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2023年6月&7月

507.村の奇譚 里の遺風 (筒井功/河出書房新社)



『村の奇譚 里の遺風』は静かなる民俗学名著なのだ

目的不明の石室の秘密、贋金を作る山奥の村、サンカの現在、軒先に猿の手を吊るす地域、数千の墓が並ぶ町

考察のロマンと失われゆくものの哀しさを兼ね添えた極上エッセイは、小説を軽く凌駕する面白さ!足を使って集めた迫力の奇譚集。資料にも〜



508.火蛾 (古泉迦十/講談社文庫)

23年の時を経て蘇った幻のミステリ『火蛾』を改めてご紹介〜

12世紀イスラム。夜毎現れる影との宗教対話と、岩山の天蓋で起きた殺人事件が辿り着く先は――

本格の端正さを湛えつつもアンチミステリの如く反転を重ねる物語構造。読むことで完成する儀式のような魔術的陶酔感。神とは。言葉とは。孤高の傑作!


509.モダンマジック (ドナルド・マイケル・クレイグ/国書刊行会)

本当は魔術師になりたかった貴方!最強魔導書『モダンマジック』がついに発売したのだ

現代社会において本気で魔術を学ぼうとする方必読の世界的ベストセラー大著。参考書さながらの平易な解説&段階的なワークで、本当に「使える」儀式魔術のノウハウを網羅

本も業者も玉石混合の魔術界隈で唯一信じていい1冊!1万円はマジで安い!

英国でアシッドハウスが興った頃なぜかクロウリーが流行したと聞くが、現代魔女・ウィッカをはじめ、魔術って再び熱のあるカウンターカルチャーになってると思うのだ

スピリチュアルだと構えなくても、禅みたいに丁寧に生きるツールにしたり、世界や自意識と向き合う切り口として面白いかと〜


510.【「新青年」版】黒死館殺人事件 (小栗虫太郎/作品社)

【「新青年」版】黒死館殺人事件こそ正真正銘のアルティメットver.、シン黒死館なのだ

あの虫太郎の衒学迷宮を誤記まで含めて欄外リアルタイム解説!鬼気迫る2000個弱の注釈は、半生を黒死館逍遥に賭けた研究者が築き上げたもうひとつの大伽藍

誇張抜きで一生読める最狂傑作!字も大きくて嬉しいのだ〜



511.空想地図帳 架空のまちが描く世界のリアル (今和泉隆行/学芸出版社)

全地図マニア&架空都市フェチを一段上のステージに誘う『空想地図帳』が入荷したのだ!

タモリ倶楽部などでもおなじみのストイック密室趣味・空想地図の世界を深掘り。都市計画やインフラから読み、歴史を知り、そして自ら描くためのバイブル的一冊

借り物の世界観で満足してる異世界転生創作者も、世界観構築の見なくていい深淵を見るのだw


512.丘の上 豊島与志雄 メランコリー幻想集 (豊島与志雄/彩流社)

太宰や芥川に愛され、川端康成に「魔につかれた怪物」と称された豊島与志雄の幻想譚が『丘の上』で読めるのだ

都市の憂鬱に裂かれる『悪夢』、セピア色の戦後幻想『沼のほとり』、魔的な太陽と男女の会話『丘の上』など静かなる銘品揃い

白昼夢めいた描写と複雑な寂しさを残す読後感は唯一無二!超好き!

青空文庫でもひと通り読めるので気になった方はぜひなのだ~(^^)

本書には未収録だが、影絵のような戦後風景、かみ合わない女との会話、そして穴の開いたような余韻がいつまでも胸に残る『白蛾』がおすすめ!

紙本がほぼ先の一冊だけなんて人類の損失すぎる……


513.宇宙人の村へようこそ 四之村農業高校探偵部は見た! (松屋大好/電撃文庫)

『宇宙人の村へようこそ』は地味にとんでもない怪作なのだ!

超技術が秘匿され、人間離れした住民が住む岐阜県の村で起こるトリッキーな難事件。小林泰三風SFから人肉食サスペンスまで、青春ミステリぽくライトに調理

1万kcalの大根や遺伝子修復するミミズくらいは当たり前に登場。杜王町的ヤバさ!


514.野又穫 Continuum 想像の語彙 (野又穫/limArt)

美術展「野又穫 Continuum 想像の語彙」凄すぎたのだ……

アンビルド、空想建築好きに突き刺さる、世界の関節が外れてしまったような、AIがエラーを起こしながら文明をなぞっているような、奇妙で寂しい建築物の数々。そして人を呑む圧倒的な巨視感(まず絵がでかい!)

影響源にはブライアン・イーノの名もICOやMYST、ニーアの世界観が好きな人にもぜったい刺さると思うのだ……図録必買!


515.おどるでく 猫又伝奇集 (室井光広/中公文庫)

芥川賞史上最低の売れ行きと噂された『おどるでく』を再発見するのだ

スマッコワラシなる妖怪が出ると伝わる農家で見つかったロシア語のノート解読を巡り、逸脱を繰り返す幽霊的文体─―

衒学と地方民俗が融け合う様は、ボルヘスmeets柳田國男!収録作はすべて架空の地域・猫又が舞台のサーガ的構造!


516.お前の彼女は二階で茹で死に (白井智之/実業之日本社文庫)

『お前の彼女は二階で茹で死に』超面白かったのだ!

尻にボールを入れる新興宗教、皮膚病患者の劇団……グロ事件を通して、クズ刑事、監禁JK名探偵、連続強姦魔の因縁が交錯する

平山夢明や粘膜人間ばりのえぐみに反して鮮やかな多重解決ミステリ!10人中8人が眉を顰めて2人が救済される地獄の文学!

ちなみにタイトルの元ネタは、バロウズとケルアックの『そしてカバたちはタンクで茹で死に』!


517.吹雪 (ウラジーミル・ソローキン/河出書房新社)

ソローキン新刊『吹雪』面白かったのだ〜

ゾンビ病ワクチンを届けるため豪雪のなか旅するドクトルと御者。正義感あふれる文体ながら、行きずりの人妻とSEX、謎ドラッグでガンギマリ、巨人の死骸に遭遇と安定のソローキンw

キャラもいつになく人間味あって、おそロシア批判も汲み易いライトめの中篇!

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