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【ライブレポ】中国巡演増加演出〜炒飯編〜

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中国巡演増加演出 〜炒飯編〜
2023.3.26(日)@大阪城音楽堂

天波霊(Tempalay )
孥魅児(ドミコ)
喪ノ信亜我(MONO NO AWARE)
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4年前────────

「Tempalayって知ってる?」
高3の春、国語の授業を受けてる時に友達が聞いてきた。
RADWIMPSや米津玄師ばかり聴いていた僕はその時友達が言っている「テンパレイ」をバンドだということすら認識できなかった。
どうやら1ヶ月後にその「テンパレイ」のライブが地元で行われるらしく、もし良かったら一緒に行かないかというお誘いだった。その時の僕は「1回聞いてみてから決めるわ〜」と軽く流した記憶がある。

家に帰ってYouTubeを開く。そうだ、なんか音楽をおすすめされたな。
「テンパレイ」、だったっけ。検索窓に「テンパレイ」と打ち込んだ。

出てきた。「Tempalay」だったのか。上から一つ一つ再生する。『どうしよう』『新世代』『のめりこめ、震えろ。』『革命前夜』。

うわ、

そのどれもがオシャレで変でかっこよかった。酔拳のようでSFのようで銀河のような美しい音楽。今になって思うが、この日が僕の革命前夜だった。



その日から僕の音楽の嗜好が変化した。その中でもTempalay、ドミコ、MONO NO AWAREは自分の中の核に住みつくアーティストだ。
僕はこの3アーティストに対して「自然界」的なイメージを持っている。

──独創的な世界観を持ちつつも強力なパワーを感じるTempalayは《宇宙》。
──剥き出しすぎて血の匂いすらするドミコは《荒地》。
──暖かな空気を内包しながら無限の広がりを感じるMONO NO AWAREは《海》や《森林》。

──────────宇宙と、荒野と、海。

このような広大な世界観を持つ(と僕が勝手に感じている)3バンドが2023年3月26日に大阪城音楽堂に集結した。

~〜〜〜〜〜〜

当日、天気は雨。もちろん晴れた状態で見たかったという気持ちもあったが、それ以上に「雨の中で行われるライブ」に憧れがあった僕は心を高鳴らせた。フジロックのPUNPEE、森道市場の吉澤嘉代子、SUPERSONICのどんぐりず。僕が何度も観てしまう野外のライブ映像はどれも雨だった。雨はライブにバフをかける力を持っている。僕はそのことを知っていた。
 
会場近くの駅に着く。その駅はサラリーマンや学生など様々な人で溢れていたが、おそらく中国巡演に参加するだろうという方もちらほら散見した。例えば原色の服を着ている方は恐らくドミコのファンだろう。向こうにいる丈の長いシャツとメンズスカートの方はTempalayのファンだろうか。ちなみに僕は周啓さん (MONO NO AWAREのボーカル)がパーソナリティを務めるラジオ番組「脳盗」のグッズパーカーを着ていった。

会場に着く。600円と引き換えに特製のドリンクチケットを貰って会場に入場した。(このドリンクチケット、あまりにも可愛すぎたため結局交換せずに家に持ち帰った。)

可愛すぎる



中に入ると中国らしいBGMが観客を出迎える。入場する観客からは「この日を待ち続けていた」と言わんばかりの高揚感が合羽越しにも伝わった。

その高揚感に僕も乗せられてゆらりゆらりとしていると、次第に僕の足は物販へと向かっていて無意識のうちにドミコのタオルを購入していた。晴れていたら確実に古着も購入していたと思う。(※ドミコのグッズにはバンドロゴがプリントされた古着が売られており、それは全て一点物のためハンガーラックから好きな模様の古着を選べる仕様になっている。さすがにビシャビシャな状態でそれらに触るのは気が引けたため購入を断念)


グッズも購入できたため、席に着く。いつもライブの席運が悪い自分にしてはかなりいい席だった。
ステージには今回の題になっている「炒飯編」の文字が記載された牌楼が設置され、その後ろに中国のシンボルである龍が空を飛んでいる。

