体的に行動することだと感じた.
日本では新卒一括採用,年功序列という考えが浸透しており,企業に任せておけば,理不尽なことはあるかもしれないけど,それなりに過ごすことができるシステムが構築されていた.しかし,そのようなシステムの終わりも見えてきており,主体的に行動することの重要性は増しているのではないかと感じた.
本書でも記載があるように,自分の生き方を決めるのは自分であるから,「指示待ち人間」からの脱却が求められるのではないだろうか.そして,未知の可能性に挑戦し続けることが重要ではないのだろうか.

休息をとるにせよ,学ぶにせよ,それを決めるのは自分自身である.自分を育てるのも自分自身だし,培ったスキルや人脈を活かすのもまた個人の裁量で決まってくる.

pp.170

趣味を活かした仕事を作れば,予想以上の苦労を抱え込む結果を招くこともあるだろう.だが,その仕事は,あなたの造詣の深きをもってして成立する仕事である.

pp.173-174

その際に重要なことは,周囲について把握し,置かれた環境の中でも主体的に行動し続けることだと感じた.会社に守ってもらえる時代ではなくなっていく今後において,自分自身が主体的に行動し続けていくことが必要であると感じた.

~(中略)~つまりはぬるま湯である.そうした環境で働くな,ということは決して言えない.だが,これもまた本書が繰り返しているように,ぬるま湯で働き続ける自分をサポートするのもまた自分自身である.

pp.224

今回は,働き方改革から物事の本質について把握すること,そしてこの時代における生き方について考えさせられました.自分自身で学び,思考し,主体的に行動できる人間になりたいと感じました.

#読書記録 #働き方改革 #現状維持

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