セットがいいとテンション上がる


開演時間まであと10分。頭の中で過去のライブの回想やこれから始まるライブの妄想をおこなった。ステージ上にはライブハウスでは見慣れた「Domico」の文字。『びりびりしびれる』とか聴きたいな。『ペーパーロールスター』はさすがに聴けるだろう。『ペーパーロールスター』はライブ曲の中で1番好きな曲で、ライブで〝演奏〟を聴く理由を教えてくれた曲だ。

そんなことを考えていたら、BGMがジャッキーチェンの『英雄故事』に変わった。ライブの期待感を煽るそのSEはいわゆる〝SE〟というよりもプロレスラーの入場曲やお笑い芸人の出囃子のように感じた。僕はこれから始まる最高のライブという強敵を目の前にニヤニヤが止まらなかった。


1.ドミコ

次の瞬間、先ほどの牌楼の間の黒幕が開く。大量のスモーク。その中からドミコが登場する。ドミコは2人なのにどのバンドよりも迫力がある。その圧倒的な佇まいに魅せられてドミコのファンになったのだということをそこで思い出す。

演奏が始まる。僕の体は自然と揺れ出した。1曲目は『問題発生です』。ドミコのライブには休む暇がない。それは「MCらしいMCを行わない」という意味でもあるのだが「演奏そのものを強みとしている」という意味でもある。ドミコのライブは長尺すぎるイントロや間奏のセッションなど〝演奏〟そのものが魅力だ。その演奏に魅了されたら最後、ドミコは演奏をやめないためこちらも聴き続ける以外の選択肢はなくなる。〝魅せられる〟とはまさにこういうことなのだろう。

ライブが始まる前に僕は「ぼくがかんがえた最強のセットリスト」を考える癖がある。これを読んでくださってる方々も多分あるだろう。しかし、そのセトリを凌駕するセトリに出会うことはなかなかない。自分が聴きたいものを詰め合わせて考えてるのだから当たり前だ。

しかし、今回のドミコのセトリはその最強のセトリを凌駕するものだった。その中でも特に新譜『なんて日々だっけ?』の披露が1番痺れた。言葉を選ばずに言うと、エロかった。「あぁ、今回のライブのピークはここか」と最初に感じた箇所だった。(もちろん、このあと何度も「ピーク」は来た)
少し話はそれるが、僕は音楽との出会い方を結構大切にしている。その中で最もいい出会い方が「ライブで出会う」だ。今回はまさにそういう体験が出来た。過去にライブで衝撃を受けた『ペーパーロールスター』を聴くことができ、今回のライブでまた『なんて日々だっけ?』によって新たな衝撃を受けた。文句なしのライブだった。 

2.Tempalay

Tempalayの登場は戦隊ヒーローを彷彿とさせた。真ん中でポーズを取る小原綾斗とそれを取り囲むメンバー。

Tempalay公式Twitterより

この瞬間、僕は最初に話したTempalayのライブを思い出した。2019年の「21世紀より愛をこめて」のツアー。その時の僕はまだライブ経験が浅かったためライブというものに対して「本人を見ることができて嬉しい」という程度の解像度しか持っていなかった。

しかし、その時のツアーのTempalayは僕のその考えをひっくり返してくれた。ツアータイトルになっているアルバム曲の中に「Queen」という曲がある。これはゲームの『マリオブラザーズ』について歌った曲だ。ゲームを歌った曲であるため、この曲には強いメッセージ性は含まれない。それゆえにアルバムの中ではあまり目立っていなかった。しかし、Tempalayはその曲に実際のゲーム音などのアレンジを加え「スター状態ver」としてツアーに引っ提げてきた。この時に感じたTempalayの〝エンターテイメント性〟を今回のユニークなライブの登場によって想起させられた。

Tempalayの出番は『のめりこめ、震えろ。』で始まり『そなちね』で終わった。どちらもあの時のツアーのアルバム曲だ。あの時の感動や興奮が今この場所に足を運ぶ理由になっている。また、『春山淡冶にして笑うが如く』の「心配しないであなたらしく生きていて」という歌詞や『大東京万博』の「死なないで生きていてね」という歌詞を聴いて泣きそうになった。Tempalayのことを《宇宙》と例えたが、彼らの音楽はただ広大なだけではない。常に人の心に寄り添う優しさを持っている。

果てしなく広がる彼らの世界とその中心にある優しさを感じながらTempalayのライブは終了した。


3.MONO NO AWARE


「このライブで1番楽しみなバンドは?」という質問があるとするならば、僕はMONO NO AWAREを挙げていただろう。MONO NO AWAREを知ったのは去年の10月にあったCody・Lee(李)との対バンだ。その時に既にTempalayとドミコにどっぷり浸かっていた僕は「あ、中国巡演のもうひとつのバンドだ」という雑で失礼な印象を彼らに抱いていた。失礼な僕はMONO NO AWAREの軽い予習を済ませてその対バンに臨んだ。

結果、そのライブで印象に残ったのはお目当てだったCody・Lee(李)よりもMONO NO AWAREだった。彼らが演奏した『異邦人』はアジアの風が吹いていた。彼らが演奏した『東京』は故郷を思い返すような人の温かさを含んでいた。僕はすっかりMONO NO AWAREのファンになってしまった。


 

そんなMONO NO AWAREのライブがこれから始まる。
MONO NO AWAREのライブはリハーサルの時から既に楽しい。『イワンコッチャナイ』のメロディに乗せてボーカル玉置周啓が「これはリハ〜🎶ほんとは見せたくない〜🎶」と楽しく歌い上げる。あの時のように会場がゆるく暖かくなる雰囲気が僕は大好きだ。(リハ終わりに「以上!MONO NO AWAREでした!」と言ったら客が拍手しそれに対して「やらせてくれよ〜」と言うという流れもあり、なんかめちゃくちゃ幸せだった。)

リハが終わって、前の2バンドと同じくジャッキーチェンの『英雄故事』と共にMONO NO AWAREが入場する。どうやら、周啓さんは太鼓を片手にもっているようだった。3パターン目の登場として正解すぎる。

MONO NO AWARE公式Twitterより


〜〜〜〜〜〜
2週間前、僕は「MONO NO AWAREがトリを務める」と知った時に少し不安を覚えた。もちろん僕個人としては1番見たかったバンドではあったが、各バンドのTwitterフォロワー数からみて分かるようにMONO NO AWAREは他のバンドよりも知名度が低い。(Tempalayが7万人、ドミコが3万人、MONO NO AWAREが2万人)
そのような状況、フィナーレで他のお客さんの心をジャックすることは難儀だろうと僕は考えていた。

しかし、結論、そんなことは杞憂に終わった。リハーサルでバンドとしての自己紹介を済ませ、入場の太鼓の音でお客さんと一体化する。そして1曲目の『異邦人』のイントロで確実にお客さんのハートを掴んだ。そこには僕が大好きなロックスターの彼らが、大好きなエンターテイナーの彼らが居た。僕がMONO NO AWAREを好きになった理由がそこにあり、僕はそこで初めて泣いた。(Twitterでも「MONO NO AWAREがやばかった」という意見が散見されて勝手に嬉しくなった)

彼らはライブの定番曲である『東京』を披露した後、最後に『水が湧いた』を披露した。この時にはすっかり雨も止んでいた。雨が上がった時、僕はここまでのライブの演奏が「晴れ乞い」のように感じる錯覚を覚えた。

曲の後半、周啓さんの呼び掛けと共に他2バンドもステージ上に現れた。

ヤッピー
街はお祭り状態
極楽の兆し
先駆けの暮らし

MONO NO AWARE 『水が湧いた』


ステージ上で好きなように演奏するメンバー。この瞬間、この空間に特有のグルーヴ感が生まれていた。あの瞬間が有ったのと無かったのとではこのライブの満足度はかなり違っていただろう。

「ヨシっ、お祭り状態、ヨシっ」

周啓さんが口にしていたこの言葉。
まさにこのライブは「お祭り」だった。饗宴であり、万博であり、お祭りだった。僕はひたすらに手拍子をしながら体を揺らしこの時間とこの空間を存分に楽しんだ。

きっとこれからこのライブのことを何度も思い返すだろう。冗談抜きで今まで行ったライブの中で1番良かった。高3の春に「テンパレイ」と出逢ってから今まであらゆる音楽を聴いてきたことが「間違いではない」と答え合わせを出来たようなライブだった。


過去の答え合わせとともに、これからの自分の未来も輝いたような気がした。だって彼らが居るから。

ドミコ、
Tempalay、
MONO NO AWARE。
彼らの音楽があれば僕は生きていける。






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